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ユウビスト

優美堂で作業をする人たちのことを「ユウビスト」って最初に名付けたのは、中村政人さんだったのだろうか。とにかく、今はこの呼称が定着している。

不思議な魅力のある場所なのですよ。この優美堂って。そして、ここにはいろんな年代の、いろんな人たちが集まっていて、みんながそれぞれの個性やスキルを活かしつつ、優美堂を再生するというプロジェクトに貢献している。

僕も、そんなユウビストのひとり。

ここに、みんなが集まる理由について考えてみる。なぜ僕は、ここに通っているのだろう?

■そこにいて良い場所

「居場所」、っていう表現がしっくりくるかもしれない。「所属」とはちょっと違う。単なる「場所」ではもちろんなくて。そこに、いても良い場所って感じがする。

最初は、なんとなく「お邪魔します」みたいな感じで「優美堂再生プロジェクト」に参加していたけど、だんだんそこに集まってくる人たちと顔見知りになって、一緒に作業をして、お互いのことを知るようになると、そこが「居場所」になってくる。家庭ではない、職場でもない、そこにいくといつも存在する場所。「サードプレイス」っていうのにも似ているけど、もうちょっとそこにいる人たち同士のつながりは濃厚だと思う。自然発生的に集まって、そこで活動をしている。

基本的にボランティアなので、その活動自体が金銭的な報酬になることはなく。むしろ、そこに行くたびに「あ、腰袋を買おう」「マイ手袋は必須だよね」「尺金も」「ノコギリも」「石膏ボードの角をカットするこのカンナ、買っておこう」などなど、いろいろと「マイ道具」を購入する出費が増えていくけど、それは自分が好きにやってるので全く問題ない。ランチをおごってもらったり、仕事終わりの懇親会など、そんなメリットがあったりもするけど、もちろん手弁当でも参加するし、むしろ参加費を払っても良いとさえ思う。それくらい、価値のある体験がそこでできているから。

■知識や経験の広がり

あと、単純に面白いのは、そこで学べるスキル。すでにいくつか書いたけど、施工に関する作業の流れや、道具の使い方や、なにをどのようにしてやったらよいかがハンズオンで具体的に学べる点。それこそ、無料の学校みたいな感じですよ。

最初はみんな素人なので、そこで試行錯誤したり、質問したり、たまには失敗もしながらみんなで学んでいく雰囲気がとても素晴らしい。それはたぶん、そこにいる「経験者」の人たちがみんな優しいから。すごく能力のある人たちが、きちんと周りのことを見ながら、的確な指示を与えつつ、必要に応じてきちんと教育してくれる。この雰囲気がとても心地よかった。だから、どんどん新しい知識を学びたいと思うし、家に帰ってからもYouTubeで大工さんの動画を観たりしてた。

■優しさ

「優美堂再生プロジェクト」の中心にあるのが、この「優しさ」だと思う。誰も強制されてないのに、週末になるとここに集まって、汗だくのホコリまみれの木くずまみれのペンキだらけになりながら、率先して施工作業に取り組む。施工だけじゃなく、デザインチームや、企画運営チーム、それぞれが自分のできることをやる。それが、自然発生的につながっている感じ。

もちろん、そういったオーガニックなまとまりは、たまにほころんだりほつれたりもするので、完ぺきではないけれど。振り子のように動きながらバランスをとっている感じ。ゆりかごのように、ゆれながら。

■みんながいれば実現できる

優美堂の施工作業は、建物内のいろんな箇所で同時進行で行われていたのですが、一度だけみんなの力が終結した瞬間があった。建物を補強するために、新しく巨大な柱を立てる時。

モルタルを流し、鉄骨を設置した後、一階から二階まで床を解体してぶちぬきにして、そこに大きな柱をたてて横木を組んでいく作業。みんなで協力して持ち上げ、ホゾを組んでボルトで締める。安全に、的確に、そして素早く。全員がひとつのゴールに向かって、それぞれの役割で動いてた。

優美堂再生プロジェクトの、とても象徴的な一日でした。

7月10日東京ビエンナーレが開幕して、優美堂も一般公開をスタートしました。2階、3階ではまだ施工作業が続く中、下水のトラブルに見舞われたりもしつつ、なんとかここまでたどり着いた。僕が貢献したことは、全体からみたらほんのささいなちっぽけなことだけど、このプロジェクトに参加できて良かったなとしみじみ思っています。


「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。