E-1 理工学基礎実験

報告者氏名 (";A;") (@tombstone_mark)
レポート提出日 2022年12月15日 4時 25分
 
室温 20.6℃
湿度 27 %
気圧 1015.2 hPa

1. 目的

このレポートは、慶應理工アドベントカレンダー2022[1]の15日目の記事である。理工学基礎実験を2回履修した体験を記す。

2. 背景

2.1 理工学基礎実験

理工学基礎実験とは、慶應大学理工学部基礎教室[2]が実施する、学部2年生向けの実験科目である。指定された12個の実験テーマについて実験を行い、実験レポートが受理されることで単位取得となる。

この科目は、数理科学科を除く全ての学科で必修となっている。電気情報工学科をはじめとする「まともな」学科では、基礎実験を落とした瞬間に留年が確定する。一方で、情報工学科のような「ちゃらんぽらんな」学科だと、基礎実験を落としても進級できる。

2.2 コロナ禍での理工学基礎実験

2020年(B2のとき)は、実験を行う代わりに、実験の映像を見る(一部のテーマでは実際に家で実験を行った)という風になっていた。2021年(B3のとき)は、対面での実験が8テーマ、オンラインでの実験が4テーマ(うち2テーマがガチで動画を見るだけの虚無)であった。

3. 実験方法

B2の秋学期に理工学基礎実験を履修した。その翌年、B3の秋学期に理工学基礎実験を再履修した。

4. 実験結果

4.1 B2の理工学基礎実験

4.1.1 はじまり

理工学基礎実験が非常に面倒な科目であるということは、前評判で分かっていた。また、実際に手を動かすことが重要な実験科目を、オンラインでやるのは馬鹿馬鹿しいと感じていた。

最初のほうの実験は、A実験(工学に関する実験、簡単)だったので、そこまで苦労することは無かった。しかし、実験もせずにただレポートを書かなければならず、またレポートの中に○○について調べて書け、という課題があったために、理工学基礎実験ではなく理工学クソ調べものに成り下がっていた。

嫌なものを後回しにする癖が災いして、レポート提出日の前日になるまでレポートにほとんど手を付けず、深夜に徹夜でやるようになっていた。今思うと、この悪癖のせいですべてが滅茶苦茶になったのだろう。

4.1.2 再レポ、再レポ、再レポ

丁度慣れてきたころ、再レポを食らって(これに関しては100 %私の過失)、レポートなおすの面倒だなーと感じていた。面倒過ぎて一生放置してたが、この時点ではまだ心が折れておらず、再レポを片付けるつもりだった。

大きな転機となったのはD-1実験のことである。D-1実験は人間にとって見やすい計器はなんじゃらほいって感じのものである。

レポートでは、どのような計器が見やすいのか、見やすい理由は何故かということを実験結果を踏まえて考察する必要があった。実験の時間は、ブラウザ上で動くアプリケーションで実験の疑似体験を行っており、そこで気づいたことを考察に落とし込むということになっていた。ただし、ブラウザでは正確な結果が出ないために、レポートで使う実験結果はあらかじめ用意されたデータを使うことになっていた。しかし、自分でやったうえで得られたデータとその考察が、用意されていた実験結果と食い違うものになっていた。

仕方なく実験中に書いた考察をボツにしながら適当書いてやったら、考察がじぇんじぇんたりましぇ~ん再レポという感じの文面が届いた。

やりたくもない実験、やりたくもないレポート、挙句の果てには自身の考察が、どこでとったかも分からないクソみたいなデータ[註1]によって棄却されるということで、その実験のレポートへのモチベーションは最悪になった。

[註1] 当時は、渡されたデータが、学生の予想を覆すように改竄されたものであると本気で思っていた。予想に反する事象こそが面白いものである、ということを知るのは学年が上がってからのことである。

再レポになると、その週の実験とは別にもう一つレポートを提出しなければならない(自然の摂理)。その分作業量は増えるわけで、当然モチベはさがっていくのである。

4.1.3 面談

執筆が面倒になりレポートを溜めていると、担任の先生と面談することになった。

面談するので都合の付く日を教えてください、という連絡が学科SlackのDMで送られてきた。ちょうど誕生日が近かったので、せっかくだしバースデー面談してもらうことにした。

怠惰の結果レポートが溜まったので、面談では当然怒られるものだと思っていた。そのため、面談までにレポートを完成させてお説教回避しようとしたが、結局全く片付かなかった。

面談当日。怒られるんだなとビクビクしながらZoomを立ち上げたが、面談では怒られるどころか、レポート出せないような大変なことがあったの?大丈夫?って感じに滅茶苦茶心配された。

本人が怠惰なだけなのに、担任の先生が大丈夫?と親身になって下さっていたので、人の善意を踏みにじってる感じがして罪悪感を感じていた。ちゃんとレポートを完成させようと決意した。まあすぐやる気なくすけど。

