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ドル需要と新興国 巨額マネーフロー

先日2兆ドル規模の経済刺激策が米政権により承認され、FRBは「無制限」の金融緩和を発表しました。

2兆ドル規模の経済刺激策と、FRBの資金用借入枠を含めると、今後9か月で6兆ドル分の資金が消費市場や企業に流入することになります。

2兆ドル規模の経済刺激策の内訳は以下の通りです。
・3000億ドル➞国民一人当たりに1,200ドルの現金支給
・367億ドル➞中小企業向けローン
・2000億ドル➞4か月分の失業保険料
・5000億ドル➞非金融企業への融資
・1000億ドル➞医療
・1500億ドル➞州政府及び地方政府の支援金
・残り➞税の遅延や免除を含む経費や、為替安定基金…

これまでにない規模です。
それにFRBが発表した大規模な量的緩和が上乗せされます。

FRBが発表した「無制限」の金融緩和が話題を呼んでいます。
「無制限」というのは単なるコミュニケーションツールであり、「無限」という意味ではありません。
FRBのメンバーは「無制限」という表現のような、コミュニケーションツールが重要であることを心得ています。
コミュニケーションツールを使用することで市場を安定させるのが目的です。
金融緩和には限度があります。
それは米ドルの信用と需要によって制限されます。

そして、現在米ドルの需要は拡大しています。
その直接的な要因は世界で「ドル不足」が起きていることです。
準備金を含むマネーサプライからドルベースの負債を差し引いた場合、世界のドル不足は現在13兆ドルと推定されています。

ドル不足はどのようにして起こったのか?
過去20年間で、中国を中心とする新興国と先進国のドル建て債務は爆発的に増加しました。
現在のような景気先行きが不透明な状況では、多くの国々が金利を切り下げ、自国(新興国)通貨共に引き下げます。
BIS(国際決済銀行)によると、新興国やヨーロッパ諸国が発行したドル建て債券の発行残高は、2008年から2019年の間に30兆ドルから60兆ドルに倍増しました。
これらの国は今後、輸出やGDPの鈍化で資産が低迷した時(現在低迷している)、ドル建て収益に大きな穴が開くことになります。
これらの一連の流れがドル不足の直接的な要因となっています。

そして今後、世界のドル不足は2020年3月の13兆ドルから12月には20兆ドルとなる可能性があります。

中国は3兆ドル分のドルを持っています。
新興国の中では、最もドル準備が進んでいる国です。
それでも2019年に中国の輸出が鈍化したため、ドル建て負債が2,000億ドル増加しています。
今後さらに輸出が悪くなれば中国のドル不足も深刻化する可能性があります。
一方、ロシアもドル不足に苦しんでいる国の典型例です。
今後新興国では新型コロナウイルスの影響で輸出がさらに鈍化することが予想されているので、同時にドル依存も強くなります。
このような局面なので、中央銀行の金利競争は激しさを増しています。
金利競争は誰が勝つかではなく、誰が最初に多くを失うか、ということです。

ここで新興国通貨(対ドル)を見てみます。
(インド・ルピー)

(マレーシア・リンギット)

(シンガポール・ドル)

(タイ・バーツ)

新興国通貨の暴落は未だに暴落が止まっていません。
年末までにキャッシュ不足が20兆ドルに達した時、どうなるでしょうか。
恐らく巨額なマネーフローが発生します。
考えるだけでも恐ろしいです。

これは通貨市場に限らず株式でも同じです。
今後新興国の輸出が鈍化することになれば、キャッシュ不足が重大な問題となり、経済に大きな風穴を開けることになります。
そうなれば株式資産も流出するでしょう。

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