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ハーモニカを「吹く」とは言うけれど

『たかがハーモニカ、されどハーモニカ 』
第3回 ハーモニカを「吹く」とは言うけれど

わが教室に昔、よくハーモニカのリードを壊す強者がいた。複音ハーモニカのみならずホルンハーモニカのリードさえ何本か折ったりもした。どうやらその生徒さんはハーモニカの吹き口めがけて強い息を吹き入れていたようなのだ。

考えてもみましょう。ハーモニカの発音体はリードと呼ばれる幅2ミリ、長さが1センチからせいぜい2センチ強の薄っぺらな金属片です。 これが心地よく完全振動して初めて美しい音が出るのです。 大前提としてリードプレートへのリードの取り付け方や隙間の作り方(アゲミ)は問題ですが、それは別に考えるとして、演奏に際して考えるべきは息の吹き入れ方です。

ハーモニカのふき口めがけて無茶吹きすればリードはストレスを感じて不完全振動! めざす音は鳴ってくれません。リードに100パーセント心地よく働いてもらうためには、もっと「リードの震わせ方」に思いを馳せねばなりません。ハーモニカの吹き口めがけて「フッ」と息を吹きつけるのはダメ! お腹の底から太く優しい息を「ホー」と、ハーモニカの穴を通してまっすぐ遠くまで持っていくイメージですね。「強い息」ではなく、「太い息」。特にレガート奏法ではこのことは重要です。

リードの様子は見られませんが、きっと気持ちよく震えてくれてますよ。ハーモニカを奏するとは、実はハーモニカを「吹く」と言うよりはハーモニカに「息を通す」ということだったのです。

複音ハーモニカのふくよかな音を実現するために大切なのは、か弱いリードへの愛。リードの気持ちを思いやりながら、きょうからハーモニカは「吹かない」で、「ホー」と優しい真っ直ぐな息を通してあげてくれませんか。

(2019.10 ハーモニカライフ86号に掲載)


岡本吉生
 -Profile-

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日本唯一のハーモニカ専門店「コアアートスクエア」の代表。教室を主宰するほか、1996年にはカルテット「The Who-hooo」を結成。全国各地に招かれて演奏活動を続ける。
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