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朝ドラ「エール」に励まされて

『たかがハーモニカ、されどハーモニカ 』
第6回 朝ドラ「エール」に励まされて

 コロナ感染が広がって、政府の緊急事態宣言発出。以来私たちは巣籠もりを決め込む他ありませんでした。予定されたコンサートはずっと先まで中止、公民館の閉館で教室さえ休止を余儀なくされました。
 音楽だけでなく演劇や美術、あるいはスポーツなど様々な催しも次々と不開催となって、私たちの生活の彩りが消えてしまったような寂しさを覚えます。
 2020年は虚ろな、幻の一年!? いっそ2020年という年はご破算にして、来年を改めて2020年にしたら、と無責任に思うほどです。オリンピックだって、「東京2021」ではなく、「東京2020」でやるんですから。
 そんな憂鬱な時代に、私たちを励ましてくれてるのがNHKの朝ドラ「エール」です。ドラマのモデルとなった古関裕而さんはハーモニカで音楽を学んだ人。ドラマでは主人公の小学生時代から、ハーモニカが重要な役割を担って登場します。
 実は私たち「愛川ハーモニカアンサンブル」はドラマのアンサンブルの演奏シーンで音の出演を果たしました。昨年秋、NHK放送センターに出向き、音楽スタジオの一室で「皇帝円舞曲」と「組曲カルメン」の2曲を収録。放送ではその一部分が短く使われただけでしたが、25年間やってきた愛川のメンバーにとっては貴重な体験となりました。
 アンサンブルの収録後、今度は僕一人が小さなスタジオで「浮世小路行進曲」という短い曲の収録。複音で小学生のように吹いてとの注文に戸惑いながらも数回のテイク。主人公の小山少年が大将、鉄男の詩に曲をつけた初めての曲だったのです。小山少年が山上でハーモニカを吹くクライマックスシーンで流れました。
 主人公がハーモニカ俱楽部の定期演奏会に向けて作曲した「思ひ出の径」の収録にも参加。岩間朱美さん、新井隆司さん、それに僕のコードハーモニカでの多重録音で、古関裕而さんの幻の曲をドラマの中で蘇らせたのでした。
 まさかの胸腺癌という特異な疾患を宣告されて、入院直前にテレビから流れる自分たちのハーモニカ演奏に、大いに励まされたのは実は自分自身だったのかも知れません。

(2020.7ハーモニカライフ89号に掲載)


岡本吉生
-Profile-

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日本唯一のハーモニカ専門店「コアアートスクエア」の代表。教室を主宰するほか、1996年にはカルテット「The Who-hooo」を結成。全国各地に招かれて演奏活動を続ける。
コアアートスクエア(月曜定休)
〒243-0303 神奈川県愛甲郡愛川町中津3505
Tel:046-286-3520

●コアアートスクエア Webサイト
http://www.harmonica.bz/index.html