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文学フリマ、よっこいしょ

先日、あるイベントに参加をしてきました。ちょうど1週間前の今日、5/16開催の【第三十二回文学フリマ東京】です。簡単に説明をすると文学を取り扱った即売会というようなもの。

その日私は出店者側として会場に足を運びました。霧雨が降っていて、湿度も高く普段だったら外に出るのが億劫になりそうなグレイッシュな空がカーテンの向こうで待ち受けていました。けれどこの日は、そんなことも気にせず軽快に身支度を済ませ、電車の時間に合わせて私は家を出たのです。何たって初の販売側のイベントでしたから。

今回の参加に関しては、友人のブースに共同で制作した本を置いてもらう形で、完全に個人で出すというものではありませんでしたが、それまでやるやる詐欺を繰り返していた私としてはなかなかの進歩だな、と駅で落ち合ったその友人が、キャリーを重そうに運ぶ姿をみてぼんやり考えていました。

この友人、行動力が物凄いところがありまして、彼女が活動を始めてどれくらいたったでしょう。このイベントに参加するのも3度目で、知らぬ間にどんどん作品をつくり、得意の文章力で人々を惹きつけるエッセイを書き続けています。当日は本当に頼りになりました。

彼女が創作活動を始めてから、私も何か作りたいなー、と軽い気持ちで何回この口からこぼしたでしょう。何かしたい、作りたいと言う気持ちは常にあったものの、何かと理由をつけては腰が重すぎて中々実行はしていませんでした。

何か作りたい、でも何を、、、。
そんな自問自答を彼女の創作の進捗を伺う度に繰り返し、液晶やスケッチブックの上で完成させられるイラストレーションを描いてSNSにアップしては満足する日々。自分の中で何かはやった、と言えるラインにとどまっていました。それもこれも趣味ですし、それが悪い訳でもないのですがもう少し、もう少し、と思う自分も確かにいたのです。

そしてこの度満を持して、望んでいた“何か”を友人と作り上げることができました。

【めくる少女世界】
これが制作した冊子のタイトルです。我ながら中身にぴったりなネーミングだと思っています。
イラストレーションでパターンを作り、それを本にしました。〇〇な少女というテーマで14のパターンを作るために、それぞれ3つのアイコンとショートストーリーを決め、分担して編集し、一冊にまとめました。

一緒に制作を進めることになり、初めはお互いの得意分野をあげていく所からでした。同じ大学、学科の出身という事もあり、相手の作業環境や制作物の雰囲気は分かってはいても、それらを合わせて整えるとなるとそう簡単な話ではありません。イラストレーションひとつとっても、作風が全然違いました。

ファッションや趣味が似通っていている私たちですが、思い描く好みの世界観はやはり大きく変わってきます。それらの共有を図るためにも、私は一旦彼女に提示するためのイラストとテキストを制作して送りました。誰かに直接作ったものを見せるというのは学生の頃以来。久々の感覚にひんやりとした汗が額に浮かんだ気がしました。そうして話し合いを重ねる中、お互いのイラストレーションを比較していた時彼女はとてもユニークな例えをしてくれ、それがとても感覚的かつ強く共感できるものでした。

私のは竹久夢二で貴方のはウィリアム・モリスっぽい!
私は言われてすぐさま検索エンジンにかけ、あぁ〜これだ!大きく頷きました。彼女の言いたい事は一瞬で理解できました。さてその2人をどう仲良くさせるか、私たちはあれやこれやと実験を繰り返し落とし所を見つけ、そのあとはプラス要素(ストーリー)などを加えながら完成へとつなげて行きました。


当日はその本を手に取って、ぱらりとめくる人を申し訳なくも気になってチラチラとみる時間が本当にどきどきでした。買ってくださる方が、本を閉じてこちらに視線を向け『これください』と声をかけてくださる。その瞬間の嬉しさは時間差にやってきて、その方が見えなくなる頃やってきました。きっと私はマスクの下でにっこにこになっていたでしょう。

休憩の時間は他の方のブースを回って、気になった本をいくつか購入しました。ディスプレイの仕方なども注意して見ていると、本当に趣向を凝らした見せ方がたくさんでとても勉強になりました。今日この日まで、たくさんの人が自分の作品と向き合い、時間とお金と命を削っているだ、と改めて感じては胸が熱くなりました。購入させていただいた御本はどれも小説本で、売ってくださった方の顔を思い浮かべながら日々読み進めています。またその方々に巡り会えたら、必ず感想が言いたいです。


あんなにも制作を渋っていた私が友人の手を借りて今こんなにも素敵な経験ができている、そう思うと頑張ることができてよかった、と本当にそう思います。

日々生きるモチベーションがある事は何より人にとって必要なんだと、最近人に教えられそしてこの日実感をしました。大変だけれど頑張ったその先には何かしらのキラキラしたものを得られる。少しずつまた生きることを頑張れる。何かを作ることの喜びを、また改めて知ることが出来て嬉しく思います。

大学時代、毎日毎日創り続けていたちょっぴり苦しかったあの時間は、本当に貴重で凄いことだったなと自分を褒めたくなる、そんな経験にもなりました。

次の目標ですが、私という作り手がいることを少しでも誰かに伝えたい、そんな所です。今回の出店を通して、知ってもらえることが何より自分が作ったものを1人でも多くの人に見てもらえるきっかけになるのだと気付きました

このような時期でありますので、開催を決行してくださった運営の方、足を運んでくださった方、友人含め感謝でしかありません。おかげさまでまた明日から頑張る燃料ができました。

またこのような機会を作れるように頑張りたいと思います。ありがとうございました。

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