エピソード0:スワンプロック事始め


スワンプロックと聞いてピンと来る人はどれくらいいるのだろうか?スワンプとはアメリカ南部にある湿地帯を指し、スワンプロックとはアメリカ南部から産まれたブルースやゴスペルやソウルをロックのマナーで解釈した音楽だ。一般には1968年に
トニー・ジョー・ホワイトが発表した『ポークサラダアニー』を始祖とする説や同じく1968年にジョー・サウスが発表した『ハッシュ』を大蘇とする説が有力だが、実はそんな事はどうでも良い。解釈は人の数だけあると思っている。
それよりも、私はスワンプロックと言う『沼』を知らない人が羨ましくて仕方が無い。
例えるなら、ビートルズは好きだけどラトルズは聴いたことが無い人くらい羨ましい。

スワンプロックについて、簡単に説明をしたい。
今でこそロックとソウルの垣根はかなり低くなり、お互いが行き来するのも楽になったが、1968年当時ロックは白人音楽、ソウルは黒人音楽という厳密な壁があった。お互いがお互いの音楽のみを是としていた時代だ。人種差別も公然と行われていた為、必然であったと言えよう。

スワンプロックはそんなロックとソウルの垣根を刈り取って殆ど無くした功績を持つ、非常に重要な音楽ジャンルだ。現代に於いて『多様性』を認める事の重要性が言われているが、音楽に於いてはスワンプロックが55年前に実現させていた。根底には白人の限りない黒人音楽への尊敬と憧れの念があり、少しでも彼らに近づきたいと言う思いを周囲に憚る事なく表現した結果産まれた音楽なのだ(それに対して黒人がどう答えたかは後日詳細を語る)。
今でこそ当たり前だが、『いいものはいい』を大っぴらに言えなかった時代に音楽でそれを示した、実に画期的な出来事だったのだ。

本当にいい音楽は時代を超える事は皆さんも自身の経験から分かっているとは思うが、その感覚を理解出来るのであれば、一度騙されたと思ってスワンプロックの扉を叩いてはくれないだろうか?

繰り返しになるが、私はこれからスワンプロックを
知る人が羨ましくて仕方が無い。
例えるなら、普通自動車の免許を取ってこれから始めてドライブに出掛けるくらい羨ましい。

そんなスワンプロックという言葉を始めて聞いた人の為に、人生を変えるかも知らない音楽を伝えていきたいと思い、ここに筆を取る。


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