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丁寧に作られた世界観とストーリーが素晴らしい、万人向けの3DダンジョンRPG『両手いっぱいに芋の花を』

ウィザードリィライクなゲームと聞いて一瞬で理解できる方も、なんだそのゲーマー用語はと思う方にも大変おすすめな素晴らしき3DダンジョンRPG、それが『両手いっぱいに芋の花を』です。とにもかくにもまずタイトルがいい。タイトルが。

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プレイ時間目安:15〜30時間
ゲーム難易度:簡単〜普通
総合評価:8.5点(10点満点中)
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 〜こんな人におすすめ〜
・土日プレイくらいでクリアできる、良質のRPGを探している人。
・やたら簡単すぎるのは嫌だけど、異常に難しかったり理不尽だったりするのも……というくらいの難易度のゲームがやりたい人。

 〜こんな人にはいまいちかも〜
・ダンジョン内での帰還の難しさ、デスペナ、初見殺しなど、思わずコントローラーを投げたくなるような、理不尽な3DダンジョンRPGをお求めの玄人ゲーマー。
・3DダンジョンRPG共有の悲しき事実ですが、やばいくらい方向音痴な人。

戦闘画面。シンプルですっきり見やすい。

ゲームジャンルとしては、よくある3DダンジョンRPGです。
主観視点で、前に進むか方向転換をするかをひたすら繰り返してダンジョンを進んでは、敵と戦ったり死んだりするやつです。

正直、この3DダンジョンRPGというジャンルはすでに完成されすぎていて、目新しさを出すのがかなり難しいジャンルだと思います。実際、この『両手いっぱいに芋の花を』もゲームとして際立って目新しい部分があったかと言われたら難しいところ。

とはいえ、そうしてゲームジャンルが既に確立されているからこそ、この『両手いっぱいに芋の花を』は、探索、戦闘、スキルツリー、ストーリー、世界観など、どれを取ってもインディーゲームとは思えないほど丁寧に作られているそれはもう大変な良作です。

特に良かったのがストーリー、それに世界観! 本当に素晴らしかった!

これは私の偏見なんですが、3DダンジョンRPGというジャンルは、ストーリーを考えることを放棄しているものがわりとあります。具体的なタイトルは出しませんが、地中深くに眠る宝を探すとか、塔の頂上の姫を助けるだとか、そんな適当な動機付けで死地に等しいダンジョンにプレイヤーを飛び込まそうとするの、個人的にわりと許しがたい。

でも、この『両手いっぱいに芋の花を』はそのタイトルにもある通り、プレイヤー達がダンジョンに潜る理由がものすごく明確に示されているんです。

プレイヤー達が生きている世界は土壌汚染が深刻なまでに進んでしまい、世界的な飢餓が進行しているとのこと。だから先人が研究しまた秘匿したとされる土壌汚染にも負けない芋の種を求めて、プレイヤー達は一生懸命ダンジョンに挑むのです。

しかもその土壌汚染の内容や、食物を巡った利権問題なんかも、ゲームの進行とともに小難しくならない範囲で結構きっちり語られていて、めちゃくちゃ好印象です。ダンジョンに挑む動機なんてなんだっていいじゃーん!と言われたらそれまでかもしれませんが、私はこういう動機づけってむしろものすごく大事だと思う、極めて面倒なゲーマーです。

ちなみに、プレイアブルキャラクターに関してはパーティ全員自分でキャラメイクをするのですが、彼らないし彼女らは基本的に一言も喋りません。

容姿だけではなく、ジョブも自由に選択できる

プレイヤーはその自分で作ったキャラ達でパーティを組んで、名前もわからない組織のリーダーっぽい女の子のナビと共に、ダンジョンを攻略していくことになります。

雇い主である女の子。名前はわからない(はず)

この女の子も、私なんかは基本人間不信なので「この子、最後の最後で盛大に裏切ったりするんじゃあ……?」とか思っていたのですが、蓋を開けてみればまあ実にいい子だこと!

自分は戦えないから、戦闘は傭兵のみんなに頑張ってもらうしかないけれど、代わりに古文書の解読や戦闘のサポートは一生懸命やっているのがヒシヒシ伝わる。若くして世界の食糧問題解決のために懸命に頑張っている理由も、物語の中でちゃんと語られます。

ダンジョン攻略中も、ダンジョンの入口付近でプレイヤーたちの支援をしてくれるのですが、不意に目が合うと手を振ってくれたりします。これがまたすっごい癒やし。

ダンジョン入り口で目が合うと必ず手を振ってくれる、かわいい

この女の子の存在感もあって、ゲーム中も「なんかよくわからんけどダンジョン潜らされている」感は全然ないです。ちゃんとこの子の目的を叶えるために、自分の意思で傭兵やっている気が不思議としてくる。

このゲーム、本当に開発者が世界観をきっちりと持ったうえで作られたんだなあってのがプレイ中の様々な場面で感じられます。

たとえばゲーム中にメニュー画面を開くと、パーティメンバーが実際にダンジョンを攻略しているワンシーンが出るんですよね。ゲームの進行とは関係ないちょっとしたことではあるのですが、メニューを開くたびにちょっと嬉しくなります。

メニューを開いたときのマップに合った動きをしている、実に芸が細かい

他にも、たとえば自分が作ったキャラを作り直すためにデリートしたくなったときとか、

プロの一文

という粋な一文が出るんですよね。

ついつい「削除したキャラデータは保存されません」とか、そんな事務的な一文で済ませてしまいそうところをそうはせず、その説明すらもゲームの世界観を理解する一助にしてしまう。紛れもなくプロの技です。

ストーリー・世界観以外のその他のゲーム内容については、多く語るとそれこそ文章量がとんでもないことになるのでざっくりにしますが、難易度としては易しめです。かなりカジュアル寄りなシステムになっています。

たとえば戦闘が終われば味方のHPは自動で全回復するので、たとえ三人パーティのうち二人瀕死の状態で戦闘を終えても、次の戦闘では蘇ってピンピンしています。

それに拠点に戻りたくなったらどこにいても一瞬で戻れます。帰還用のアイテムもスキルもいりません。このあたりのゲームデザインは好みによると思いますが、このゲームはそういうサクサクダンジョンを進んで行くタイプのゲームだと思えば、全然気にならない。

とはいえ、各ダンジョンのボスなんかは、何も考えずに戦って勝てるレベルではないです。

バフデバフや弱点をしっかり利用し、盾役・DPS役・回復役がそれぞれきっちり仕事をしないと倒せません。ある意味、自由度があまりないとも言えますが、かといって盾・盾・盾とかで倒せる難易度でも困りますしね。

最後に惜しかった点としては、細かな部分ではありますがキャラメイクの自由度があんまりない!というところがありました。どんなに頑張ってもモブ顔になってしまうのはちょっと残念でしたね。

折角、世界観も素晴らしく、ゲームデザインも非常に良い感じにカジュアルなのだから、このあたりはプレイヤーが満足できる造りにしてほしかったですね。

とはいえ、今しがた調べたらこのゲームPon Pon Gamesさんという方がたった一人で製作されたようで……きっとキャラメイクって豊富にするとそれだけ膨大なデバックが必要になったりするのでしょうし、このあたりが限界だったのかもしれませんね。

何にせよ、2000円以下の値段でこんな素晴らしいゲームを遊べるなんて本当に良い時代になったものです。Pon Pon Gamesさんの次回作、今から楽しみにしております!



 〜私には1円も入らない素晴らしいリンク〜
Steam版

Nintendo Switch版
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000049983.html

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