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【Edge Rank 1000】創り続けること【TOMAKI】

祝1000号!

Edge Rank がなんと今回で1000号!2014年7月8日に第一号が配信され、以来メンバーは途中で入れ替わったりもしつつ、常時10名前後の執筆陣が毎月のお題をもとに記事を書いてきました。最初はメルマガで、そして2020年からはこのnoteで。8年と2ヶ月プラス8日で、なんと1,000記事達成となりました。

私が参加したのは、2018年7月10日の、第487号の記事から。当時はまだメルマガ形式でした。それまでは普通に読者としてメルマガを読んでいたのですが、「執筆者募集」の呼びかけに、「ハイ!やりたいです!」と、仲間に加えてもらったのでした。月に一度、共通テーマの「お題」について考えながら「今月は何を書こうかな」といろいろ連想しながら自由に執筆するのは心地よいです。

今月Edge Rank共通テーマは 「残りモノ」というわけで、月初からいろいろ考えて下書きを書いては消しを繰り返してましたが、渡米留学時代から今までのことを書くことにしました。

深夜のアート学部棟

「よー、今日はこっちの教室かい?」

深夜2時を過ぎた頃、清掃員のおじさんがやってくる。モップや掃除用具一式を積んだカートを押して、ちょっとアクセントのある英語で挨拶をしてくれる。

「油絵は片付いたんだけど、陶芸がまだ終わらなくて」

この時間、アート学部棟に残って作業をしているのは、ほぼいつも僕だけ。なので、掃除のおじさんともすっかり顔なじみになった。

「あまり遅くならないようにな。片付けて帰れよ」と言って、掃除を終えたおじさんは部屋から出ていった。

誰もいなくなった教室。轆轤を回すモーター音が響く中、目の前の粘土に意識を集中させる。

深夜過ぎのアート学部棟は、とても静かだ。出入り口のカギはオートロック式なので、一度中に入ってしまえばいつまででも作業ができる。アメリカのネバダ州リノでアートを学んでいた学生時代、このアート学部棟が自分の居場所だった。入学当初は、ヒューマンエコロジー学科に所属して人類学を学ぶ予定だった。ところが、たまたま受講したアートのクラスが面白すぎて、次も、次もといろんなクラスを受講していくうちに、アート学部に転部しないと卒業が難しいかもしれないというくらいたくさんの単位を取ってしまった。というわけで、2年生から3年生へ上がるくらいのタイミングで、アート学部へ転部した。

陶芸を専攻していたが、他にも油絵、写真、版画、水彩、ペーパーメイキングや彫刻など、あらゆるクラスを片っ端から受講した。唯一、在学中に取ることができなかったのが、デジタルアートのクラスだった。

デジタルアートとの出会い

1998年5月に大学を卒業した後、就労ビザを待つ間だけ大学に残り、夏学期の二週間だけアートのクラスを受講した。Wall Worksという、ギャラリー空間に作品を制作・展示するクラス。学生がそれぞれアートギャラリーの一部を割り当てられ、その空間を自由に使って作品を制作するというもの。

その時、クラスを担当してくれた教授がたまたまデジタルアートの先生だった。そこで初めて、最新のパソコンやプリンターなどが設置されているデジタルアートのラボを使わせてもらった。初めてAdobeの画像編集ソフトPhotoshopに触れ、「なんだこれは!」と驚いた。写真やプリントメイキングのクラスを受講して、アナログな画像編集の方法を学んでいた自分にとって、このデジタルでのCG画像処理はまさに衝撃的だった。一気に引き込まれて、夏の間ひまさえあればラボに入り浸ってPhotoshopの使い方や、写真の加工の仕方、フィルター効果などを覚えていった。

アメリカ西海岸で就職活動の旅

1年間有効の就労ビザを受け取った後、家財道具一式をリノの倉庫に預けてアパートを引き払い、中古で買った85年式のNissan Maximaに乗ってアメリカ西海岸へ「就職活動の旅」に出かけた。旅と言えば聞こえが良いが、要は家もなく、時々車で寝泊まりしながら、住所不定無職の状態で職探しをするということ。まさに「ホームレス」状態ではあるのだが、車があるということでどうにか「路上生活者」にはなっていないという状態。所持金が尽きたら即アウト。社会人になる前に、人生のドロップアウトが確定するかもしれないというギリギリの状態が続いた。

履歴書とポートフォリオを手にいろんな求人情報をあたってみるも、なかなか進展しない。そもそも、履歴書さえも見てもらえない。そうしている間にも、所持金はどんどん少なくなっていく。

