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第39話 noteフォロワーの話-脚

エリさんが小学生のころ、近所に「開かずの踏切」があった。

複数の路線が通るせいで、空いている時間が極端に短い。
急いでいる子どもは、しばしば遮断機をくぐって通ることがあった。

「学校ではずいぶん注意されたけど」

線路がカーブしていることもあって、やってくる電車が見えにくい。
とにかく危険な踏切だった。

エリさんが小学5年生の秋、その踏切で事故が起きた。
運動会の翌日だった。
遮断機をくぐって渡ろうとした6年生の女児が、電車にはねられて亡くなったのだ。

ひどい事故で、一緒にいた友人は、「左脚がちぎれて飛ぶのを見た」と語った。
翌日には朝礼で校長先生が事故について語り、みんなで黙祷を捧げた。

数日後、学校中がまだ悲しみに暮れる中、ちょっとしたパニックが発生した。

「運動会の写真に写っていなかった、ていうの」

当時、運動会の写真はプロのカメラマンが請け負っていた。
現像できると、掲示板に張り出され、子どもたちは気に入ったものを注文するのだ。

貼り出された中に、事故に遭った女の子が写っている写真が混じっていた。
ムカデ競争に興じているものだった。

どういう加減だったのか。
写真の彼女には、脚が写っていなかった。

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