第18話 妻の話-金縛り
「金縛りには種類があるのよ」
妻は言う。
意識はハッキリしているが、身体は動かせない。
その点は同じだが、それに伴って現れるモノには種類があるらしい。
「一番多いのは、なにも言わない人ね」
枕元に現れて、ただジッとそこにいるだけ。
しゃべらないし、特に行動を起こすこともないので、害はない。
「1度だけしゃべる人がいたんだけど……」
母親の知人で、妻自身も顔見知りの人物だった。
「……ちゃん、……ちゃん」
そう、名前を呼ぶのが聞こえたという。
ちなみにその男性は、ちょうどその時刻に自殺していたことが、後でわかった。
「お別れを言いに来たんだと思う」
金縛りは怖いが、そんな風に、たいていは害のないものらしい。
「ただ、ごくたまに、嫌なのもいるわ」
息苦しさに目を覚ますと、誰かが胸の上にのっている、というパターンだ。
中年女性が1度、年齢不詳の男性が1度あったという。
そんなときはどうするのだ?
ぼくの問に妻は答えた。
「心の中で、話しかけるの。私はあなたとは関係ありません。人違いだと思う、って」
霊はそれで納得するのか。
今のところは効いているそうだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?