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ベートーベンがあの第九を書けたのは、耳が聴こえなくなったからかもしれない

メディアやコンテンツのプロデュースと地域・企業の「メディア化」を支援するトミタプロデュース株式会社の富田剛史です。LIB Lab(ローカル・インディ・ビジネス・ラボ)の主催もしています。

龍村仁さんのライフワーク「地球交響曲(ガイアシンフォニー)」の最終章となる第九番を観てきました。今回は、それで想い出した音楽とベートーベンのお話。

言葉とは気持ちのデジタル化。
言葉にならない気持ちを表すのがアート。

映画では、「音楽で気持ちを伝えること」「言葉とは何か」などがテーマになっていました。

考えてみれば、「言葉」とは「数字」と似たようなもので、気持ちのデジタル化とでもいいますか、うまく言えない微妙な気持ちでも私たちはAかBかを選んでコミニュケーションしているわけです。

そして、AでもBでもない…しかし確かに心に感じた何かを表す手段が、音楽や絵画や踊りなどなんですね。「アート」が私たちに欠かせない理由です。


ベートーベンは、第五…「運命」の頃にはほとんど聴覚を失い、最後の交響曲の第九の頃には完全に耳が聴こえなかったそうです。

今回、ガイアシンフォニーを観て、子どもの頃に考えたことを思い出しました。

「ベートーベンは耳が聞こえなくなっても、昔の記憶で頭の中に完全なオーケストラのハーモニーがなっているんだなぁ」と。

同時に、「もし生まれながらに耳が全く聞こえない人は、頭の中にどんな音が響いているのだろう」とも思っていました。


生まれながらにして耳が聞こえない人の脳内音楽、
目が見えない人の脳内映像ってどんなだろう?

初めから聞いたことがないのだから、私たちが知っているオーケストラの音は鳴らないでしょう。しかし何かしらは響いているはず。

「一体どんな響きなのか? 興味深い! 機会があれば話を聴いてみたい!!」
と思っていたんですよね、子どもの頃に。

全盲の人がイメージするカラーも同じ。
以前知り合いが障害者施設にカラーセラピーのセミナーをしに行った時に、たまたま全盲の人がいて、「私、風はピンク色だと思っていたんですよ」と聞いてはっとした…って話、僕は大好きなんですが、耳が聞こえない人が楽しんでいる音楽も同じことですよね。

私たちが聴いている音や見ている色をそのまま全聾者や全盲者に感じてもらうことは技術が進めばできるかもしれませんが、それが大事なわけではないでしょう。耳が聞こえないからこそ自分の頭で聞こえている音楽や、目が見えないからこそ見えている色の方がずっと素敵なのかもしれない。
少なくともその音や色を思い出して本人がうっとりできるのなら、それで良いのではないかと思うのです。

どちらが良いとか、優れてるとか、そんなの関係ない。


ベートーベンが傑作「第九」を書けたのは、もしかしたら耳が聞こえなくなったから…かもしれない。

映画「ガイアシンフォニー」では、京都のお坊さんが紹介するお釈迦様のこんな言葉も出てきます。

「心を平穏に保つには、人と比べないこと。人と比べ始めると心は平穏でいられない」

このシーンは映画全体からするとなんとなく唐突感があって、なぜこのシーンを加えたのかなぁとはじめは思いましたが、後で改めて必要なシーンだと思い直しました。

音楽でも絵画でもダンスでも、私たちはつい優れているかどうかを他と比較しがちです。
しかしアートの魅力の本質は他と比較できないこと。他と比較せずに「いいなぁ」「好きだなあ」と感じたり、満足したりすることにあるのでしょう。

数字、言葉、音符、など、割りきれる形になったものは「比較」が可能です。比較が可能になると、他人と比べて心が平穏でいられなくなります。

競ってより良いものができる喜びも大切なので比較が全て悪いとは思いませんが、本来私たちは比較しなくても喜べることを忘れすぎなのではないでしょうか。

ベートーベンは「宮廷のための音楽」を「個人の表現」にした画期的イノベーターで、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマンなど同時代の若き作曲家に素晴らしい影響を与えていることで知られています。

でも、若い才能が続々出てくるとベテランは焦るものですよね・・・

人生の後半生で聴覚を失ったベートーベンは、同時代の他の優れた作曲家の音楽に惑わされることなく、純粋に自分の心と向き合えたからこそあの「歓喜の歌」が書けたのかもしれません。

良い映画を、ありがとうございました。

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