ビバリーヒルズにあるお屋敷へ、「油絵を教えるアシスタント」の求人募集を見て訪れた。部屋に入った瞬間、あまりにも自分が場違いなので、少し悲しくなった。就職活動をするにはあまりにもお粗末な僕の服装。くたびれた靴と、破れたジーンズ。しかも当時の僕は、スキンヘッドにピアスといういで立ちだった。

当然のようにその仕事の募集には落ちたが、僕のポートフォリオを見てくれたその担当者が、知り合いのデザイナーさんを紹介してくれた。ダウンタウンにある宝石デザイン会社で、広告部門のリーダーを務めているとのこと。さっそく面接をお願いして、その場で採用が決まった。あまりにもすんなり決まったので、今までの苦労はなんだったのかと、あっけにとられたが。とにかく新卒社会人としての第一歩を踏み出すことができて良かった。

卒業後の夏休みの二週間、デジタルアートのスキルをがっつりと磨いておいて本当に良かった。それがなかったら、この仕事をゲットできなかったかもしれない。ポートフォリオの中にデジタルアートの作品があったおかげで、僕はその宝石デザイン会社の広告部門で、フォトグラファーとしてデジタル撮影を担当できることになった。

フォトグラファーからウェブ制作の道へ

社内の会議室の一角が撮影スタジオになっていて、照明やカメラ、パソコン、撮影台など全ての機材が揃っていた。当時珍しかったデジタルカメラは、本体がニコン製の一眼レフで、その背面にコダック製のセンサーが取り付けられているという特殊なものなっだ。ファインダーの部分にはCCDカメラが取り付けられ、撮影している状況をリアルタイムでパソコンで確認できるというものであったが、映像の画質があまりよくなかったので、繊細なフォーカスを必要とする宝石アクセサリーの撮影にはあまり使わなかった。

その機材を使いこなせる人材がまだいなかったので、僕はマニュアルづくりも含めて、1年間みっちりそこで働いた。

就労ビザが満了となり、1999年3月末に僕は日本へ帰国した。ロサンゼルスでオンライン広告制作やデジタル画像編集のスキルが身についたので、まずは地元のインターネットサービスプロバイダーに勤務してパソコンやインターネットに関する知識と経験を積み、2001年からWeb制作業界で仕事をするようになった。途中、モバイルコンテンツ制作や、携帯通信キャリアさんの仕事も経験し、現在は外資系の広告代理店でデジタルマーケティングのプロジェクトマネージャーとして勤務している。主に外資系企業のクライアントの案件を担当し、時々お客さんのオフィスの中で働いたりもしつつ、気づけば今の職場で10年。社会人経験も24年になった。

今でもまだ、週末などに「日曜アーティスト」を名乗って、気ままな創作活動を続けている。仕事の合間に深夜までかかって作品を制作したり、あるいは趣味のもの書きなどをしていると、学生時代のアート学部棟での体験を思い起こすことがある。あるいは、週末の時間を確保するために、終電を気にしながらオフィスで一人残って仕事をしている時など、ふと学生時代のあの掃除のおじさんが入ってくるのではないかと錯覚することも。

仕事でも、あるいは趣味でも。ずっとなにかを創り続けていきたいと思う。

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今月のEdge Rank共通テーマは 「残りモノ」 です。ありがたくないことに、今年も夏の残りモノ(=残暑)が厳しく、九月に入っても暑い日が続きます。なんだかんだ、きっと今年も短い秋があって冬に突入するんだろうなあ、と思ったり。残るのが暑さだけでは面白くないので、みんなの楽しい残りモノを教えて頂こうじゃありませんか。
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内容によってはEdge Rankで取り上げさせていただくこともあります。

編集後記

毎年7月1日のお山開きの日に、東京のあちこちにある富士塚を巡るというのが自分の中でここ最近の恒例行事だったのですが、あいにく今年は仕事で行けず。9月11日に「よし、行くぞ!」と決意して、一日で「江戸七富士」の七つの富士塚全てを巡るというチャレンジをしました。上野の下谷坂本富士からはじまり、護国寺の音羽富士、豊島長崎の高松富士、江古田富士、千駄ヶ谷富士、品川富士と巡り、最後は十条富士まで。途中の新宿への寄り道も含め、かなり都内をあちこち回りました。交通費を抑えるために東京メトロ24時間券を駆使しつつ、最終的に925円で全部回ることができました。その代わり、22km(2万9千歩)ほど歩きましたけどね。楽しかったですよ。

今回も、お読みいただきありがとうございました。
次号は、「東京散歩ぽ」の中川マナブさんです!




「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。