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「写真の創作」って何?(6)・・作者の個性はどこに出る?

1) 写真はメディアである、という見方から考える

写真の本質的特徴の一つが、被写体を伝えるメディア(媒体)であるとしたら、作者の個性はどこに現れるのだろうか。 
写真がメディアだ、という見方にとどまる場合、写真は、被写体自体を伝えるだけのものとなりますね。すると、作者の個性は、その被写体を選んだと言う点に出て、作者の被写体を選ぶ眼力、ものの見方が個性を表している、ということになるのではないでしょうか。

写真の投稿サイトには毎日のように素敵な写真が投稿されてくる。それらを眺めて思うのは、綺麗な写真だけれど、どれを見ても同じような印象を受ける写真が多く、個性は感じ難い。このような写真は、単に綺麗な景色を見つけて、綺麗に仕上げて投稿した、という以上のものではなく、見る側も、はい綺麗だね、で終わってしまう気がしてなりません。

そのような中で、個性的だと思えるのは、他の人が撮らないような一風変わった被写体、特殊撮影技術で撮影した写真、などですね。ということは、作者の個性は、そういった人があまり見かけない被写体の選択眼であり、また、特殊な撮影技術だったりすることになります。

2)被写体もまたメディアである、という見方から考える

一方で被写体自体がメディア(媒体)であるとしたらどうでしょう。被写体自体がメディアである、と言うことになれば、その被写体を写真に撮ることで、被写体の向こうにある作者の気持ちや意図などを、被写体が伝える、ということになりますね。
これができた時の写真の創作物として力は、1)に比べてより大きなものとなるのではないでしょうか。そして、作者の個性と言うものが表にひしひしと現れてくるのではないでしょうか。

3)写真の創作性を鍛える方法

では、上記を踏まえて、写真の創作性を鍛えるにはどうしたら良いのでしょうか。私が思うところは、まずは上記1)の視点で、ものの見方を変えて、他の人が撮らないような写真を見出す力、撮影技術を身につけることが重要で、さらに、2)の自分の意図に沿った被写体を見つけ、意図に沿った撮影技術で撮影することができるようにする。ということなのか、と思う次第です。これは私の理想であり、自分自身ができているわけでもありませんが。そして、これが、写真の創作性を発揮するための最善策なのかは不明です。

ただ、一流の写真家の写真は、このようなことの上に成り立っているように思えてなりません。例えば、ピュリッツァー賞カメラマン沢田教一さんの写真。

沢田教一: 安全への逃避

https://images.app.goo.gl/noZsyw3srSoQTVRUA

https://youtu.be/SyfV4256sQU

すごい写真ですね。
このような写真を撮るには、まずは、大前提として、自身の「思い」「テーマ」を決めておくことが重要なのではないか、と思えます。

このようなことは、写真以外のアートの世界も同じかと思えます。
マルセル・デュシャンの泉(1917年)は、市販の便器を逆さにして置いた作品で、この作品で、アートとは見るものではなく、「考えるものだ」としたと言われています。その意味で、美術史を大きく変えたと言われ、デュシャンは、美術史上ピカソ、マティスらと並ぶ3大アーティストの一人とされています。上記3)でいう被写体に相当する「便器」をメディアとして、アートの見方を提案したということですね。
(参考:マルセル・デュシャンについて・・アートぺディア:マルセル・デュシャン / Marcel Duchamp 観念の芸術
https://www.artpedia.asia/marcel-duchamp/

表紙の写真の意図・・伝わったら嬉しいのですが・・・。

スカイツリーを前に、多くの人たちが通り過ぎて行く風景を撮影してみました・・・何を感じていただけたでしょうか。あえて言いませんが、伝わったら嬉しいですね。

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以上を書いていて、先の記事では以下のようなことを書いていたことを思い出しました。この時に加え、今回の見解を加えていただければと思います。写真の創作性は何か・・については答えがあって無いような気がしますので、今後も、どんどん変わっていくと思います。ご了承願います。

“作者の個性はどこに出る? 一方、写真はメディアなのだから、メディアに徹するというのもあるのではないでしょうか。その視点で写真を撮り続けることも、一つの道なのか、とも思えます。そして、この視点を前提に、写真の創作性を考えた時、どこに作者の個性が現れるか、読み取れるかというと、被写体を選ぶ眼、作者の視野と言ってよいのかと思います。さらに、それをどう撮るかの視点。これらの特徴は、一枚の写真では伝えにくく、数枚の組み写真、写真集になって初めて伝わるように思います。”

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