遊び方が盛りだくさん! 『タンクチェス』レビュー

◆ゲーム概要

移動力や砲撃力が異なる戦車をお互いが一手ずつ動かしていき、指揮戦車が相手のラインを超えるか(エスケープ)、相手の指揮戦車を撃破すれば(チェック)、勝利するというゲーム。

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詳細ルールと各戦車の移動力や砲撃力は省略するが(公式サイト参照)、以下の特徴がある。

・撃破された車両はそのまま障害物となる
・障害物まで砲撃距離は無限だが、1マス隣接している車両には砲撃できない
・後退は1マスしか行えない(旋回後の後退、後退後の旋回もできない)

また各車両には装甲値があり、砲撃値>装甲値で撃破可能(同数値では撃破できない)。どの車両も前面の装甲値が高いので、基本的には側面攻撃や背面攻撃をしてようやく撃破できる。つまり、車両の位置取りや向きも重要なのだ。


◆プレイ感

お互いが初回プレイということもあり、まずは基本となる16×16のマップからプレイ。なお、持ち時間と「まった(やり直し・undo)」は無制限だ。

さらに、動かした後に不利な状況になってしまったときに、「それだと撃破されてしまうよ」と確認してあげるという優しい世界でのプレイでもあった。結果、決着に相当時間がかかり、相手の指揮戦車がこちらの陣営に近づいたタイミングでエスケープ負けとして、投了した。

中盤、撃破された車両が密集したエリアでの攻防が続き、展開は白熱。どうにかしてこの戦線をかいくぐり、重戦車が相手陣営に潜り込み、他戦車を蹂躙していくなどの展開もあって、ヒリヒリとした状況にもなった。


2戦目は、自走砲という砲撃の向きが固定されている車両と、障害物を超えて砲撃できる迫撃砲を加えての20×20の広めのマップでプレイした。こちらは後ろに予定があったこともあって、触りだけ確認。

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少しだけプレイした印象としては、20×20マップのほうがどの車両に対しても得意・不得意の相性が発生するので、より一手一手が重くなるかもしれない。

どちらのマップにせよ、砲撃は障害物が無ければ全距離届くので、しっかり射線を確認してないと思わぬところで撃破されてしまう。移動位置と射線の予想が何よりも重要だ。


◆マップ×ルール=無限

盤面は16×16も20×20も両面マップになっており、片面には基本ゲームの配置が表記され、もう片面にはマス目だけが表記されているので、こちらには自由に障害物やコマを配置することが可能だ。

旧市街や要塞、平原などを模したマップなど、公式推奨の障害物配置が同梱のパンフレットに記載されているので、バリエーションは公式だけでもたくさんある。また、内箱には簡易的な10×8マップもあり、こちらは短時間でプレイしたいときにぴったりだろう。

ちなみに、公式サイトではマス目にフィットしたペーパークラフトが販売されている。こうしたペーパークラフトや、ジオラマ模型などのミニチュアのコンポーネントを設置すれば、盤面が豪華になりそうだ。


そして、公式で推奨されている他ルールとして、すべての戦車を破壊する殲滅戦、3台の戦車をエスケープさせるルール、そしてフラッグを奪い合って自陣に持ち帰るフラッグ戦などもある。とくにフラッグ戦は移動力に長けている軽戦車の活用がより重要になってきそうなので、是非こういうオブジェクトルールもプレイしてみたい。


ルールとしてやや不明瞭だったのは、「チェック/エスケープ宣言」である。説明書には、次の一手で勝利となる状況を宣言しなければならない旨が記載されているが、宣言し忘れるとどうなるかはわからなかった。

宣言を忘れた場合は、次の手番、チェック/エスケープに絡んだ行動をすることが出来ないというルールで良いのではないかと思う。このあたりは事前にルールの確認をしておきたい。


こうして、大中小のマップ3つと自由配置、そして数種類のルール、基本セットだけでもほぼ無限に遊べる。

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なお、すでに拡張セットも発売されており、こちらは川などの地形、新たな車両が追加されている。さらにファンメイドから公式ルールになった"怪獣"というファンタジーなコマも存在している。


◆アレンジ・追加ルールの考案

ボードゲーム・アナログゲームの良いところは、ルールのアレンジがしやすいところでもあるので、いろいろ考えてみた。


◇「まった(undo)」制限
公式では持ち時間が16×16マップでは30分、20×20マップでは45分と記載されているので、やはりチェスクロックやタイムカウントアプリで持ち時間を管理したほうが良さそうだ。

「まった」も無制限だと非常に時間がかかるので、手番時にコマに触れた場合、そのコマを動かさねばならないという制約をつける。そして、5回くらいの「まった」制限があったほうが、適度な緊張感・ジレンマも発生し、面白くなるはずだ。


◇障害物非対象配置
公式が推奨している数パターンの配置の他、中央から点対称であれば障害物を自由に配置できるのが売りの一つでもある。

しかし、ルールに則った範囲内で"意味がないマス"がない状態であれば、お互いが相手の陣地に一つずつ障害物を置いていくという非対象配置でも良い気がする。仲間内であれば、あえてバランスの悪さを楽しむのも面白いのではないかと思う。


◇ソロモード/3人戦
昨今のボードゲームのトレンドはソロモードも搭載していることのようなので、ソロモードは欲しい。もっとこのゲームが普及し、「○ターン以内にエスケープ」「○ターン以内に敵の指揮戦車撃破」などの"詰めタンクチェス"のようなものができてほしい。

また公式ルールには4人戦の配置もあるが、障害物の配置や車両でバランスを整えれば3人戦も可能のような気がする。


◇ドミネーション
FPSやTPSではおなじみのルールである。特定の範囲内に一定ターン数撃破されていない車両が留まっていれば勝利。エリア内にいるアクティブ車両数の差に応じて、カウントが増える。


◇援軍
基本ゲームだとコマが数台余るので、撃破された車両と同コマが援軍として参戦できるルール。ちなみに拡張セットには特定の車両を使用することで鹵獲(撃破された相手車両を味方として復帰させる)ルールがあるようだ。


◇ハンディキャップ/レギュレーション
将棋でいうと「飛車角落ち」のようなハンディ戦。重戦車を配置しないか、代わりに中戦車を複数台追加するなどでプレイする。

また、指揮戦車以外に数値を割り振り、規定数値の合計範囲内でコマを好きなようにピックアップしていくルールも考えた。撃破ではなくエスケープ勝利も可能だからこそ、どういう割り振りにするかも悩ましくなる。


◇複数の射線合計
複数台の砲撃数値の合計で撃破可能になるルール。片側の側面の装甲値でしか判定できないが、このルールは公式ルールのそのものを変えてしまうので、やり尽くしたらでいいと思う。


◆総評

このようなウォーゲームは、もともとは戦術指揮教習がルーツがあると聞く。戦場をシミュレートすればするほどルールや戦闘処理が煩雑になり、プレイ時間も長時間になってしまう。

しかしながら『タンクチェス』は、5分程で把握できる簡単ルールということもあり、シンプルで程よくまとまっている。完全情報公開のアブストラクトゲームが得意ではない人も、予測の力・読みの力を鍛えながら楽しくプレイできそうだ。

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