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箱夢の話集 第四集

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#怪談

【怪談】恐ろしい夢

そこで目が覚めた。 夢だったのだ。 とにかく恐ろしい夢だった。 まだ心臓がバクバクしている…

Tome館長
9か月前
13

【怪談】氷の階段

靴音が聞こえる。 踊り場で休んでいるというのに。 それにしても長い。 長すぎる。 誰が築い…

Tome館長
1年前
14

【怪談】頬叩き

寝床に入り、ウトウトしていると 突然、頬をピシャリと叩かれる。 痛くはないけれど、驚いて…

Tome館長
1年前
10

【怪談】約束

約束通り、彼女は現れた。 「会えて嬉しいわ」 彼女の笑顔は透けていた。 その向こうに景色が…

Tome館長
1年前
16

【怪談】ありえない声

浅い眠りから覚めたばかり。 自宅の寝室、布団の中にいる。 暗いので夜だろう。 ただし、まだ…

Tome館長
1年前
15

【怪談】添い寝

ひとりで寝るのがいやなのね。 坊や、 暗闇が怖いのかしら。 それとも、悪い夢を見るの? …

Tome館長
1年前
9

【怪談】木のない森

見上げたら、めまいがした。 鬱蒼とした枝葉が邪魔をして 空がちっとも見えやしない。 様々な色の樹皮の幹に囲まれて 身動きさえできやしない。 胸が苦しい。 息が詰まる。 僕はポケットに手を突っ込み、 お気に入りのジャックナイフを取り出す。 銀色の鋭い刃をカチッと起こして 僕は目の前の樹皮へズブリと突き刺した。 「ギャー!」 その忌まわしい怪鳥の叫びは 怖いくらい女の悲鳴に似ていた。 僕の手のひらは樹液で真っ赤になった。 木立が逃げてゆく。 枝葉の覆いが切れる。

【怪談】踏んだ朝

(ああ、踏んじゃった!) 出勤途中、いやなものを踏んでしまった。 近眼乱視のくせにメガネ…

Tome館長
1年前
10

【怪談】鉈

狭い通路だった。 両側は頑丈な石の壁。 人ひとりがやっと通れる幅しかなかった。 俺の前に…

Tome館長
1年前
11

【怪談】帰らぬ人

彼は帰宅恐怖症。 家に近づくと動悸がする。 家の明かり見えると冷や汗が出る。 「あなた、…

Tome館長
1年前
13

【怪談】なくなったもの

目覚めたら、両腕がなくなっていた。 これでは目をこすることもできない。 頬をつねってみる…

Tome館長
1年前
18

【怪談】夢うつつ

真夜中の病院。 女性看護師が悲鳴をあげ  そのまま転がるように廊下を走り去った。 目が異…

Tome館長
1年前
14

【怪談】雪女

ひとりの旅の僧侶が吹雪の山を歩いていた。 昼なお暗く、天狗や山姥が棲むという。 冬ならば…

Tome館長
1年前
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【怪談】崩落の響き

三年前の冬、雪山でなだれに襲われた。 悪夢のような崩落の響き。 僕は奇跡的に助かった。 しかし、恋人は死んでしまった。 なぜそうなったのかわからない。 あれから僕は登山をやめた。 今、新しい恋人が僕の横で眠っている。 やすらかに幸せそうに眠っている。 雪山のように白く大きなホテルの一室、 雪のように真っ白なシーツの上で。 生きていることに感謝せずにいられない。 しかし、まさにその瞬間だった。 ベッドが激しく揺れ、振り落とされた。 地震だ。恐ろしい地鳴り。崩落の響き