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【ハーモニカ仁義】 戦前生まれのブルーズ生き証人、ボビー・ラッシュさん【仲村哲也】

仲村哲也(TEX NAKAMURA)の『ハーモニカ仁義』
第8回 戦前生まれのブルーズ生き証人、ボビー・ラッシュさん 前編
第9回 戦前生まれのブルーズ生き証人、ボビー・ラッシュさん 後編

前編

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今回は1933年生まれ、米国ルイジアナ州出身のブルーズマン、ボビー・ラッシュさんをご紹介します。ボビーさんは、素晴らしいブルーズシンガーであり作曲家です。楽器はギターとハーモニカを演奏されます。戦後はアーカンソー、そしてシカゴへと渡り、その時代をリードしたブルーズマン達と共演し経験を積み重ね、1960年代にはソロデビューを果たし、70年代も、そして80年代に入ってからはより精力的にそのブルーズシーンで活動して来られました。長年に渡りライブ活動は勿論の事、録音作品も多数発表されています。

同世代では故ジェームス・ブラウン(ソウルシンガー)さんやウィリー・ネルソン(カントリーアーティスト)、アルバート・コリンズ(ブルーズギターレジェンド)さん等。ハーモニカプレーヤーでは英国のジョン・メイオールさんとも同年齢です。

ボビーさんの録音作品はグラミー賞、ベストトラディショナルブルーズアルバム(2017年)を受賞されました。83歳の時です。その前後には同カテゴリーに5回もノミネートされています。
昨年(2019)に発表したアルバム(Sitting on Top of the Blues)も2020年のグラミー賞にもノミネートされています。87歳になられた今もバリバリご活躍で、今年も既に新作を発表しています。

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そんなボビーさんとお逢い出来るチャンスがあったのです……

(2021.1 ハーモニカライフ91号に掲載)


後編

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数年前、自宅近所にあったレコード店、アメーバハリウッド支店での店内ライヴに、何とボビーさんが来ることになったのです。私はショーが始まる数時間前から店内をブラブラしてそのチャンスを伺っておりましたが、その甲斐もあり、遂にボビーさんとお話し出来る機会を得ました。それはサウンドチェックが終わった時でした。ボビーさんはお店の外でしばしご休憩されておりました。

この様な時は、ガシャガシャ接しないのが最低限の礼儀です。私はその辺のリカーストアで偶然逢った様な素振りで話しかけます。最初っから「貴方のだッだ大フアンですッ」とかブッキらぼうには言いません。(しかし心の中ではそう大声で言っています(笑))

簡単なハーモニカに対しての質問を軽~く尋ねた所、すぐに「お前、ハーモニカ吹きだろ?お前が居なくなるまでオレはハーモニカを吹かないぞッ」と笑っておっしゃいました。コレはアメリカ人特有のジョークです。悪意はなく、言わば駆け出しの小僧の私に優しく歓迎して下さったと解釈しました。以前、チャーリー・マッセルホワイト(ハーモニカレジェンド)さんと出逢った時も全く同じ事を言われました(笑)。その後も気さくに会話に応じて下さり、短い時間でしたが、楽しい時間を過ごしました。

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本番のライヴでは地元のブルーズファンが詰めかけ、店内は一杯になりました。ボビーさんは83歳の時です。しかし、年老いた雰囲気は一切無く、むしろ絶倫男丸出し(失礼ッ)で精力みなぎったギラギラとした歌やギター独奏でそれはそれは素晴らしかったです。それがブルーズマンの生き様だと感じました。勿論ハーモニカも演奏されました。コレが又、年季の入った深い音色で、1音で胸を鷲掴みされた様な思いでした。正に生き証人演奏に圧倒されました。この日の模様は現在でもBobby Rush live at Amoeba(Web検索)でご覧になれます。

いや~、毎回思う事なのですが、先人の方々はやはりスゴイですネッ。私も生涯現役と誓います。

(2021.4 ハーモニカライフ92号に掲載)


仲村哲也 (TEX NAKAMURA)
-Profile-

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1980年代始めまで、自己のバンドでエレクトリック・ベースを担当していたが、1950年代のサウンドに取り憑かれ、アップライト・ベースに転向。
1983年に、FENから流れてきたJ ガイルズ・バンドの「ワーマージャマー」に衝撃を受けハモニカを手にする。
妹尾隆一郎氏に師事し基礎のテクニックを収得。その後は、「F.I.H.ハモニカコンテスト」入賞、アポロシアターのアマチュアナイト・チャンピオンシップに出演(日本人初)するなど、数年の間にトップクラスのハーピストとして活躍する。
以後国内でスタジオミュージシャンとして数多くの録音に参加。1992年渡米。
西海岸人気ファンクバンド「WAR」にリーオスカーの後釜として抜擢され、年間平均100本ワールドツアーに13年間参加。Tex NakamuraやWeeping Willow(咽び泣く柳)の名で、現在も米国ロサンゼルスを拠点に幅広い音楽性と美しい音色で活動中。

●オフィシャルWebサイト
http://blueslim.m78.com/nakamura_tetsuya.html