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傭兵ピエール 2周目

Title:傭兵ピエール
著者:佐藤賢一
出版社:集英社文庫
感想を書いた日: 2023-09-15

# あらすじ
神の声を聞くジャンヌダルク又の名をラピュセルと出会い、フランスのために戦う彼女をサポートし、その後の生活を綴った物語

# 感想
清原果耶が舞台でジャンヌダルクを演じるニュースを目にした。監修・原案に佐藤賢一の名前があり、傭兵ピエールを思い出す。小生の記憶ではエログロの要素が衝撃的なラピュセル像だった。さすがに清原果耶がこのキャラを演じるとは思えないので、ミュージカルは違う角度からジャンヌの生き方を描いたお話しなんでしょうね。そんな背景で読み返した傭兵ピエール、全体像は覚えていますが、詳細は忘れており、改めて楽しく読み返すことが出来ました。

1回目は、主人公のピエールとラピュセルの心の動きにに強く焦点を当てて読んでいた。2回目はちょっと俯瞰した立場で脇役達のセリフにも十分気を配って楽しめました。そんな視点で少し感想を追加します。

>ピエールとジャンヌの駆け引き
物語の核は惹かれ合う二人の関係の描写なんですが、改めて読み返してみた感想は、ピエールとラピュセル共に良く我慢した。自分の欲を抑えて、結び付くのを回避する、それでも強く惹かれ合う二人。気持ちが盛り上がる瞬間が絶妙にズレることで、なかなか結ばれない二人の物語は単純な恋愛小説としても最後まで楽しめました。

>カトリーヌの悲劇
読み返した際にあまりに不憫に感じたのがこのラピュセルの身代わりとなるカトリーヌ。不幸な人生を転がり落ちて行く彼女はあまりにも悲しい最後を迎える。生まれながらの悪女ではなく、なるべくしてなってしまった彼女の立ち位置が悲しくて落ち込む感じがあったのだが、物語終盤に女子修道院の名前が聖カトリーヌ修道院となったゆえんは語るわけにいかないの一文があり、一筋の救いの光があった。

>実在する登場人物、エピソード
そもそもジャンヌに関するエピソードを読み漁ってみると、性的暴行から身を守るため男装を復活させたことで死刑判決か出される話を目にする。
公平性に欠ける裁判を行った司教コーション、ジル・ドゥ・レも史実に名を残すシリアルキラー、ヨランド・ダラゴンも実在する人物でジャンヌを起用し、誘拐沙汰も起こしている人物とのこと。
リアルとフィクションが絶妙な加減で入り混じることで物語に強く惹かれる魅力が出てくるのだろう。作者の取材力、物語を構成する能力に脱帽です。

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