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小さな光をみつけるには、夜の暗さがちょうどいい。

「透明というものが、みなさんの暮らしの中に溶け込めたら…。」
そんな夢を叶えるため、身につける透明を手がける日々。
今日は新作の波光ringにまつわるお話。

過去の記事

波光ring

Hakou ring

波光とは波の煌めく色のことで、この言葉を知るようになったのは、
ひとりで海にでかけた時のこと。

その日の空は冥色に染まっていて、空気は太陽の予熱でほんのり温かい。ひとしきり賑わっていたであろう駅前の建物たちはClosedの看板と共に静かに眠っている。

靴底にあたる不揃いなコンクリートに混じって砂の粒の感触を感じるようになった。風の音に混じって遠くの方から、かすかに波の音が聞こえてきた。

ざぁーざぁー

音をたよりに歩みを進めてゆく。

ざぁーちゃぽん

誰かが残した足跡たちを波が絶えず飲み込んでいる。私は防波堤に腰掛けた。しばらくすれば、空と海の境界線も曖昧になって暗闇に包まれるだろう。
そう考えながら夜に身を委ねようとした。

しかし、見上げた先のまんまると満ちた月と目が合ったことで、そういえばこの暗闇は約束されていなかったものと気が付いた。

目線を下に落としてゆくと、水面の月は、割れた器のように粉々だった。
スパンコールを散りばめたみたいに、煌めく光の粒たち。
時に身を寄せ合っては離れることを繰り返しながら、月へ向かう道を作っていた。
すくいあげても、手の中に残るのは塩の水なのだけれど、すくった手の中にも光が残り続けてくれたら……。そう強く願った。

波光ringはその時の記憶を辿りながら形づくっていった。マットな質感のシルバー925の枠にはひと粒の月長石(ムーンストーン)をそわせている。

反射する光はほんのり青みかがって海のよう。たとえ朝に溶け込みなじんでゆく刹那の光であったとしても、忘れてしまわないように。

そんな願いを込めながら、
手元を照らし続ける小さな光の欠片に思いを馳せる。波の煌めく色を閉じ込めたこの指輪を私は波光ringと呼ぶことにした。小さな光をみつけるには、夜の暗さはちょうどいいのかもしれない。そんなとある夜の話。

オンラインストアにて近日販売予定。
[場所]tomei online shop
[販売日時]2024.8.24(sat) 20:00〜
[作品]波光ring,その他アクセサリー

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