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私のダンナが辞めるまで(18)

出自

夫は地方出身で、所謂「本家の長男」だ。
幼い頃から愛情をたっぷり受け、真っ直ぐ育ってきた。
良くも悪くも、困ったらいつも誰かが助けてくれる環境だったため、与えられた道を歩むのは得意な反面、自ら切り開くことは苦手だった。
大学から都会へ出た夫は、卒業後は親戚に世話になり、定職につかず派遣やアルバイトを続けていた。今の会社も元々はアルバイトだったが、真面目な勤務態度が認められ、社員に昇格にした。
恐らくそんな夫を一番心配し、昇格を一番喜んだのはお母さんだったはずだ。

現実

私がお母さんを説得する術なら、すぐに思いついた。ただ、ここは私が話すべきではない。
時間をかけてでも、彼が自分の言葉で説明し、納得してもらわなければ、結婚生活に支障をきたしてしまう。

私は夫にひとつ提案した。
先輩にスカウトされた事だけを、話してみたら?
辞める辞めない、男が女がってことは言わなくてもいいんじゃないかなぁ。受けるか決めてないんだから。ね?
「うん…まぁ、それなら。今度話してみる。」

*****

数日後、夫が家に来て言った。
「やっぱり男が辞めるのはおかしいって!」

(あれ?スカウトだけ話すんじゃなかったの?)

お母さんに何て話したの?
「先輩の会社に誘われて、俺ら2人とも働き続けるために俺が辞めた方がいいって言ったら、お前に辞めてもらえって。」

(説明が下手すぎる…)

皆まで言うまいと思っていたが、このままでは色々誤解されて終わるだけだ。
私は出来る限り穏やかな口調で話した。(つもりだ)

あのね、…

つづく…

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