見出し画像

2023年3月6日の東京でJAZZを聴くということ

Blue GIantのおかげでBRUTUSのJAZZ特集が出て、2023年の東京でJAZZを聴くための入門書は手に入ったと思う。

日本で知らない人はいない星野源が巻頭に登場、ルーツと同時にこの特集の肝になる話をしてる。 目次の構成もすごいけど、執筆者を並べてみると、まあよくこのひとたちを集めたなと思う。あたりまえか、編者は柳樂さんだ。なんでこれ10年前になかったのかな。

9年前、2014年3月6日って何の日だ? JAZZ THE NEW CHAPTER(JTNC)の1号が9年前の今日発行となってる。 9年。 私がJAZZを追い始めたのはJTNC2が出たころだから、もう7-8年くらいJTNCにはお世話になってるってことだ。 最初このムックを手に取ったとき、もう取り上げられているアーティストのこと、誰ひとりとしてわからなかった。来日公演情報とJTNCを首っ引きで照らし合わせて、とにかく聴けたアーティスト名にマーカーで色を付けていくくらいの勢いでライブを追い続け、ライブ直後の柳樂さんTwitterも「そうか、あのライブはこう聴けばよかったのか・・・!」という思いで読み続けていた。 今改めてJTNCを読み返すと、アーティストの顔も声も音も演奏も、聴いた場所の記憶とともに相当よみがえってくるので、時間の蓄積とJTNCを出してくれたことについての感謝を改めて感じてる。ほんとうに、ありがとうございました。

のちのち、老舗JAZZ雑誌がたくさんあることに気づき始めたわけですが、読んでもなぜか「仲間外れにされている」気持ちになりとっつきにくく、続かなかった。 今ではそうでもないんですが、これどうしてなんでしょうね。

JAZZの演奏はなにも、来日海外アーティストを聴くだけではない。私の地元横浜は日本のJAZZ発祥の地と言われていて、老舗と呼ばれるJAZZクラブがたくさんあった。知り合いになった演奏者にどこから行くべきか教えてもらい、また、彼の出演を追うことで、日本のJAZZシーンの経験も少しずつ積み重ねた。

日本のJAZZクラブに定期的に通っている方ならおわかりだろう。 どのお店も毎日ライブが催行されている。ライブのない日のほうが珍しい。そして、お客様の数はほんとうに少ない。 そういう場所ばかりではないにせよ、ステージに上がっている人の数より客席のひとの数が少ないなんてざら、22時すぎに客席ひとりぼっちになったことも何度もある。 オマさん土岐さん中牟礼さんをひとり占め。なんという贅沢。

海外がどうなのかまったくわからないけれど、日本ジャズクラブは基本いわゆるカウンターバーにテーブル席がいくつか、というちいさい店舗が多く、飲めない女性には大変敷居が高かった。ただ、だからこそ、演奏者と客席は近く、大御所と言われるかたにも直接ライブの感想も伝えられたし、若手中堅のかたには顔を覚えてもらい言葉を交わす機会も増えた。JAZZは日によって演奏メンバーが入れ替わるので、楽器ごとに1-2人の演奏者を追いかけることで、ほんとうにたくさんの生音を聴くことができた。 誰を聴いていいかわからなかったときは、とにかく新宿PITINNか南青山(現在渋谷)Body and Soulへ。 こうして、「演奏する人」と「楽器の生音」を知っていった。

日本のJAZZについては、酷評するひとも論説ももうたくさん会ったし聞いたし読んできたけれど、そんなこと言われるものではないと私は思う。 もちろん、来日海外アーティストはそれぞれ凄い。さらにBluenoteが会場であれば、音響システムも良ければ音の盛りもすごいので、確実に素晴らしい演奏を聴くことができる。 それはたしかにそのとおり、だけど、日本のアーティストにも十分同じレベルで聴けるひとはたくさんいる。コロナ前はBluenoteは来日アーティスト専門箱だったけれど、今は日本の注目アーティストがたくさん出てる。 若手だって、佐瀬バンドはbluenoteだったし海斗くんはcottonだった。 「凄いかどうか」で聴くんじゃない。 「どんなひとが」「どんな音で」「どんな音楽をやるか」をナマで聴くなら、2023年の東京は結構な贅沢ができる場所なんじゃなかろうか。

誰をどこで聴けばいい? BRUTUSに書いてあるから、まずはそこから聴き始めるのでいいと思う。 アーティストはほぼInstaやってるから、気になる人のアカウントから試しに動画聴いてみるのもいいし、youtubeチャンネルを持ってるひとの音を聴くもよし、youtubeの検索で個人名入れればいろいろな組み合わせの演奏も聴ける。 お店がよくわからないなら、まず新宿PITINNのホームページ見れば2か月先までスケジュールがでてて、誰が何をやっているひとかがわかる。大御所が毎日出ているので、なんなら配信の会員になって、ライブ行く前にたくさん聴いてみるのもいい。お店ではなかなか見えない演奏者の手元もばっちり見えていいよ。 下北沢NO ROOM FOR SQUARESは若手中心のおもしろいセット多いしシークレットもあるので何回か行って連絡もらえるようになるのもいいかも、セッションを聴きたいなら下北沢rpmはいろんな人が出てるしまず入りやすい。(高田馬場イントロと六本木エレクトリック神社はちょっと敷居が高いです) そのうち好きな演奏者が決まってくるだろうから、そうしたら次は、その人の入るライブを何度か続けて聴くと、またいろんな別の組み合わせで別の楽器の演奏者を知ることができて、さらに楽しみが増える。 BRUTUSで今を時めく若手と紹介されたひとも「知らない人にこそ来てほしい」「これまで客席に来たことない人にこそ聴いてほしい」ってよく言ってる。 どこかで聴いた海外アーティストのフレーズを、偉人の音のかけらを演奏から見出だすのではなく、今ここにいる演奏者が紡ぎだす音を先入観なく聴いて、そこから好きなものを探してほしい。なんなら苦手って思ってもいい。続けて聴けばきっと「この音が好き」「前とこんなとこが違った」「どうしてそう演奏したの?」「こんなこと聴いてみたい」「こういうのはどこで聴いたらいいのかな?」が出てくる、そうしたら、ぜひ終演後に演奏者に直接それを伝えてあげて。それが、演奏者にとって一番の次へのエネルギーになると思う。たくさんライブで聴くうちに、スタンダードはいつの間にか覚える。歴史が気になってきたらここでふたたびBRUTUSの登場。 それで足りなければ、図書館行くもよし、ネット検索、JTNC全巻揃えるもよし、海外検索するとさらに深まるものもあると思う。歴史を知ることでまた、自分の好きなアーティストが、何にこだわり何を追い求め、そこから何を表現しようとしているかに気付くことができるかも。海外アーティストをインスタでフォローすると、思わぬ最新情報が映像で入ってきてびっくるすることもあるよ。

2023年の東京でJAZZを聴く。Blue GIantから入って別にかまわない。演奏するひとは入口はほんとうに気にしてない。 望むのはきっと「先入観なくその場で生まれる音を楽しむこと」そして「幸せになって帰る」「また聴きに来ること」。 2023年日本のJAZZシーンを聴くと、複数アーティスト起点の思ってもみない拡がりがあって、きっとこの先10年20年と楽しめる宝物を貰える。アーティストと一緒に年を重ねよう。

======
久しぶり、本当に久しぶりの更新となりました。
これからまたnote少しずつ文章追加してゆきます。よろしくお願いいたします。