4.1.4 だんだん嫌になる

最初は無理にでも期限内にレポートを提出しようとしていたが、レポートを溜めていくうちに、レポートが一つ多く溜まったところで変わんないやと思うようになった。

学校の宿題や授業の出席など、どのようなことにでも当てはまると思うが、サボり癖というのは、サボりに慣れてしまうことでついてしまうのだ。0か100かの完璧主義的思考だと、特にそのような傾向が強くなると思う。自分も例に漏れず完璧主義の傾向があり、100%が達成できないと分かるともういいやと適当になってしまいがちだと思う。

今思うと、この時期は精神が若干参っていたように感じる。というのも、情報工学科のB2の秋学期の科目で唯一面白い「計算機構成同演習」という科目の授業でも全くテンションが上がらず、ベッドの上で泣きながら受講していた記憶があるのだ。同学年の人と殆ど話すこともなく、ただひたすら実験データが送られてきてレポートを課されていたら、そうなってしまうのも無理はないのかもしれない。

この時期から、理工学基礎実験を捨てて来年やるということを本気で考え始めていた。2章で述べた通り、情報工学科では理工学基礎実験は進級にあたって必須ではないので[註2]、コロナ騒ぎが収まるであろう来年にまともな実験をやろうと思っていた。実験が二つあることに関しては、自身の過去レポで強くてニューゲームしてるから大丈夫だろうと高を括っていた。

[註2] 進級自体は可能だが、理工学基礎実験の時間にはB3の授業を入れることができない。再履修にあたって曜日や時限の選択はできるっぽいけど、正直よく知らない。

4.1.5 最後の追い込み?

レポートを溜めに溜めていき、どんどん最終期限の12/28に近づいて行った。最終期限はその名の通り、再レポ含むすべてのレポートの締め切りであり、これを過ぎるとレポートを受理してもらえず、そのまま落単というものである。そろそろ消化いかないと最終期限に間に合わない、という危機感を12月の中旬くらいに覚えた。

ちなみに上のツイートは、ねじ式さんの『フリィダム ロリィタ』[3]という曲の替え歌である。

やろうという気持ちはあったものの、実際にやるわけはなく期日がどんどん迫ってくる。

そして最終的にあきらめてしまった。

4.1.6 成績発表

慶應義塾では、(東大落ちへの当てつけのために、東大の合格発表と同じ)3/10に成績発表があるが、12/28の時点で落単したのは分かっていたので驚きは0であった。ただ、他にも必修を落としたのではないかと心配になっており、若干留年を怖がっていた。本当に留年した人もいるんですよ

4.2 B3の理工学基礎実験

4.2.1 はじまりのちょっと前

時は進んで2021年9月24日。B3としての秋学期が始まる前、理工学基礎実験についてのアナウンスが全くなくて、違和感を感じていた。

履修案内をよく見てみると、実は再履修するにあたって必要な手続きがあったらしく、しかもそれは4月中に行う必要があったらしい。実験を落としたことは当然学事に把握されており手続き不要だと思っていたので、滅茶苦茶びっくりした[註3]。

[註3] B3の初めのガイダンスで、理工学基礎実験を落とした人は面談を受けてくださいと言われたので、恐らくそこで手続きについてお知らせを受けるのだろうと思う。説教されて面倒なだけだと思っていたので面談を受けなかった。

理工学基礎実験担当の先生に慌てて命乞いのメールをしたところ、無事履修を許可してもらえた。理工学基礎実験を再履修する人は4月中に手続きを済ませようね。5ヶ月遅れで手続したせいで、実験名簿のすごく中途半端なところに名前が書かれたりした。

授業ページに公開されていた理工学基礎実験のガイダンスを見たところ、理工学基礎実験を受ける意義が長々と説明されていた。これには心当たりがあって、B2のときにFDアンケート[註3]に「この科目の意義が分からない」みたいなことを延々と書いたのが原因である。

[註3] 理工学部では、授業の質を向上させるために、学生が科目の担当にフィードバックを送れるようになっている。たまに私怨であることないこと書く学生がいる。

4.2.2 はじまり

実験が始まる金曜日の午前9時、台風が接近していて、電車が止まりそうだと大騒ぎになっていたのが記憶に残っている。

1限の始まりを告げるチャイムを聞いた時、ここが矢上キャンパスでなく日吉キャンパスなのだと体感した。

そして何よりも印象的だったことは、周りのB2は新品同様の実験ノートを持っているということだ。例年はB1の自然科学実験で使った実験ノートを使うため、実験ノートの表紙には折り目がついたりして使用感を伴う。私もB1のときは対面授業だった(そもそも対面/オンラインという概念が無かった)ので、実験ノートには使用感が伴っていた。しかし、当時のB2は自然科学実験がオンラインとなっており、恐らく実験ノートを使う機会がなかったのだろう。

4.2.3 すべてが順調にいっている

特に躓くこともなく、順調に実験レポートをこなしていた。自身の過去レポがあったのも大きいが、日程に余裕をもってレポートに取り組んだこと、コロナ騒ぎの精神的ストレスが減ったことが大きかったと感じている。

