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トリプルマーカー、クアトロテストの違いについて

【2019/12/6 更新】
本日この様なツイートをしました。


今回はこのツイートを深掘りして、

「出生前診断についてはなんとなく知ってはいるけれども、
トリプルマーカーと、クアトロテストの詳しい違いについて知りたい。」

上記の方に向けた記事になります。

今回のテーマです。

① 何のために、何を使って母体血清マーカーの検査をするのか。
② 母体血清マーカーを受けるべき時期、かかる費用について。
③ 母体血清マーカーについて把握しておくべきことについて。

※ トリプルマーカーやクアトロテストのことを母体血清マーカーと言います。


産科の外来診療をしていると、少なからず出生前診断を受けるかどうか迷われる方がいらっしゃいます。出生前診断の中でも最初に受ける検査(超音波検査を除く)が母体血清マーカーです。


今回はその母体血清マーカーのうち、トリプルマーカーとクアトロテストの違いについて解説していきます。

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何のためにトリプルマーカー ・クアトロテストを検査するのか

■ 母体血清マーカーの検査内容と対象について

母体血清マーカーは言葉の通り「母体の血液」を使用して検査を行います。


母体血清マーカーの検査対象は、赤ちゃんがダウン症候群(21トリソミー)エドワーズ症候群(18トリソミー)開放性神経管奇形(二分脊椎症、無脳症)です。これらの病気の確率を知るために行います。

■ 母体血清マーカーのうちの「非確定検査」と「確定検査」について

母体血清マーカー(トリプルマーカー、クアトロテスト)は出生前検査の1つです。


出生前診断には「非確定検査」「確定検査」の2種類があります。「非確定検査」と「確定検査」の違いは以下の様になっています。

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「非確定検査」の中でも赤ちゃんに侵襲のない検査として母体の血液検査である「トリプルマーカーテスト」や「クアトロテスト」があります。


そのため、「非確定検査」であるトリプルマーカーテストでダウン症の可能性があったとしても、これはあくまで「非確定検査」のため、正確な「診断」をするには「確定検査」(羊水検査等)を行う事が必要となります。


母体血清マーカーは、母体の血液を利用して赤ちゃんの染色体異常の"確率"を調べる。というものです。

■ 染色体異常について

染色体は人の体の構造を決める設計図で、DNAとタンパク質によって作られています。母親から23本、父親から23本の染色体を受けつぎます。そのため、人は23本2対で合計46本の染色体を持っています。

この23本の染色体は1番、2番…23番というように決められており、1本1本が重要な体の遺伝情報情報を担っています。

例えば23番目の染色体がXXであれば女性、XYであれば男性となります。

■ 母体血清マーカーで分かる染色体異常について

トリソミーは英語表記で"trisomy"といい、染色体が3本あるってことを意味しています。

トリプルマーカー、クアトロテストの対象疾患にはダウン症候群(21トリソミー)や18トリソミーがありますが、ダウン症候群(21トリソミー)は21番目の染色体が3本ある状態であり、エドワーズ症候群(18トリソミー)は18番目の染色体が3本の状態です。

■ 母体血清マーカーで分かる開放性神経管奇形について

赤ちゃんの器官形成の時期である妊娠初期に、神経管がきちんと形成されていないと神経管異常が起こります。

神経管がきちんと形成されないと頭蓋骨や脊髄の形成異常が起きて、開放性神経管奇形という状態になります。開放性神経管奇形には二分脊椎や無脳症が含まれています。

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母体血清マーカーの検査の方法

上記でも説明した様に、トリプルマーカー、クアトロテスト両者合わせて「母体血清マーカー」と言います。

この検査を行うことで、妊娠初期〜妊娠中期の母体の血液中にある、赤ちゃんや胎盤の成分を測定します。その値から赤ちゃんが染色体異常でないか、確認します。血液検査を行うためには約10mLの採血を行います。


どちらの検査も赤ちゃんが異常である確率を算出するもので、「確定検査」ではなく、「非確定検査」です。(1/1000 というように結果は確率で示されます)


