Zebras in the Wild:Zebras Uniteのリードストーリーテラー、Anika Horn(Social Venturers代表)
今回のNoteでは、これまでヨルダンからオーストリアまで、25以上のチャプターリードや組合メンバーなど、様々な人と対話をしてきたAnika Hornさんについて紹介していきます。気候変動や、新型コロナウイルス、政治情勢、経済など、私たちが住む社会は多くの不確かな要素の中で生活しています。そんな中、彼女は「豊かさ」や「共感」「信頼」を基盤とする次世代の経済や社会について提案しています。彼女が思い描く未来の世界にせまります。
(この記事は2022年2月8日にZebras UniteのMediumで公開された英語記事を翻訳しています。原文はこちら)
無限のゲーム
私たちがコミュニティを変革しようとする努力を「無限のゲーム」と考えています。私たちは資源とモチベーションが続く限り、社会変革のゲームに参加し、貢献し続けます。貢献する方法には特に決まったルールがなく、他のプレイヤーはいつでも参加したり退出したりできます。
つまり、我々は他人の行動や態度に対してはコントロールができません。ルール(もしあるとしたら)は常に変わり続けます。「無限のゲーム」のマインドセットを持って目を開けると、私たちは多様な考え方や人々に囲まれていることに気付き、その多様性とそれがもたらす複雑さを受け入れる方を学ぶことで、無限の豊かな人生経験を手に入れることが出来るのです。
しかし現状では、多くの人々が一本調子で直線的で視野の狭い、単純な考え方を好む傾向があります。これは、私たちが制御できない多くの要素(気候危機、汚染、生物多様性の喪失、COVID-19、政治的不安、社会的不平等など)があるため、支配感を作り出すことで安全を感じるからです。この行動は進化的であり、驚くべきことではありません。しかし、コミュニティから離れて個人主義に向かうことで、周囲の大きなコミュニティの福祉を考慮する前に、自分中心になります。そして、もし誰もが自分自身を考えるようになると、必然的に「私たち対彼ら」の思考になり、お互いを最も必要とするときにコミュニティを放棄し、そのかわり、貪欲、競争、不平等を促進させます。結果的に私たちは相手を思いやる能力を失い、考え方や経験の多様性を理解したり信頼したり、受け入れることができません。パイを分割し、自分たちのために十分な大きさのパイを確保しようとするのは、他の誰かにパイを奪われて手ぶらになることを恐れているからなのです。
Zebras Uniteは、このような個人主義に対抗する動きを体現していると思います。
私が思い描く未来像
理想的な未来では、私たちは現実と向き合い、世の中が良い状況になれば個人でも組織でも皆恩恵を受けることができるのです。そして自然、地球、組織、市場、文化、他者を制御できないことを再認識するのです。その知識を持って、私たちはコミュニティや自分自身、周りの人々にとって本当に望むものを解き明かし始めます。
理想的な未来では、自分達がどのようになっていきたいのかをコミュニティで話し合います。具体的には、障害や欠点がとっ散らかったコミュニティとしたいのか、それとも、無限の可能性、資産、ユニークな資源など、より多くの善のために使われることを望んでいるものたちが眠っている場所としたいのかです。
これらの対話を行動に移すためには、1人1人が持っているものを提供・協力し合い、信頼を築くことが必要です。協力と信頼を築くことで、私たちは将来に主体性を持ち、生活、仕事、遊びの全てを楽しめる形態を作れるでしょう。これは、私の友人Debbie Irwinが起業家エコシステムビルダーとしての彼女の仕事を説明する際に使う概念です。
この再構想された未来では、すべての人が最大限の潜在能力を発揮し、その努力がサポートされます。アーティスト、起業家、親、コミュニティビルダー、シェフ、メカニック、ガーデナー、教師など、どのようなアイデンティティが交差しても構いません。サポートを提供するために、私たちは全てのチェンジメーカーが経済とコミュニティを、才能・資源・情報を必要なときに公平にアクセスができる1つのエコシステムとして捉えています。
「未来のコミュニティは、私が育ったコミュニティのようになるでしょう」
東ドイツで育った私の村では、食べきれないほどのリンゴをバッグに入れてもってくることは珍しいことではありませんでした。今でも、私の両親は友人の家を訪れたとき、生き生きとした花束や卵、採れたての農産物を持って帰ってきます。同様に、両親は友人に会う前に、パントリーに立ち寄って、何の在庫があるか確認し、手作りのピクルスや燻製肉、自家製のジャムなどがあれば、それらを持参します。政治・経済面の社会主義制度を恋しいとは思いませんが、村全体がお互いに支え合う姿勢はとても好きでした。全員が友達というわけではありませんが、契約やサービス料金、恩恵の追跡は一切なくとも、ほとんどの人が大義の利益のために自分の利益を捨てて行動できる人が多かったということでしょう。
私たちの理想の未来では、再び村を見つけることができると信じています。世界が私たちや個人のニーズを中心に回っているわけではないことを受け入れ、組織やコミュニティ、そして私たちの周りの人々を支配しようとするのではなく、不確実性、多様性、そして絶え間ない変化を受け入れ、それらの中で繁栄する方法を学びます。
Sharon Changとの会話で彼女は次のように説明しました。
