ポカリ

つまんないと
目の前にある空き缶を
太陽に向かって蹴飛ばした

空き缶は
太陽に向かってぐんぐん進んでいって
やがて溶けて無くなった

一つの物体が消失することにも
何の感情も得られないほど
わたしの感性は刺激を求め続けている

いやきっとそうじゃない
ここにあるものにわたしの求めているものが
一つもないから

テレビもパソコンもスマホもラジオも
全ての電源を切って
わたしは35度の世界へと飛び出した

太陽はジリジリとわたしを溶かす
身体中の水分が全て蒸発してしまう前に
コンビニで買ったポカリを一気飲みする

ねえ世界
バーチャルがどこまで進化しても
わたしは今日のポカリの味を忘れないよ

縁側で見た線香花火も
縁日で買ったラムネの味も
夕立の後の雨の匂いも
夏休みに見かけた君の後ろ姿も

色褪せた夏に
きっとわたしは生きている

セピア色の世界
もう刺激なんていらない
欲しいものだけがそこにあるから

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