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一箱古本市


一箱古本市とは

一箱古本市とは、文字通り一箱の本をそれぞれの
持ち主が持ち寄りその日限りの店主となって売る
いわば本屋さんごっこである。店主は本好きの素
人もいればプロの本屋も。筆者も何度か店主とし
て参加したことがあるが、お客さんとなる参加者
も本を買うだけではなく、本好き同士、本を介し
ての交流を楽しむことができる魅力的な催しだ。
一箱古本市は2005年に東京の谷根千で初めて開催
され、現在では全国に広がりをみせて、東海地方
では2009年に名古屋の円頓寺商店街にて、初めて
開催されている。
毎年一箱古本市情報をまとめているサイトによる
と、2023年は全国で120回を超える開催が予定さ
れており、地域活性化の一役も担うイベントとし
て成長しているようだ。

Seto-Machi Book Marche

2023年6月11日(日)、瀬戸市初となる一箱古本市
「Seto-Machi Book Marche vol.0」が開催され
た。おしゃれなネーミングである。
主催は2021年に陶生町の古民家を改装してOPEN
した本屋「本・ひとしずく」と、瀬戸の街歩き本
を出版している「ヒトツチ出版」の共同開催。
開催場所は「本・ひとしずく」と、仲切町にある
やはり古民家を改装した宿泊施設「ますきち」の
2ヶ所に分かれての開催となった。

会場巡り

最初に訪れたのは「本・ひとしずく」会場。
手作りMarcheが開催されているせと末広町
商店街をぶらぶらしながら到着。本屋の2階、
普段はレンタルスペースとして使われている
場所に6つのお店が開店。店主のこだわりの
本揃えとディスプレイで楽しませてもらった。
見るだけのつもりが、手には数冊の本が。

会場の「本・ひとしずく」と一箱古本市の様子


次の会場に向かう途中で、Book Marcheと同時
開催されていたワークショップに参加。
会場は、街づくりの拠点となることを目指し、
せと末広町商店街の洋品店をリノベーションし
て2023年4月オープンした複合施設「瀬戸くらし
研究所」。2階の会場で4つのワークショップ
が開催されていた。どれも子どもから大人まで
楽しめる内容で、鉱物チャーム付き栞づくりに
挑戦。細かい作業に手こずりつつも、本物の鉱
物はやはり美しさが違うと実感。

ワークショップ会場「瀬戸くらし研究所」と完成した鉱物チャーム付栞&おまけの蛍石

2ヶ所目の一箱古本市会場は「ますきち」。
普段はゲストハウス&カフェとして親しまれて
いる。こちらには大広間に15以上のお店で賑わ
っていた。店主の一押し本を拝見しつつ、好み
の本が同じ店主とは自然と会話も弾む。中には
中世スペインの写本文化を紹介する珍しいお店
もあり、4世紀ごろから始まった製本方法と説明
のあったエチオピア綴じという手法で店主が手づ
くりした美しいノートを購入。他にも市内で店舗
をお持ちのお店も出店されており、実店舗を訪ね
るという楽しみもできた。

会場の「ますきち」と一箱古本市の様子
エチオピア綴じのノート
(ピタッと開いて閉じない様子と背の糸かがり)


当日はあいにくの雨模様だったが、街中おさんぽ
アートイベント「Artwalkホウボウ2023」も開催されていて、ふたつの商店街を行き来しての本巡りは、町の雰囲気を味わいつつ、アートに親しみつつ、ワークショップにも参加できるという楽しい時間を過ごすことができた。途中、せと銀座通り商店街にて瀬戸焼きそばも堪能することができた。瀬戸市の一箱古本市は、今回は試行の意味で0回とのこと。更なるつながりを得ての次回開催を期待したい。その時は図書館エディターの企画として、みんなが選ぶ一箱棚などの蔵書を活用した企画を練って一緒に盛り上げることができればと思う。

【参考資料】
<図書>
・『一箱古本市の歩き方』
 (南陀楼綾繁/著  光文社 2009.11)
<雑誌>
・『ヒトハコ』創刊号 2016.11
 「特集:一箱古本市の楽しみ」
・『みんなの図書館』475号 2016.11
 「公民館・図書室からの風景(その3)
  みんなでやろう! 一箱古本市」

*以下は、国立情報学研究所のCinii Reserach(https://cir.nii.ac.jp)
 の検索結果からPDFで読むことができます。
・「「読むこと」を可能にする場所を創る」
 (『地域教育学研究』12巻1号 2020.3)
・「素人参加型の「市」は何を生み出しうる
  のか」
 (『関東都市学会年報』17巻 2016)

さくら@STEP