「文明と呼ばれるものに触れられていない最も濃く豊かな熱帯雨林に入ることを想像してください。あなたが見つけるのは、現地の条件に固有のユニークな、最も壮大で複雑な亜生態系であり、そこには固有の強靭性を支える美しさと価値があります。[...] 自然の法則に従ってコミュニティやエコシステムを設計することで、革新と強靭性の条件を提供し、小さな熱帯雨林が根を張り、花開き、繁栄するための土壌を準備します。そして、それは自然と同じように時間がかかります。
植物が根を成長させ、地下の異なる機構をつなぎ合わせるなど、基盤となる変化の多くは、地上では何も起こっていないように見える時期があります。熱帯雨林の例えを使い続けると、私たちは予め決められた結果を生み出せるという考えを手放さなければなりません。実際に私たちができること最善なことは、この自然なプロセスが起こるために適切な条件を提供することだけです。」
「豊かさ、相互扶助、共感、信頼、協業を基盤とする文化」
次世代の経済文化は、お互いを大切にする人々の間の構造です(この例えを提供してくれた Talie Smith に感謝します)。豊かさ、相互扶助、共感、信頼、協業などの価値観が次世代の経済文化の基盤となりうるのです。
豊かさ:私たちはみんなが十分な資源を持っていると仮定し、自分たちが果たす役割によって、皆にとっての「パイ」を拡張していく考えています。
相互扶助:余分にあるものは共有し、自分で調達できないものは他者から受け取ります。これは計算しているわけではなく、それぞれが得意なことをやり、リソースを共有してコミュニティ全体に利益をもたらすことを意味します。
共感:自分と違う外見、話し方、服装、出身地の人たちと特に深く語り合うことが大切です。そうやって相手の靴を履いて歩いてみることで、その人の目線から世の中をみることができます。この共感こそが、歓迎の文化を育み、所属意識を高め、情報や才能、リソースへの公平なアクセスを創出するための鍵なのです。すべては「他者」を理解することと多様性を尊重することを贈り物として受け入れるところから始まります。
もし、私たちが他者の生活体験を理解し、自分たちの快適なゾーンの外で、腹を割って真剣な話をすることができるなら、私たちはお互いに信頼し、協力し合うための基盤を作ることができるでしょう。
私たちが変化をもたらしたいのであれば、1人ではできません。私はArmillariaとの会話でCameron Burgessが結論づけたように、「厄介な問題に取り組むとき、『それ私が解決する!』と言う人は神か狂人のどちらかです。なぜなら、誰一人も問題を1人で解決できるほど、賢くもお金持ちでも、人生経験が豊富でもないからです」。
資本は目的ではなく手段である
私たちは、金融資本を目的ではなく手段として見ています。それは、価値創造のエンジン(つまりビジネス)を始動するためのツールまたは手段ですが、それ自体が最終目的ではありません。単に加速させるものであるため、金融資本自体の価値は限られていて、持続可能な変化を生み出すことができないとさえ言えます。
市場や地域社会で価値を生み出す企業は多種多様であり、そのような企業が起業し、成長するためには、同様に多種多様な金融資本が必要となります。もし製品やサービスが特定の人々のニーズに合わせて構築されると仮定すると(そして、これらの人々が均質的なグループではないと仮定すると)、これらのニーズを満たす企業の多様性に合わせた資金調達オプションの多様性が必要です。成長が速い企業もあれば、遅い企業、成長しない企業もあります。このような多様な企業の成長を支援するために、多様な資金調達オプションが必要です。その中には大企業に成長する企業もいれば、小規模のまま事業をする企業もいます。街中に実在する企業もあれば、テクノロジーによって可能になったバーチャルベンチャーもあります。お分かりでしょうか。Daisy Ford-DownesとCamille Nisichとも話しましたが、資本の役割と、既存の形態に変化をもたらす起業家のためにより多くの選択肢が必要なのです。
オルタナティブな未来を創るための私の役割
私は、コミュニティや地域全体が独自の起業家エコシステムを構築し、育成することを支援しています。私はこの仕事を通じて、コミュニティが個人主義で凝り固まった思考から、常に変動する生態系として、自分たちを見るように考え方を変えることを支援しています。各コミュニティは、ゼブラのように、独自の資産、機会、リソースを生かしてユニークさを形成しています。私は、地域の起業家支援者、応援者、サポーターに、この独自性を生かして、作り手、実行者、創造者、修繕者、先見者が繁栄するエコシステムに変えるために必要なスキルと実践方法についてトレーニングを行います。そうすることによって、皆が個人の可能性を発揮でき、コミュニティ全体に利益をもたらすことが出来るのです。
国際的なレベルでは、私の話をは誰でも聞きたいすべての人に経験や物語を共有します。私のポッドキャスト「Ecosystems for Change」では、世界中のエコシステムビルダーと話をして、彼らが得た最も困難なレッスン(たくさんあります)や最大の勝利(あまり多くはありませんが、確かに意味があります!)を共有しています。すべては、他のシステム思考家や実践家が、各々のコミュニティで仕事をするための洞察、ツール、実践的なアドバイスを身につけることを目的としています。ぜひ皆さんも機会があれば聞いてみてください。
Tokyo Zebras Uniteからは、共同創立者の田淵さんが2022年7月から米国Zebras Unite Co-opの理事の1人として、団体の運営に関わっています。今後も、世界的なムーブメントの広がりを加速させていくZebras Uniteの最新情報をシェアしていく予定です。お楽しみに!
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