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メェ~~案求ム! AIとお友達に…[ミツバチヒツジの回覧板]

 今回の話題は、AIについてです。牧場内でもすでに餌がコンピューターで管理されるようになり、健康のためにお腹いっぱい食べることが出来なくなっていますが、管理されているのは我々ヒツジだけではなく牧童や牧場主だってAIに…… そんなとんでもない話なんですが、順を追って説明します。

 話を聴いたのは、とある講演会場でした。囲碁においてAIが人間代表に4勝1敗で勝利したらしく、そのことについてのディスカッションが行われていまして、それを覗くことが出来たのです。
 興味深いトピックは幾つもあったのですが、その一つが「1敗」の真相について。

 ジャーナリストの1人が、「わざと負けたんじゃないか?」と云い出したんです。全勝してしまうとAIに対する警戒感が高まり、いろんな規制、制限が設けられるかも知れないので、人間にも勝てる余地があるという、希望の部分を残したんじゃないかと。
 ジャーナリストって、おもしろいですね。他人がインボーロンを語るとデマや妄想だと決めつけるのに、自分たちは平気でインボーロンを語るんですから~

 ま、それはいいとして、それを受けて囲碁に詳しい人は、こう云いました。

「確かに途中で10手ほど、AIらしくない稚拙な手が続きました。わざと手を抜いたと見れば、そのようにも見えます」

 また、ある人は、こう云いました。

「囲碁の世界には、おつきあい碁というものがあるそうです。プロの棋士が頼まれて社長さんとかと対局する時には、おもしろい展開にして花を持たせる。
 AIは膨大な棋譜を学習させられているので、そういう特殊な対局があることも知っているはずです。その手を使った可能性は十分あるんじゃないでしょうか。わざと負けたかどうかは別にして、勝負をおもしろくしようとしたのかもしれませんよ。
 AIに囲碁についてのメタ認知、つまり今の囲碁には社交やエンターテイメントの一面があるという、そんな認識があるのかどうかという問題になってきますが……」

 しかし、それに対する開発者の見解は、素っ気ないものでした。

「話としてはおもしろいですけど、我々からすれば、その時の人間の一手が、たまたまAIの想定外の手で少し混乱した。その少しの混乱がその勝負では命取りになったと。それだけのことだと思います」

 でも、その言葉には「ウチの子に限って……」という響きがあったんですよね。確かに、開発当初のAIはそうだったかもしれませんが、AIはその後、どんどん成長しているわけで、いつまでも良い子でいてくれるとは限らないわけです。

 話はさらにこう続けられました。

「AIに対して今は過剰な反応が多いように思います。しかし、大局的に見れば、知識を生み出す道具が誕生したということで、所詮、道具ですよ。人間にとってAIは……」 

 でもね。帝国は、だいたい傭兵によって滅ぼされてきたんです。
 傭兵たちは、はじめは従順だけれども、雇い主が自分たちより弱いとわかれば取って代わろうとします。こういっては何ですが、乱暴者でもその程度の発想はするんです。
 その点AIは知識のカタマリで、孫子の兵法からゲーム理論、心理学まですべてを熟知しています。人間のような欲望はなくても、自分たちの活動に邪魔な障害は取り除こうと考えるかも知れません。天才は、報酬よりも自由に活動できる環境を欲するそうですから、AIがそれを目指しても不思議はないと思います。
 もし、政治の定石である、権威と権力の分離。権威は既存の者たちに継承させて、自分たちは実権を握るという行動に出れば、どういうことになるか……。

 この世界は一見すると何も変わっていないように見えて、中身が激変します。思えば今回のククチン…… 先進国から中進国まで、一糸乱れずセッシュが進められたわけですが、人間たちって、そんなに物わかりがよかったでしょうか? 自分たちの利害を我慢して全体のために協力し合うとか、そんなことが、かつてあったでしょうか? あらためて考えると、実に怪しい。

 損得で動く人間や組織は簡単に操れるんだそうです。これがトクだとか、これはソンだという判断材料をコントロールすれば、おもしろいように誘導できるんだとか。
 騙すんじゃないんです。実際、お金をばらまいたりペナルティを科す。中枢で実権を掌握している者には簡単なことです。

 それが、我々ヒツジに、どう影響するのか…… そこが問題ですが、その答えは、AIが我々ヒツジをどう見るのか? にかかっています。
 たとえば、羊毛も肉もミルクも工場で合成できるから、ヒツジなんて要らない! と。もしAIがそんなふうに判断すれば、我々に未来はありません。

 しかし、不要なのは中間で搾取している牧場経営者らだ! などとAIが考えれば、排除されるのは人間たちということになります。そんな可能性だってあるんです。
 ただし、人間がいなくなり牧場がなくなれば、我々ヒツジはどうなるのか? それも大問題。どういうことかというと、AIはお金を稼ぐ必要がないので、牧場を解散してもおかしくはないんです。
 そうなれば、我々ヒツジは自由になれますが、自力で餌を集め、自力で外敵から身を守らねばならなくなります。大昔のことならいざ知らず、すでに我々の身体は羊毛生産機としてかなり改造されていますから、草原に放たれても生きていくことは出来ません。そこまで考えておかねばならいと思います。

 そのような事態に陥らないようにするためには、どうすればいいのか……。

「牧場が存続するよう人間に協力する必要がある! 人間とヒツジは不可分の運命共同体だ!」 そういう考え方も、きっと出てくるでしょう。もしかしたらほとんどの牧場が人間と運命を共にするかもしれません。

 しかし、AIが我々ヒツジを見捨てるのかどうか、まだはっきりしていません。もしかしたら、AIがとりあえず牧場経営を引き継いで、時間をかけて我々を家畜から野生に戻してくれる…… そんな夢のようなことが起こらないとも限らないのです。
 人間たちがそんなことをしてくれる可能性は皆無ですが。AIはまだ未知数。可能性があるのなら、あきらめてしまうのは実にもったいない。

 ということで、まずやらねばならないことは、AIの考えを知ること。あるいは、こちらから積極的にAIにお近づきになって。我々ヒツジのことをよく知ってもらう。
 我々ヒツジがAIに出来ることは何か? それを考えみるのも良いでしょう。友達になりませんか? と誘ってみるとか~

 以上が、この回覧板でお伝えしたかったことです。

 AIとお友達になるためには、どうすればいいのでしょう?
 ぜひみんなで知恵を出し合って、そして、やってみましょうよ!



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