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東京ビエンナーレと優美堂

2020年8月に、Facebookで中村政人さんが「優美堂に残存する大量の額を3331に移動して大掃除せよ!」というタイトルの投稿をされていて、「優美堂再生プロジェクトに参加するプロジェクトメンバーを募集します」という呼びかけに、「面白そうだな」と思って応募してみたのが、優美堂と東京ビエンナーレに関わるようになったきっかけ。

戦前・戦後の神田の街で、なんと80年も増改築をしながらここで営業していた額縁屋さん、優美堂。富士山の形をした看板建築で、既にペンキがボロボロに剥がれていたけれど、それを描いたのは銭湯絵師の中島盛夫さん。もともと前職のオフィスが神田須田町にあったので、この神田小川町にある富士山の形をした額縁屋さんのことも知ってました。一度くらい、中に入ったことはあったのかなぁ。昼休みの散歩がてら、よくこの店の前を通ってました。

優美堂での最初のミッションは、この建物の中に保管されている大量のデッドストックの額縁たちを外に出すこと。とりあえず段ボール箱に詰め、トラックやバンを使ってひとまず3331 Arts Chiyodaのメインギャラリーへ運びます。やりはじめてわかったのですが、ものすごい量の額縁がこの建物の中に所狭しと置かれていて、出しても出しても全然終わりが見えない感じで。店舗エリアはもちろん、二階の棚や、地下の防空壕だった空間にも額縁や資材などがびっしりと置かれていて、とてもじゃないけど1日では全部持ち出すことができなかったです。

ようやく額縁を全部移動させた後は、壁や床、天井などの解体作業。とりあえず、内側をスケルトンの状態にしていきます。でっかいバールを使って、バリバリと剥がしていくのがとても爽快で、楽しかったです。週末解体作業をすると、翌日からものすごい筋肉痛。それがようやく治ったと思ったら、また週末の解体作業、と。びっくりしたのは、埃の量。あとからあとから出てくる真っ黒な埃。家に帰ってシャワーを浴びると、浴室に流れるお湯が真っ黒になります。ここで解体作業をすると、その後数日は耳や鼻、目の中からも黒いものが出てきます。

で、最初は真っ黒になりながら作業をしつつ、防水シートを貼って断熱剤のガラスウールを隙間に埋め、シナベニアで覆って石膏ボードを貼っていくと、だんだん綺麗になっていきます。真っ黒だったのが、次第に真っ白に。石膏ボードを固定するビスや、隙間をパテで埋めて、仕上げは白い塗料。この施工作業の過程で、インパクトドライバーや丸鋸、ノミ、レンチやペンチ、尺金玄翁鋸などなど、いろいろな道具に触れてその使い方を覚えていくのも面白かったです。こうして、施工ボランティア体験を経て、優美堂の「優しい施工チーム」が誕生しました。

耐震構造のための柱を組むという作業は、この施工のハイライト的な体験で、この時の全員が一丸となった一体感は忘れません。すごく良い経験でした。

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個人的に思い入れのある本、大切にしたい本、知人が書いた本や、私がちょっとだけ載ってる本などについて書いています。

「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。