『最強のスナック接客術』の本の企画を提案しました

 以前、時々行く近所のスナックに行った時のことである。
 店に入るといつものように、「うっちっち、今日も大登場」と言って、手をぶらぶらさせる「気違いのポーズ」をやったところ、Aさんというお客さんが笑い、「今日も絶好調ですね」と言った。
 「ぼくのこのポーズかっこいいでしょう」というと、その店でアルバイトをしているRちゃんという女の子が「かっこいい」と言った、その言い方は、いつものわざとらしい言い方だった。
 そこで「今の言い方はちょっとわざとらしかったな」というとRちゃんは「ばれたか」と言ってニコニコしていた。
 「Rちゃんはいつもにやけているのがいいところだねえ」と言ったら、「『にやける』じゃなくて『笑顔がかわいいね』とか言ってくださいよ」と言われた。
 「Rちゃんも本を書くといいよ。『最強のスナックの接客術』という題名がよさそうかな。『お客さんが変なポーズをやったらすかさず〔かっこいい〕と言う。そうすれば、お客さんは喜び、常連となること間違えなし』なかなかいい教訓でしょう。こういう内容の本を書いたら売れると思うよ」と言ったら「自分でも変なポーズだと認めているんだ」と言われた。
 その時私は、「間髪入れずにこの切りかえしはなかなか素晴らしい。なかなかいい突っ込みだ。スルドイ」と思ったが、くやしいから口に出して言わなかった。
 さらにRちゃんから、「でも、わざとらしい言い方じゃだめなんでしょ」と言われた。
 「でもね、そこは『お客さんは酔っぱらっているので少しくらいわざとらしい言い方でも大丈夫』という教訓を書いておけばいい」とかろうじて切り返すことができた。
 するとRちゃんは、「教訓って言うのかな」「うーん、教訓ねえ」と言いつつ「うひゃひゃ」という感じで喜んで笑い出した。
 「なかなかいい教訓でしょう」としつこく追及したら、Rちゃんは笑いながら例のわざとらしい言い方で「なかなかいい教訓だと思います」といつもよりも高い声を出して答えた。
 その後、その店には2時間くらいいて帰った。
 家に帰って酔っ払った頭でそのときのやりとり振り返ってみた。
 すると、「今日のやりとりはなかなか味があってよかったなあ。Rちゃんは若い(20代後半らしい)のになかなか渋い」と改めて感心すべきところなのであろう。ということに気がついた。
 そして、「またあの店に行きたいなあ」という気持ちがおおいにこみあげてきた。
 うっちっち。

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