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二階の窓から手袋を落としてしまった。 見下ろすと、一階の庇の上に載っていた。 運がいい。 …
保母さんの弾くオルガンの音が聞こえる。 幼い僕たちが小さな手と手をつないで 輪を作ってお…
住所のメモだけが頼りだった。 地図はなく、電話番号もわからない。 もっとも、住所だけで十…
僕の家は五人家族。 お父さん、お母さん、お兄さん、お姉さん、そして僕。 「いい子にしてい…
マサト君という変な大人の知り合いがいて 僕の言う事をちっとも聞いてくれないので 僕は困っ…
オフィスを出ようとしていたら 女子社員のひとりに呼び止められた。 「これ、素敵ね」 彼女…
殴られた記憶がある。 かなり昔の話だが忘れてはいない。 殴られたら誰だって痛い。 誰だって痛いから、誰だって 相手の痛みを想像できないはずはない。 それなのに相手を なぜ殴る事ができるのだろう。 自分がされて困る事を相手にする人は まったく理解に苦しむ。 本当に困った人だ。 嫌われても仕方ない。 それでも構わないとしたら、不幸な人だ。 いつか殴り返されるだろう。 あるいは、刺されるかもしれない。 たとえば、ほら こんなふうに背後から、不意に。 A
父が台所で料理をしている。 フライパンの上で卵焼きを作り その上に切り揃えたほうれん草…
海岸なのに海は見えないのだった。 大男が大きなオートバイに乗り 砂浜を颯爽と横切ろうと…
夕闇の荒野をひとり くたびれた旅入が歩いていた。 遠く人家の灯りが見える。 頼めば泊めて…
若い頃、煙草を吸いすぎて気持ち悪くなり、 目を閉じて項垂れていたら 幻聴が始まった。 遠い…
あら、ダメよ。 まだまだ我慢して。 あせっちゃ、ダメ。 まあ、いやな目。 そんな顔、しない…
真夜中、見知らぬ女が訪れる。 「助けて。退屈のあまり死にそうなの」 なるほど、そんな顔を…
クルマは高速道路を走っていた。 「えっ、なに?」 返事がなかった。 「なんだよ?」 やはり返事がないのだった。 おれは不安になってきた。 「あのさ、なにか言わなかった?」 「なにも言ってないわよ」 「おかしいな」 「私の声が聞こえたの?」 「うん」 「空耳よ」 「そうかな」 「寝ぼけてたんじゃないの」 そこで、目が覚めた。 自宅の寝室だった。 夢だったのだ。 笑える。 本当に寝ぼけていたらしい。 それはともかく、少し気になる。 あれは本当に空耳だったのだ