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花まるカレッジのお勧めはおおたとしまさ氏の講演

おおたとしまさ氏「これからの時代を生きるために必要な力と、それを育むための親の見通し」花まるカレッジ(有料)

花まる学習会のスタッフによる講演には疑問点が多く、前回までの記事で触れてきましたが、このおおたとしまさ氏の講演はとても良かったです。違和感が一か所もありませんでした。おおたとしまさ氏は私も尊敬し信頼する教育ジャーナリストの方です。最近では私立中学の紹介本を多数書いていますので、中学受験業界の太鼓持ちなのかと思いきやそうではありません。非常に俯瞰的な視野で物事を見る人です。批評家であり、教育哲学者といってもいいのではないかと思います。物事の本質を外さない、強くて深い思考が感じられます。だから信頼が置けるのです。

花まるカレッジでも多数登壇しているようです。初月500円で動画コンテンツを見放題ですが、おそらく一ヶ月あれば主要なコンテンツは見尽くせますので、当月中に解約してしまって構わないでしょう。私のおすすめはおおたさんの講演動画です。そのためなら500円の価値があると思います。

おおたさんと高濱先生の教育観の共通点は、「親は余計なことをするな」ということだと思います。そこは意気投合していると思います。しかし、それ以外の価値観はかなり異なるところがあります。高濱先生ら花まる学習会の人たちには特定の理念があり、「こうだ!」と言い切るところがありますが、おおたさんは具体的な教育手法のすべてを相対化しており、正解はないと言っています。印象的な台詞がありました。

おおた「皆さん、お子さんには自由に生きてほしいとおっしゃいますね。そして、自由に生きるためにはどうすればいいですか?と聞いてくる(笑)。正解はないんですって。自由に生きるためには、自由に耐えなければなりません。簡単に答えに飛びつかないことです。世の中にある価値尺度を疑ってかかる必要があります。そんなに偏差値が大事なの?東大行ったらそんなに偉いの?世間に流布している価値観に無批判に乗っかっているだけでは自由とは言えません。自分の価値観の軸を持つこと。正解のない自由な社会では、私たちは常に問われています。『お前にとって大事なことは何なんだ?』という問いを突き付けられているのです。」

これは非常に腑に落ちる話でした。そして、こういう話は花まるの先生方からは聞きません。考え方が違うのでしょう。

おおた氏は言います。子どもには自己教育力があると。モンテッソーリ教育創始者の言葉だそうです。子どもは自分の成長のために必要な遊びをするものだと。子ども自身に任せればちゃんと育つというのです。(これも高濱先生は言いそうにない台詞ですね。)

おおた氏の話を整理しますと、これからの時代を生きるために必要なのは(というか昔から変わっていないのだけれど)、多少の知性と体力と、GRID(やり抜く力)の3つだと言います。GRIDは習い事や部活で身につける子が多いですが、中学受験でもいい。中学受験をすれば、もちろん弊害はあるけれども、少なくとも知性と体力とGRIDを身につけることができる。それだけでも大人になってから十分やっていけるだろうと言います。

3つの資質を養ったら、次に反抗期が必要です。中学受験をすればその後6年間かけてゆっくり豊かな反抗期を送ることができます。中だるみしていいんですとおおた氏は言います。自分の軸を確立するために反抗期は絶対に欠かせないと強調されています。中学受験をしたあとに反抗期が来れば、子育てはめでたく8~9割終了といってもいいそうです。

ただし、それに加えて、まともな大人になるためには、恋愛経験が必要だということです。高校生でも大学生でもいいけれど、本気で人を愛する経験をすべきだといいます。というのも、昨今では一流企業のエリートサラリーマンが就活生に性的加害をする事件が相次いでいます。きっと彼らに足りないのは人を愛した経験だとおおた氏は考えているのです。

おおた氏のような正統派の教育論を聞くとほっとします。小手先の成功メソッドを語りたがる業界人が多いだけに、しっかりとした思想を持っている人は貴重です。おおた氏はしばしばメディアでもインタビュー記事が出たりしますので、フォローしておくといいと思います。



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