ヒステリックな女教師の思い出②

※ ひとつ前の話:ヒステリックな女教師の思い出①

 その2日後、職員室に電話がかかってきた。
「もしもし、軽部です」
 懐かしい九州訛りの口調である。
「お久しぶりです。筒美です」
「うん、本当に久しぶりだね。ところで非常に重要なことを話したいので、時間のとれる時に私が今いる教職員研修センターに来て欲しいんだ」
「そうですか。それで話というのはどんな話ですか」
「それは電話では言えない」
「どうして電話じゃだめなんですか」
「うーん、まあ、会って話したい内容なんだ」
「そうですか。それでは行くしかないですね。それでいつがいいですか」
「明後日の金曜なんかはどうですか。授業が終わってから来られませんか」
「時間は何時頃ですか」
「私は6時くらいに退勤するので、できるだけ5時半くらいまでに来て欲しいんだ」
「4時半頃に学校を出なければいけないんで、それはまだ勤務時間内だから出張ということになりますが、行かれる可能性もありそうだと思います。でも、当日会議とか雑用などが入る可能性もあり、まだ行かれるかどうかわかりません。それで、例えば行くとして出張命令簿にはどう書くことになりますか」
「出張じゃなくて、年休をとって来られない」
 ここまではどういうわけだかすらすらと会話が流れていたのだけれど、ここで少し間が空いた。
「年休になるんですか。それじゃあ、正式な打ち合わせなどではなく個人的な話ということになると思うのですか。それで、何についての話なんですか」
「それは、さっき言ったように電話では言えないんだ」
「そうですか…。それじゃあ、交通費もでないんですか」
「でも研修センターは、沢田さんの自宅に近いんで、ちょうど家に帰る途中みたいなところにあるんじゃない」
「まあ、そうですが」
「それじゃあ、明後日19日に来られますか」
「それは当日の会議や雑用などによります。その日になってみないとわからないので、行かれそうかどうかはその日に電話するということでどうでしょうか」
「そうしようか」
「それでお願いします」
「うん」
「失礼します」
「うん」
 こんなやりとりだった。
 しかし、交通費も出ず、年休をとって(公務員なので時間休はとれるが)、8年くらい前にいた学校の当時の校長と今になって話をしにいく。しかも電話では話せない要件。
 いったいなんの話なのだろうか。謎である。
 正式な仕事ではないということなので、別に行かなかったからといってどうなるというものでもなさそうだが、「非常に重要なことを言う」と言っていた。
 どうも何の話なのか気になる。重要な用事が入らなければ行くことにした。

※ 次の話→ヒステリックな女教師の思い出③

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?