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『fotolog.book』に載ったピンホール写真

Instagramが世界的に認知されて広まっていくよりも前、Fotolog.netというオンライン上の写真コミュニティがあった。世界中の写真好きが集まっていて、いろんな国のそれぞれいろんな個性を持ったプロ・アマ混交のフォトグラファーさんたちの写真が見られるのが楽しかった。2002年にサービスインして以来、すごい勢いでユーザー数が伸びていった。僕が使い始めた2003年頃には、日本でもかなり話題になっていたと思う。無料会員だと、1日に1枚しか投稿ができない。なのでみんな、渾身の1枚をアップする。携帯電話のカメラ機能も含めて、高性能なデジタルカメラというのはまだまだそんなに普及してはおらず、みんなフィルムカメラで撮影した写真をスキャンしてアップしていた人も多かったように思う。僕ももっぱら、ロシア製のトイカメラ「LOMO LC-A」で撮影した写真や、Lomography社がつくった連写ができるトイカメラのCyberSamplerやSuperSamplerなどでせっせと写真を撮っては、その銀塩写真をデジタルスキャンしたものをFotologにアップしていたのを覚えている。

その中のひとつが、ピンホール写真。

学生の頃、写真のクラスを取って以来、写真にはまった。自宅のバスルームを暗室にして、そこに現像機を持ち込んで深夜過ぎまでフイルムを現像したり、写真を印画紙に焼いてプリントしたりなどということをしていた。骨董市で手に入れた古いカメラを使って写真を撮るのも好きだったが、次第にブリキ缶などを使って手づくりのピンホールカメラなどをつくって写真を撮るようにもなった。

レンズの替わりに、針で開けた穴を使うカメラ。光が小さな針穴を通ると、それが上下逆さになって箱の中に投影される。それを写真用の印画紙に記録させるのだ。仕組みは、すごく簡単。そして、つくるのもそんなに難しくはない。ブリキ缶に穴を開けて、そこに薄いアルミ箔を貼り、さらに小さな穴を開ける。光が入り込まないように、黒テープで穴をふさげばピンホールカメラの完成。撮影する時は、ブリキ缶の中に印画紙を入れる。真っ暗な部屋で、赤いライトをともしながら、印画紙が感光しないように最新の注意を払って印画紙をセットする。ひとつのカメラに一枚の印画紙しかセットできないので、基本的にこのカメラは1枚撮りである。

明るいところにカメラを持っていき、針穴を隠している黒いテープをはがすと、撮影が始まる。カメラを動かさないように固定しながら、数十秒間ずっと露光し続けると、印画紙に上下反転した像が記録される。それを自宅に持ち帰り、真っ暗にしたバスルームで赤い光の下、現像するのだ。現像液と、定着液、そして洗浄するための水。真っ白な印画紙に、黒い像が浮かび上がる。

この時点では、印画紙の写真は白黒が反転している。これをもう一度印画紙に重ねて光を当てることで、白黒が逆転した正しい写真となる。あるいは、ネガをスキャンして、Photoshopでポジにすることもある。

そんな感じで、ピンホールカメラで撮影して、その後デジタル化した写真もFotologへいくつもアップしていった。大きめのブリキ缶で撮った写真もあるし、小さなピルケースに穴を開けてつくったカメラも。中でも、一番チープでつくりも簡単なのが、35mmのフィルムケースを利用してつくったピンホールカメラ。これはもう、単純にとがった針でケースに穴を開けただけ。ゴミとして捨てるはずのフィルムケースを、カメラとして再生させたもの。これをいくつかつくって、鞄の中に入れ、当時住んでいたロサンゼルスの街並みを撮影した。そんな写真もFotologにアップしていたところ、ある日ニューヨークの出版社からメールが届いた。

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個人的に思い入れのある本、大切にしたい本、知人が書いた本や、私がちょっとだけ載ってる本などについて書いています。

「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。