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私のダンナが辞めるまで⑨

親子対決

家に着くと、落ち着いた様子の夫が待っていた。
ココアを入れて、私も座った。
何があったのか教えてくれる?その言葉に夫は頷き、ゆっくり話し始めた。

役員会は14時からだった。
終盤に差し掛かった頃「話がある」とジュニアが会議室に入り、夫は会議室の外で待っていた。
しばらく何やら話し声や笑い声が聞こえていた。

バーン!!!
突然の大きな音に、夫は驚いた。
「いい加減にしろよ!もういいだろ!古いんだよ!」ジュニアの声が聞こえる。
夫はドアに耳を当てた。
「○○君(ジュニア)、例外を作ると後が大変なんだよ。女が調子に乗って辞めなくなるし」
取締役の声がする。
「例外じゃなくて、規則を変えればいいだろ!?なんで追い出す必要がある?会社のために頑張ってるのに!」
「○○君(ジュニア)さぁ〜、自分の奥さんは辞めさせたのに、なんで○○(私)だけ庇うのぉ〜?特別な理由があるんじゃないのぉ〜?」
チャラ人事野郎の言葉に、夫は震えた。
「おい!親父!なんで黙ってる?この会社は腐ってる。変えていこうや!もういいだろ?古いしきたりなんて!おい聞けよ!親父!親父!」

突然ドアが開いた。
夫が中を覗くと、チャラ人事野郎がジュニアを羽交い締めにしていた。
「離せよ!」と腕を振りほどき、そのまま会議室を後にしたジュニアは、上着と鞄を持って出ていった。

針の筵

ジュニアが去った後、チャラ人事野郎に呼ばれ、会議室に入った夫。
たくさんの嫌味と、私たちが悪いんだという話が延々と続く。夫は人事野郎を睨み続けた。

解放された直後は、会社中が夫を見ていた。
居た堪れず席を立ち、会社を出た。
自分が言われたことよりも、自分たちがお願いしたばっかりに、ジュニアが社長と揉めてしまったことが辛くなり、夫は泣いてしまったようだ。

その日、ジュニアは会社へ戻らなかった。

つづく…

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