ともに対象としている病気が限られています。(この母体血液検査を行う事でどんな病気も分かるわけではないんですね。)


トリプルマーカー、クアトロテストの対象疾患はともに
ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形(二分脊椎症、無脳症)が対象となります。

■ 母体血清マーカーの実施時期について

母体血清マーカーを受けるべき時期は、妊娠15週〜16週前半までです。

厳密には妊娠17週まで可能なんですが、もし母体血清マーカーに異常を認めた際には、その先に羊水検査を行う可能性があります。

羊水検査は検査を行ってすぐに結果が出て来るわけではありません。数週間かかる事もあり、万が一染色体に異常が出た時点で、中絶をできる時期(妊娠21週6日)を超えている場合もあります。

そのため母体血清マーカーを行うべき時期は「妊娠16週前半まで」を推奨している施設が多いです。結果は約10日間前後でわかります。

■ トリプルマーカーとクアトロマーカーの検査項目の違いとは

トリプルマーカー(テスト)は、「トリプル」と言うだけあって、血液中の3つの成分(AFP, hCG , uE3)を測定する検査です。


クアトロテストとは、クワドロプル検査、とも言われる事があります。


「クアトロ」なので4つの成分 (AFP, hCG, uE3 + インヒビンA)を測定する検査です。

・ トリプルマーカーとクアトロテストの検査項目の違いについて以下の表にまとめてみました。

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★ 良くある質問について ★

■ トリプルマーカーとクアトロテストは同じ「母体血性マーカー」ですよね。どの様な違いがありますか?

(A) 18トリソミーの確率の算出には「トリプルマーカーテスト」でも「クアトロテスト」でも精度にそれほど差はありません。

一方で、ダウン症(21トリソミー)の赤ちゃんを妊娠された方がこの2つの検査を受けた時に、スクリーニングが陽性であった割合は異なった報告がありました。

トリプルマーカーの感度は70%、偽陽性率は5%でした。
一方でダウン症のクアトロテストの感度は81%、偽陽性は5%でした。

【引用文献】
Lao MR1, et al . “The ability of the quadruple test to predict adverse perinatal outcomes in a high-risk obstetric population”. J. Med. Screen. 16 (2): 55-59. 


■ トリプルマーカー、クアトロテストに影響する確率の因子について知りたいです。

(A) 母体血清マーカーで算出する「染色体異常の確率」は色々な因子に影響を受けます。年齢や人種、体重、妊娠週数、それに加えて母体血清マーカーの項目で確率を算出します。

このように、染色体異常の確率には「年齢」が入っているため、高齢であればあるほど、" 染色体異常の確率値" は高くなります。

そのため、40歳以上のママでは"陽性"である確率が高くなってしまいます。

■ 多胎妊娠でもトリプルマーカー、クアトロテストの検査はできますか?

(A) 双胎妊娠の場合には18トリソミーの検査を行うことは出来ません。

■ 母体血清マーカーの費用について知りたいです。

(A) トリプルマーカーやクアトロテスト非確定検査ですので、診断するためには確定検査が必要になります。

■ トリプルマーカーとクアトロテストの検査結果が出るまでの時間や、費用の違いについても知りたいです。

(A) 金額は自費診療となるため、施設によっても様々ですが大体1万〜2万円の値段設定になっています。

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まとめ|トリプルマーカー とクアトロテストの違い

以上、トリプルマーカー とクアトロテストの違いについて解説させて頂きました。

ここで非常に重要な事ですが、出生前検査は検査を受ける前に遺伝カウンセリングを受けることが大事です。
» 臨床遺伝専門医制度委員会「全国臨床遺伝専門医・指導医一覧」

また、夫婦間の赤ちゃんや今後の家族設計に関する考え方をキチンと話し合い、まとめておきましょう。

母体血清マーカーでも赤ちゃんに異常がある可能性が高い場合に更に確定検査を行うのか、またその時にはどうするかカウンセリングを受けながら整理するのをお勧めします。

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最後まで拝読して頂き有難うございます。
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