決算書をどう見ますか?その4

若手の融資担当者のみなさん、頑張ってください。

1.経常運転資金
研修や財務分析のテキストなどで運転資金を月商比の回転期間の差で説明されていると思います。

資金が必要なのは収支ズレが理由、支払が先で回収が後、売掛金が回収されると収支ズレが収束するので、例えば材料を仕入れる為に資金が必要でその為に借入、材料を加工して販売し、売掛金が回収されたらその資金で返済する、でも次の仕入がまた必要なのでまた借入をして材料を仕入れ、といった具合に同じパターンを繰り返すので借りっぱなしになる。これが経常運転資金って話ですね。

ここで整理したいのは
・収支ズレが要資事情なので、所謂つなぎ資金も本質は同じ、運転資金とつなぎ資金は要資事情と言う点では同じ。
・ごく短期で収束するつなぎ資金は、月中で収束する場合は回転期間分析の運転資金分析ではわからないこと。
・月を跨いで収束するつなぎ資金はいつも資金が必要な様に見えること
・収支ズレが要資事情なので、返済原資は営業収入であること。儲けの部分の営業利益は他に資金の行き先が無ければ現預金に貯まるはず。
・実際は営業利益から、人件費他の費用を支払うので、売掛金回収金額全額を返済原資とする借入申出はおかしいこと。費用が支払できないことを表しているので、赤字資金の借り入れ申込みの可能性がある。
・収支ズレはごく短期の場合もあれば、例えば味噌メーカーの様に大豆買い付けから製品販売代金回収まで半年以上あるもの、製品開発資金の様に1年以上掛かるものまでさまざまであること。
・繰り返しになりますが、月商回転期間で説明される所謂経常運転資金の返済原資は利益ではないので、売上が全く変わらなければ極端に言えば返済して頂く必要はないこと。その意味で、月商回転期間での運転資金分析は厳密に言えば売掛金回収金には利益が混じっているので正確な分析ではないこと。

以上の点を考えれば、決算書の分析では足りず、月次の資金繰り表、場合によっては週次、日次の資金繰表の実績と予測の分析が必要です。

2.長期運転資金
以上の基本的な理解からすると、頻繁な借入稟議の起案は繁忙なので運転資金の稟議は1年毎にすることが多く、決算書を頂いたタイミングで起案することが多いと思いますが、これを踏み越えて、長期運転資金との名目で長期の借入の稟議を起案することがあると思います。

でもこれは本来の運転資金の捉え方からすれば変、と言うことになります。運転資金は毎月のパターンが変わらない企業であれば短期資金の同額支援が基本で、長期運転資金というネーミングは変なのです。

ただ、この長期運転資金にも意味はあります。それは約定返済が通常約定されているからです。
利益での返済を前提にしていない運転資金を約定返済付の資金で支援すると、当然返済分だけ資金が足りなくなってしまうので、極端な話、放っておいてもお客さまから新規支援の申し込みがありますし、何時ごろ資金が乏しくなってくるか事前に概ねわかることになります。
したがって、こちらから事前に「そろそろお借入のタイミングですね」とお客様に言えれば、先方は「当社ことがよくわかっているね」との感想をもって頂くことになりますし、逆にトンチンカンなタイミングで貸金を売り込んでも、何にもわかっていないね、ということになるわけです。
また、借入申出があれば、お客様の現状、業績など新しい情報を得ることができます。
また、何も申出がないと、他行にやられたか、或いは減収により運転資金がいらなくなっている、収支ズレが小さくなっているという可能性があります。

またダラダラ長くなって来ましたのでここら辺で一旦終わります。
次は、八百屋さんの財務分析について書こうと思います。

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