バールのポテンシャル
「優美堂再生プロジェクト」で、神田小川町の古い額縁屋さんの建物をリノベーションするお手伝いをしてきたのですが。ここで様々な工作機械や道具と出会ったということを書きました。
ホゾを切る機械とか本当に感動しましたが、シンプルな道具でそのポテンシャルに驚いたのが、この「バール」です。
見た目は、ただの鉄の棒。使い勝手も、まぁ鉄の棒と大差ないのですが。これを使いこなすと壁やら床やら建物がどんどん解体されていく。これってもしかして、最強の武器になるんじゃないかとも思ったり。刀とか、斧とか、ヌンチャクとか目じゃないっすよ。使いこなせればね。
例によって、最初はバールを手にしても、どう使えばよいか分からなかったですが。エッジの部分で突き刺して、ぐいっと押し込み、てこの原理でメリメリっと剥がすのを数十回、数百回と繰り返すうちに、だんだんコツがつかめてきました。古くなった板壁を剥がすとき、まずは釘の位置などを確認し、「ここだ!」という場所にバールを突き刺します。必ず、その壁なり、床なりの、「弱点」があるのですね。そのウィークポイントにうまくバールが入り込むと、面白いようにバリバリと一気に剥がれる。あとは、手で引っ張ると壁が一気に剥ける感じ。これが、すごく気持ちよい。
逆に、なかなかその効果的なスポットを見つけられないと、バールを何度も何度もガンガン刺しても、ちょっとずつしか剥がれなかったり。めちゃめちゃ体力も消耗するし、精神的にも「このやろ、このやろ、まだか、まだか」というフラストレーションがたまります。これがたぶん、達人の域に達すると、バールひとふりですべての壁がバラバラと剥がれるんじゃないかとか。そんなことを空想しつつ。
とにかく、鉄の棒を振り回して思いっきり解体できるのは、めちゃめちゃストレス発散になります。バッティングセンターならぬ、バールセンターなんてのがあったら通いたいくらい。必要なのは体力だけかと思いきや、意外と頭を使う作業です。観察力も必要。どこを、どうやって、どの順番で壊していくか、と。考えながら作業を進めていきます。最小限の動作で、最大限の効果を。このバールを使った解体作業は、スカッとするし、奥が深いし、とても面白かったです。
優美堂再生プロジェクト、最初の頃はひたすらこの解体作業をやってました。ものすごい量のホコリが舞い散って、肌が露出している部分など、真っ黒になります。呼吸をしている鼻の中はもちろん、耳や目にも黒いホコリが入ってきて、ここで作業をした翌日や、二日後くらいまで、鼻や耳から黒いものが出てくるのでびっくりです。
これを毎日やっている人は、すごいなと思います。
「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。