私的偏愛録 其の十一 panpanya「カステラ風蒸しケーキ物語」

好きだ、と思ったものは、いつまでもそこにあるとは限らない。panpanya「カステラ風蒸しケーキ物語」シリーズを読んで、改めて強く感じた自分がいる。

ただ、わたしは商品を求めて店々を駆け巡ったり、手に入らなければ作ればいいじゃないか、という発想には至らずにここまで来てしまった。

何年か前にスーパーで購入した、ねちっとした食感の棒状のチョコレートアイスがいたく気に入り、リピート買をしていた。しかし、次のシーズンには店頭で見かけることができず、販売元や商品名すら忘れてしまっていた。頭の片隅にはねちっとしたあの食感が残っていたのだが、追跡なぞせず忘れかけていたある日。目に止まったのは赤城乳業の「ミルクレア」である。パッケージにはねっちり、うっとり。の文字があるではないか。期待を膨らませながらも、あのアイスは全部がチョコレートだったからなぁ、なんて違いを思い出しながら予防線を張っていたのだが、そんな必要は皆無であった。めちゃくちゃ美味しい…!わたしにとって完璧なくらいのねちっとさ。チョコレートとミルクのバランスの良さ。ああ、わたしが求めていたものはこれだったのでは、いや、もうこれでいいや。そんな記憶の中のアイスクリームに失礼な態度をとってしまうくらい、ミルクレアは好みなアイスクリームだったのだ。

ミルクレアは、スーパーに行くたびに陳列してあるし、なんなら時々可愛らしいキャラクターとのコラボパッケージになっている。最近ではすぐにはいなくならないからと、スーパーカップを手にしている自分がいる。

panpanyaのカステラ風蒸しケーキに対するような熱量は一ミリも持っていないことと、過ちは繰り返されるのだと気付けた自分はこの夏、少しだけ成長できたかもしれない。


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