そこまで言うことないので、印象的なの題目2つについてサラッと書くことにする。

まずはD-1実験。去年内容が足りないなどと言って心を折ってきたこの題目は本年も続投していたが、実際に触ることで得られる考察が多かったため、レポートにはそこまで困らなかった。

もう一つはフーリエ変換という題目である。私と同じ学年かそれ以上の人だと、死ぬほど面倒なレポートに苦しめられただろう。ネ申エクセルが配られて、図をアホみたいにレポートに貼らされた記憶があると思う。

しかし、この代からはExcelではなくPythonを使って実験を行うようになった。PythonとMatplotlabで第n項までの近似のグラフをサクッと出力できるようになった。また、実験で実際の波形のデータをフーリエ変換して観察を行うようになり、より実践的になった。このようなアップデートは積極的に褒めていきたい。

4.2.4 成績発表

5. 考察

5.1 落単を防ぐために行うべきこと

大前提として、コロナ騒ぎが無ければ恐らく理工学基礎実験を落としていなかっただろうと思う。そのうえで必要なことは、レポートに早いうちに取り組む(前日の深夜にやらない)ことである。時間をかければレポートの分量は増え、質は向上するし、分からないことについて友達と相談する時間が生まれる。そうすれば再レポになるリスクも減り、再レポによる負担も減るだろう。まあレポート自体の負担は増えるけど

5.2 理工学基礎実験の意義

ガイダンスでは、幅広い知識で逆T字型だの筋のいい思考を身に着ける「筋トレ」だのレポートに免疫を付けるだの言っている。確かに一理あるとは思うが、得られる利益が理工学基礎実験の苦労と釣り合っていないように感じている。

知識を付けるということについては、自分自身が1年前やった内容すら覚えていなかったため、実験で知識が身に付いたという実感が全く持てなかった。また、論理的思考力とやらもそこまで身に付かないように感じる。先輩の過去レポを手に入れてる人が多いだろうし、深く理解していない現象についてテキトーな実験をして考察したとことで、論理的で筋の通った考察はできないと思う。考察する力自体は大事だとは思うが、時間を浮かせることを第一にテキトーなレポートをでっちあげる学生にとって、得られるのは考察もどきの怪文書を生成する能力である。免疫を付けるについては、面倒なタスクでも「理工学基礎実験よりはマシ」と思えるという意味で事実だと思うが、それで?って感じる。どうせ卒論で地獄を見るんだし、レポート作成のために貴重な時間を割くほどのメリットには感じられないように思う。

私は理工学基礎実験の意義について、作業に耐えられない人間を淘汰するという意味合いが強いと考えている。基礎実験をまじめにやって落とすような人は恐らく卒論で死ぬので、あらかじめ殺しておけば2年浮くという良心だと思う。知らんけど。

5.3 情報工学実験との難易度比較

J科の人はB3になると情報工学実験というものを行う。春学期が情報工学実験第1で、秋学期が第2である。これらの実験科目の難易度と理工学基礎実験の難易度を比べる。

得単難易度の高い順に、理工学基礎実験>情報工学実験第1>情報工学実験第2であると思う。

やはり何と言っても、毎週レポートを書かなければならないというのは大きな負担である。やってる内容自体は情報工学実験の方がはるかに高度だが、書かなきゃいけないレポートが6つ(第1)か4つ(第2)しかないので、その分作業量は少ないと思う。ただし、情報工学実験第1の題目の一部で、授業外の時間を大量に要求してくるものがあるので、週によっては情報工学実験第1の方が大変だと思う。情報工学実験第2は3つの中で一番高度な内容を扱うが、グループに強い人が1人か2人いれば楽勝なのでそこまで難しくない。全員が弱いと死ぬけど

5.4 ダブル実験の可能性

理工学基礎実験と情報工学実験第2を同時に受けたので、実際に大丈夫なのかを考察する。結論から言うと、情報工学実験のレポートは3週間に1回で分量もそれほど多くないため問題ない。ただし、情報工学実験で時間外作業を求められるとその限りではない。私はプログラミングの経験が豊富だったので情報工学実験第2ではあまり苦労しなかった(情報工学実験第2では実装する力が要求されることが多かった)が、実装(≠プログラミング、授業時間内で完結する目標を立てる能力も含める)ができないと授業以外での作業が要求されて、理工学基礎実験のレポートに割く時間が減るので、落単まではいかないとは思うが茨の道を歩く羽目になると思う。

6. 結論

理工学基礎実験を2回にわたり履修した。特にコロナ直後の2年間ということで、例年とは違う経験をできたように思える。また、理工学基礎実験は寿命を縮めることが分かった。

参考文献

[1] 慶應理工 Advent Calendar 2022 [https://adventar.org/calendars/7773]
[2] 慶應義塾大学 理工学部基礎教室 [https://sites.google.com/keio.jp/fsl]
[3]
 ねじ式:フリィダム ロリィタ,2017,[https://www.youtube.com/watch?v=teSQphExzBU]


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