普通
普通という言葉ほど尊いものはない
わたしは普通に生きることなど出来ないから
普通に電車に乗ることも
普通に仕事に行くことも
普通に歩くこともできない
普通が遠ざかっていく時
わたしは泣いた
どんなに辛いことがあっても泣かなかったわたしが
普通を失ったとき、涙を流した
それは決定的に自分が惨めになった瞬間で
昨日と今日を決定的に隔てた境界線だから
朝起きて自分の体が正常に動くことを確かめ
外を歩き自分の体に異常が発生しないことを確かめる
普通に生きたいとわたしは願う
失ってしまった普通を
当たり前のようにそばにいた普通を
今はとても尊く思う
そう、人は失わないと気づかない
使い古されたその言葉の意味を
深く噛み締めて心臓に手を当てて
鼓動を感じてみる
当たり前のように感じるその鼓動を
今はとても尊く感じる
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