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【ハーモニカ仁義】 師匠、妹尾隆一郎からの贈り物【仲村哲也】

私は20代の頃、短い期間でしたが、国内ブルースハーモニカの第一人者、妹尾隆一郎さんに弟子入りをしました。
当時はまだ他のお弟子さんも少ない時代で、師匠ご本人も「教え方」を模索されていた時期だったと思います。私は素行が悪く、腹式呼吸が出来ていないと、よく下っ腹にパンチを入れられていました。(笑)
基礎からその極意まで叩き込んでもらったそのスキルは、その後の演奏活動の基盤となりました。

私が渡米してから10年程たった頃に一時帰国した時、偶然次郎吉(東京高円寺の老舗ライブハウス)へ師匠がご出演されていると知り、ご挨拶に伺いました。

久しぶりに聴く師匠の生演奏は素晴らしく、それは自分にとって修業時代にご教授頂いた内容を再認識させられるパフォーマンスでした。

ライヴ後に再会を互いに喜んだ後、今さっきまでステージで使っていたご自分のアンプを私に手渡し、「アメリカへ持って行って使えッ」とくださいました。

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そのアンプとはご本人が考案されたハーモニカ専用のアンプで、プロトタイプ1号機です。
開発されてから様々な演奏現場を通過して来たであろうルックスにナイスなブレイクイン(鳴らし試奏)済みで、鳴り盛りな最良のコンディションでした。
既に師匠の念が染み込んでいる様で、熟成された音色が得られます。
私は手荷物機内持ち込みでLAまで持ち帰りました。

妹尾隆一郎師匠は2017年に他界され、今では遺品となってしまいましたが、現在でも大切に使っています。

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先日、某ナイトクラブのギグへ持ち込み、思いっきり鳴らしました。
やはり妹尾師匠の様な音が出ましたネ、、、、
「初心を忘れるなッ」と背後から言われた様な気がしました。
日本生まれの私は、日本製のハーモニカアンプを外国で誇らしく使っています。
勿論ハーモニカは日本製のトンボハーモニカを誇らしく演奏しています。

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(2019.10 ハーモニカライフ86号に掲載)



仲村哲也 (TEX NAKAMURA)
 -Profile-

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1980年代始めまで、自己のバンドでエレクトリック・ベースを担当していたが、1950年代のサウンドに取り憑かれ、アップライト・ベースに転向。
1983年に、FENから流れてきたJ ガイルズ・バンドの「ワーマージャマー」に衝撃を受けハモニカを手にする。
妹尾隆一郎氏に師事し基礎のテクニックを収得。その後は、「F.I.H.ハモニカコンテスト」入賞、アポロシアターのアマチュアナイト・チャンピオンシップに出演(日本人初)するなど、数年の間にトップクラスのハーピストとして活躍する。
以後国内でスタジオミュージシャンとして数多くの録音に参加。1992年渡米。
西海岸人気ファンクバンド「WAR」にリーオスカーの後釜として抜擢され、年間平均100本ワールドツアーに13年間参加。Tex NakamuraやWeeping Willow(咽び泣く柳)の名で、現在も米国ロサンゼルスを拠点に幅広い音楽性と美しい音色で活動中。

●オフィシャルWebサイト
http://blueslim.m78.com/nakamura_tetsuya.html