その日、砂漠には珍しく雨が降ってた。ボクは、行き先を決めずに歩きながら、ずっと考え事をしてた。
そういえば、今振り返ると、その後の人生を決めるようなでっかい決断をした時っていつも雨が降ってた気がする。あるいは、雨が降ってる時はその後の人生を大きく変えるような決断をしたくなる性分なのか。
結局ボクは、大学を卒業した後も、ひとりでしばらくアメリカにとどまることにした。帰りのエアチケットをまだ買ってないのと、個展ですこし作品を売ったおかげでお金はすこしあった。その他に、アートの賞を獲ったので、地元のカジノホテルから賞金がもらえるはずだった。
とりあえず、職探しの旅に出かけるには十分だと思った。とりあえず、所持品のほとんどをいったん貸し倉庫に突っ込んで、ポートフォリオと英文履歴書を持って、サンディエゴに向かった。
「旅」と言えば聞こえは良いけど、実質ボクは住所不定無職の、いわゆる「ホームレス」状態だった。サンディエゴのデザイン会社での面接はあっさり落ちて、ボクはロサンゼルスに場所を移して、就職活動を続けた。
時々、ふとした時に途方も無く重苦しくてどうしようもない不安に襲われる。希望が無くなってくると、夢さえも重荷になってくるんだよね。楽な生き方を選びそうになって、ひどく落ち込む。
その面接の帰りも、雨だった。傘を差さずに濡れながら歩いていた。「人生の変わり目」に自分がいることを実感しながら。
ロサンゼルスでは、宝石デザイン会社で写真の仕事をしながら、実践的な画像加工やウェブ制作のイロハを身につけた。帰国して、本格的にウェブの仕事を続けていたら、いつのまにかここまで来た。
さて、ここから先、どうするか。
雨は激しさを増している。
「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。