見出し画像

神話モチーフの作品 ー「宝石の国」を読んでー

先日まで無料公開されていた「宝石の国」を読んでみました。
最近の漫画を読み慣れていないせいか、キャラクターの見分けが難しかったり、設定についていけないところもありましたが、97話を読んでから俄然この物語に興味が湧きました。

物語に突如登場した改造人間らしきアユム博士が自らが作り出した人造人間の金剛にゴブレットとチップスを用意するよう命じ、自らの体から(おそらく)血液を抜き出してそのゴブレットに注ぎ金剛に勧めます。

これはキリスト教の聖餐式を模しているのでありましょう。
今まで仏教色の強かったこの物語に突如登場したこのシーンは何を示唆しているのでしょうか。

そして博士を母と慕う金剛はその勧めを断ります。
そしてその後母の言いつけを守ることなく消滅します。

そしてその金剛の役目を引き継ぎ果たしたこれまた改造人間(と言っていいでしょう)のフォスフォフィライトが壊さなければればならない「橋」とは一体何なのか?

そして全世代の誰もがいなくなった世界に突如現れた次世代の担い手かもしれない石。これは何のメタファーなのでしょうか?

唐突ですが、昨今のAIブームを鑑みますに、何事にも機械の判断や労力を得なければ物事が成り立たない時代が来た時に、果たして人間の存在価値とは何になるのでしょうか?

機械が維持する世界は確かに人間のためのものではありながら、そこに人間の介在を必要としない世界。
これはある時点から主人を必要としない空の器にならざるを得ないのではと危惧します。
人間の存在意義を肯定できない時代の到来が近いのかもしれません。
その時、未来の人間もこの物語のように「何かの力」によって消滅させられてしまうのでしょうか? そしてそれを切望するのでしょうか?

さて、改造人間のアユム博士は「自分の作った人造人間の金剛」が次の世界の架け橋になると考え、次の世界の創造に金剛を通じて自分を介在させたようです。
本人も言うようにこれも人間の傲慢さゆえなのでしょうか?

さて、人間が(中途半端な?)神になった世界の行き着く先とは一体何なのでしょうか?
物語の完結が楽しみです。



アユム博士を描いてみたよ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?