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【TOLOPANの真髄に迫る vol.9】ワンアクションで旨いおにぎり的なバーガー。

グランドメニューのこだわりをお伝えする
連載企画の第 9 弾。


今回は、スーパーバンズ。


「ワンアクションで旨いとなる、おにぎり的な美味しさ」


これが、TOLOPANが目指すスーパーバンズ。


そんな目指すべき姿を与えてくれたのは、
デュヌラルテ時代のプロデューサーの淺野正巳シェフ。
そして、憧れのダンディゾンの木村シェフだった。



それまでの自分は、ハンバーガーはB級グルメだなと思い
正直あまり興味を持てていなかった。

というのも、僕たちはフランス料理にそえるパン作りをしていた時代。
パンとは、料理の邪魔をしない脇役という考え方だった。


しかし、とあるハンバーガーの雑誌の特集で概念が変わった。
一目見ただけで釘付けになってしまうほど美味しそうなバーガー。
そして、そのバーガーにかけるシェフの熱い想い。

そこにいたのが、淺野シェフ、木村シェフだった。

「パンは脇役ではない、一体感がなければならない」
という淺野シェフの考え方に、いい意味で僕のこれまでを覆された。

そして、学んだ。
「根本的な」を徹底的に考えぬくことを。




何をどのように食べるものなのか。
ビジョンとシーンのイメージ。

そうした、根本の根本を調べる事で、ようやくスタートラインがみつかる。
まずは、がむしゃらに「理解する」ことから始め、
そのあと「行動する」に移行することが大切なのだと学んだ。



それを踏まえた上で、スーパーバンズの製作の話をしよう。



当初、具材にチーズをいれたいという気持ちが先行していた。
しかし試作した結果、「パン自体が美味しすぎる」という感想に。

ハンバーガーにおいては一体感が重要なのに、
このままではパティとの調和が損なわれてしまう。

しかし、やめたくなかった。

だって、「パン自体が美味しすぎる」から。

こんなに美味しいパンを殺してしまいたくはない。
どうにかして、このパンを生かしたい。
そう考えて思いついたのは、

「パティをパンに合わせる」こと。

はじめに使用していたチーズは、グラナパダーノ。
カフェのスタッフを試行錯誤を重ね、「ワンアクションで旨い」を追い求めて研究した。
すると、しっかり焼くと香りがでてバンズとの相性が抜群になった。
しかし、これをカフェスタッフがギリギリの状態で管理していく事は難しいので、別の案にすることに。

次は、もっと香りがでるゴルゴンゾーラをたくさん忍ばせてみる。
すると、熟成肉ほどの旨味や香りにはならなかったが、パンとの「ワンアクション」は整いだした。


次の関門は、パンの切断をどの場所で行うか、ということ。

通常の脇役バンズであれば、真ん中、もしくは中心より少し下。
一発目の強烈な印象は、チーズの焼かれた底の味と香り。しかし、パン自体に厚みがあると肉にたどり着いたときに、ただ肉の食感を感じるだけで、香りはパンになってしまう。
では下すぎるのが良いのかをやってみると、上の部分が後抜けの香りになり、余韻が長すぎて、結果は余計にパンで終わる。

試作を重ねて出した答えは、中心より少し下の少し下。

これは、数値化できない、感覚の部分。
それこそが美味しいを追求した時にどうしても表現できない部分なのだろう。


さらなるステップは、マスタード、マヨネーズを塗ること。
たったこれだけの事でも作業として捉える必要がある。

テイクアウトのあれば油分で塗り固め、パンが食材からの水分で泣かないようにして。
その場で食べさせるカフェスタイルであれば、それだけの量は必要ない。周りを強めに中心に少し塗ることで一体感が生まれるようになる。


最後に意識したのは、「ぬり卵」の部分。
当初は艶出しの目的でぬり卵の要望があったのだが、これをやめた。

というのも僕はこの艶出しを真っ向から否定したい。
皮の1枚の厚みがでること、硫黄臭が立っていること。
粉のように繊細な味や香りを微妙に配合したものを全て消してしまうから。

「ぬり卵」は見た目の華やかさを引き立てるもの。
僕は「ぬり卵」は高度経済成長の象徴だと考える。
しかしそれは本質的な美味しさを実現できるものではない。
それでは本当の豊かは手に入らない。

素朴でもいい。

本質の美味しさを追求することが真の豊かさではないか。
そんな自分らしいパン作りを追求して生まれた、


「ワンアクションで旨い」バーガー。
そのバンズが「スーパーバンズ」。


どうして「スーパーバンズ」なのか。
これは、僕が良い商品だと思っていたので、冗談で販売スタッフに「スーパーなバンズ、スーパーバンズだ」と調子にのって言っていたのを、それを本当の名前だと思って販売をしてしまったのを思い出した。当初はダサい名前だったが、スーパーに見合う努力はしてきたかなと、
悪くないなと今では思っているのだ。

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