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【スルファモノメトキシン】牛乳への混入について考える

色々なテーマで思いつくままに書いていますが、このブログでいつもよくアクセスいただいている記事に常温保存牛乳についてのものがあります。

大手乳業メーカーで”スルファモノメトキシン”が製品に混入する事故が起きました。 乳業マンとしてコメントしようと思います。

スルファモノメトキシンってなに?

動物用医薬品として認められている抗菌薬で、ウシやブタの感染症予防や治療に使われています。 動物用医薬品には多種多様なものがあり、それぞれの目的で日常的に使われています。ウシの乳である「牛乳」は、ざっくりいうと母牛の血液を濾して作られているので、医薬品の成分が移行しやすいです。  

人体に悪い影響はあるの?

健康な人にとって、良い影響はない、と言えます。 健康な状態でわざわざ抗生物質を飲まないですよね?基本的にお医者さんに処方してもらった場合しか飲まないはずです。 よく言われる悪い影響は「腸にいる善玉菌を殺してしまって、腸内環境が悪化する可能性がある」というものです。ですので食品衛生法では「動物用医薬品は食品に混入してはならない」と決められています。またそれを防ぐために「動物用医薬品を投与後72時間以内の牛から搾乳した乳を使用してはならない」とも定められています。  

今回の混入事故はなぜ発生したのか?

「牧場における個体管理ミス」の可能性が高いと思います。 乳業工場では動物用医薬品を置いていませんし、保健所の検査は工場から直接商品を持っていって行うものですので、混入の機会がないからです。 酪農家の方は複数の牛を飼育しています。それぞれの個体の状況に合わせて動物用医薬品を与えるので、その管理が重要になります。 「この個体は薬をあげたのが○日なので、△日以降に使えるな」という管理です。逆にこの管理を誤ってしまうと、動物用医薬品が混入した生乳を工場に出荷してしまう恐れがあります。  

検査で発見できなかったのか?

まず牧場のサイズや出荷ルートにもよりますが、出荷側(牧場)では検査しているところと、していないところがあります。 一方で受け取る側、こちらは乳業工場になりますが、迅速検査と細菌を用いた本検査を行うのが一般的です。  

動物用医薬品の迅速検査

スナップ法やチャーム法という迅速検査キットがあります。 15分ほどで検査結果がでるので、非常に便利である反面、ペニシリン系・テトラサイクリン系の抗菌薬しか検出できません。 今回のスルファモノメトキシンは検出できないようです。  

動物用医薬品の本検査

こちらは法律で定められた検査です。生きている細菌を用いた検査なので、12時間程度かかってしまう、というデメリットはありますが、迅速検査より多くの動物用医薬品を検出できます。 一般的には”C-953”という細菌が用いられますが、C-953はスルファモノメトキシンに対して感受性が高くないようです(論文を読みました)。そうなると、工場の検査で発見することは難しかったのではないかな、と感じます。  

まとめ

ざっくりまとめると・・・

  • 牧場での管理ミスが原因の可能性が高い

  • 乳業メーカー側にも牧場を管理する責任が一部ある

  • 商品を飲んで、即体調を壊すような不良品ではないので、メーカーの発表に従って冷静に対応するべき

こんなところでしょうか。 またスルファモノメトキシンについては、昔はヒトにも用いられていたようです。そう考えると、まぁ大丈夫なんでしょうね。   (2023年11月13日追記) どうも自主回収する商品も増えているようです。新聞に出す社告も2発やっているので、損害は億越えだと思います(メーカー目線)。 ミスをした酪農家と、どう折り合いをつけるのでしょうか。。。保険とかで対応するのかもしれません。ちょっと知り合いに聞いてみます。

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