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Kinky Boots 6 - Not My Father

 (ジョージが工場の入り口に来ると、
  ドンが男3人で談笑している)

ジョージ
 「ティータイムじゃないぞ。
  仕事はしたのかい?」

男1
 「何か問題かよ?
  仕事せずにあの女に
  何か言われるのが心配か?」

ジョージ
 「金持ちは頭も賢いなあ」

ドン
 「まあ落ち着けよジョージ。
  あいつはいなくなったし、
  プライス&ソンももうおしまいだろ」

ジョージ
 「そんなことは起きていない」

ドン
 「昨晩 Fist'a Cuffs パブで、
  デラニーシューズの社員に
  奴隷って呼ばれたよ。」

ジョージ
 「デラニーでも店舗を縮小している
  ことを考えると、ただの飲んだくれ
  というわけではないだろうな。
  その一方で、お前らは給料をただ
  飲みに費やしてるだけじゃないか。
  少しは黙って働いたらどうだ。」

 (ジョージが去る)

男1
 「俺らはやりたいようにやればいいよな?ドン」

ドン
 「ああ、うるせえ。お前ら二人ともだ。」  

 (ローラのテーマが流れる)

ドン
 「現れたか」

 (ドンと男の従業員たちはドアに目をやる
  ローラが男の恰好をして現れる。
  とても不快そうな表情をしている)

男1
 「なんで、」

男2
 「目の前のは本当のことか、、?」

 (ドン達はあっけにとられている。
  ローラは勇敢げにゆっくり階段を降り、
  自分を見つめるドンの元へ立ちはだかる)

ローラ
 「トイレはここにあるの?」

ドン
 「悪いがここには男性用と女性用しかない」

 (ローレンが息を切らしてチャーリーに電話する)

ローレン
 「チャーリー早く。
  ローラがトイレで立てこもってるわ。」

 (チャーリーが工場に駆け降りる)

チャーリー
 「わかった、僕が話をしてくるよ。
  でも女性用の化粧室に行くわけにはいかない。
  君が呼び出してくれ。」

ローレン
 「彼女、紳士用の化粧室にいるわ。」

 (チャーリーが凍り付く)

チャーリー
 「なんだって?」

ローレン
 「紳士用にいるんだって」

チャーリー
 「ああそうだよな、、」

 (チャーリーは誰もいないトイレに入る。
  ローラは個室に隠れている)

チャーリー
 「ローラ?チャーリーだよ。
  気分が悪いのかい?」

ローラ
 「誰に聞いているかによるわ」

 (ローラが個室のドアを開く。
  チャーリーは彼の服装を見る)

チャーリー
 「そんな!誰か君のドレスを破ったのか?」

ローラ
 「あえてこの格好で来たの。
  ここに溶け込もうと思ったのよ。」

チャーリー
 「ほかにやり方があるはずだよ。」

ローラ
 「あなたのサポートはありがたいわ。
  ああ!ガウン姿なら私は
  500人の酔っ払いの前で
  ブリュンヒルデに怒鳴り散らして、
  笑っていられるくらい怖いものなしだわ。
  でも男性の様相をすると、
  挨拶することすら怖いわ。
  私は一体何をしているのかしら、チャーリー」

チャーリー
 「デザイナーになろうとしているんだ」

ローラ
 「私なりたいなんていった?」

チャーリー
 「君はいつでもパフォーマーになりたかったのかい?
  子供の時からさ」

ローラ
 「子供の頃に憧れたものは、
  父に全部止められたわ。」

チャーリー
 「お父さんは君を殴ったのか?」

ローラ
 「そうじゃないわ。彼はボクサーだった。」

 (チャーリーは理解した様子を見せる)

ローラ
 「そう。プロボクサーよ。
  一度もタイトルマッチを奪えなかったね。
  でも男の子を授かった。
  父がチャンピオンベルトを挙げることが
  できなかったら、
  それをするのは息子よ。」

チャーリー
 「お父さんは知らなかったのか?」

ローラ
 「もちろん知っていたわ。
  でも彼は私に訓練をしたわ。
  沢山のアマチュアが私のことを知っていたわ。
  プロに鍛えられたボクサーとしてね。
  だから私に挑もうとするのはやめたほうがいいわ。
  でも、白いカクテルドレス姿で試合に現れたとき、
  彼は私との関係を否定した。私を見てもくれなかった。
  肺ガンにかかった時でさえ。
  皮肉な話だけど、"fags"で彼は死んだのよ。」

 ※ fags = 煙草。俗語で"ホモ"という意味もある。
      ローラはこの二つの意味を掛けてる

 (二人は笑う)

ローラ
 「あなたはどう?
  靴を作るのは好きなの?」

チャーリー
 「僕が生まれたとき、父はプライス&ソンのレールに
  僕を置いていたんだ。
  彼からしたら決まっていたことだった。
  でも僕は?少年時代の恋人と
  町の外へ行く電車に飛び乗ったんだ」

I'm not My Father's Son

ローラ
 「そこから離れて何をしたの?」

チャーリー
 「父が望まなかったことさ」

ローラ
 「でもまだあなたはここにいるわ」

チャーリー
 「ああ、ここにいる」

ローラ
 ♪ 私がただの子供だった時
  私のすることすべて
  彼のようになる為だった
  本当にすべて
  父はいつも思っていた
  私が強くて勇ましくあることを
  私がなろうとしていた
  現実逃避者ではなく

  無力な私を見てちょうだい
  息を止めてるの
  必死で抵抗してるの
  出なきゃ恐怖で死んでしまう
  決して簡単じゃなかった
  彼のような男になるのは
  息苦しかった
  彼の計画の上では
  一番の私らしさを
  彼は見てくれなかった

  私はあの人の子じゃない
  彼の夢見たイメージではない
  スパルタのような強靭さ
  仕事への忍耐力
  今でもなれないの
  彼と同じようには
  私は彼の鏡にはなれない

  だから飛び込んだの
  私の夢に逃げ込むように
  多分はまりすぎたわ
  この世界に
  でもここはとても明るい世界だった
  6インチのヒールをはいて
  呼吸が楽になった
  心から感じた
  誇らしかった
  ただ生きている心地がした
  
  私はあの人の子じゃない
  彼の夢見たイメージではない
  スパルタのような強靭さ
  仕事への忍耐力
  今でもなれないの
  彼と同じようには
  私は彼の鏡にはなれない

  降りやまない期待が
  私の心を蝕んでいく
  本当の自分になるために
  やっとここまでたどり着いたの
  ただ私でいるために
  
チャーリー
 ♪  僕は父の子じゃない
  彼の夢見たイメージではない

ローラ
 ♪ スパルタのような強靭さ

二人
 ♪ 仕事への忍耐力
  今でもなれないの
  彼と同じようには
  私は彼の鏡にはなれない

 (ローラは握手を求める)

ローラ
 ♪ 同じね、チャーリーボーイ
  あなたと私

 「ノーサンプトンのチャーリー、
  クラックトンのサイモンに出会う」

チャーリー
 「ブーツを作ろう」

 (二人は握手を交わす)