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2014年5月の記事一覧
第5話 友人の話-相談
「ぼく自身に霊感は全くないんやけどね」
新垣は知り合いからよく相談を受ける。
以前不動産屋に勤めていたことがあって、そのとき経験したことが、意外にトラブル解決に役立つのだという。
「最近もあった。前の住人が自殺してもうた物件やったわ」
築6年という、比較的新しい賃貸マンション。
駅近の割に安いお得物件なのに、なぜか入居者の入れ替わりが早い。
しまいには、リストラされた住人が風呂場で手首を切っ
第7話 友人の話-引っ越し
霊は電話に出るらしい。
「ほんまやで。俺、話したこと、あるもん」
俊昭は大学生のころ、引っ越し屋でアルバイトをしていた。
肉体的にきつい日もあるが、稼ぎはいい。
高校時代はラガーマンとして鳴らした彼に、ピッタリの仕事だった。
ある日、俊昭のチームが女性1人の引っ越しを担当した。
チームはチーフとバイト2人。
3人いれば、あっという間に片付く案件だった。
「楽な仕事やった。昼過ぎから始めて、
第8話 友人の話-揺れる
不動産関連のライティングが多いため、ぼくの友人にはそっち関係の人がけっこういる。
野依さんもそんな1人。
土地や家の買取を主な仕事にしている。
怖い経験はないのか?
酒の席でぼくが訊ねると、あっさり首を横に振った。
「ありきたりやけど、生きてる人の方が怖い。こんな仕事してると、そう思う」
それでも、重ねて訊ねると、少し前にビミョーなのがあったという。
「査定の依頼があった家なんやけど」
第10話 友人の話-ヒトカラ
「やたらマイクが臭かってん」
宮路はヒトカラが好きだった。
ヒトカラ……一人で行くカラオケだ。
気兼ねなしに歌い続けられるので、好む人は少なくない。
「以前は週に1度は行ってたかな」
営業マンの彼は、ときには仕事をさぼって、カラオケに行くことがあったらしい。
その日も、営業先が不在だったため、宮路はこれ幸いと、近くで見つけたカラオケ店に入った。
「大手チェーンのお店で、特に変わったところはな
第14話 母の話-大叔父の位牌
自分には霊感などない.
長く母はそう信じていた。
よく「20歳までに見なければ、一生幽霊など見ない」という。
前出のエピソードでも書いた通り、母は中学生のころ、一度だけそれらしき気配を「聞いた」ことがあった。
だが見てはいないから、そのようなものがいるとは思えない。
母はそう考えていた。
ところがある秋口の深夜、それはいきなりやってきた。
自宅のベッドで眠っていた母は、名前を呼ぶ声に、ふと