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第七話「悪意は不意にやって来る!」

山の中にある一軒家。

築4.50年は経っているだろうか。所々老朽化している部分が見えるが、「今にも崩れそう」という感じでもなく、しっかりと建っている。

男が一人、家を囲む塀に向かって一生懸命に作業をしている。

男は小さな破片の様な物が入ったバケツを手に、中から取り出しては、その塀の上に等間隔で並べていた。

何か特殊な作業という訳ではなく、ただ並べている。

男が並べた破片は、既にその家を囲む塀をぐるっと一周していた。もう間もなく完成する。

最後の一つを置き、位置が満足出来なかったのか、少し角度を変えて置き直した。

「よし。完成…。」

口許を綻ばせながら、小さく呟いた。

男が並べていた破片は、カブトムシの頭だった。

大量のカブトムシの頭に混ざり、クワガタ虫の頭も混ざっている。バケツの中には、まだ半分程残っていた。


小さい頃からやっている創作の一つだ。

折角並べても固定している訳でもないので、風や雨で落ちてしまう。が、不思議とそれで再度創作意欲を掻き立てられるのだ。

一度、もう少し大きい生物でやろうと思ったのだが、親代わりの祖父に止められた。

その祖父が帰って来なくなってからどれ位の月日が経っただろう。元々そんなに口数の多い人では無かったので、居なくなってもそこまで支障は無かった。

むしろ自由に創作?に集中出来るので良かったかも知れない。

ふと、祖父の顔を思い出した。

陽に焼けた浅黒い肌と、深い皺。いつもタバコを吸っていたので声はガラガラだった。そんなガラガラの声で、一度だけ自分の親の話を聞いた。

記憶。

本当の親は東京に住んでいる、らしい。

何故一緒にいなくなったのだろう?

今なら聞けるのだろうか?


会いに行ってみようか。

物置として使っている納屋から、祖父のお下がりの道具入れを肩にかけた。ずしりと肩に沈む革製のカバンだ。中の道具同士がぶつかり、カチカチと金属音を鳴らす。

木々に遮られ、真夏でもそこは涼しかったが、男の顔は汗で照りついていた。

東京へ

男は道なき道を歩き出した。


次回予告!

あ、別のお話書きたくなっちゃった。でもダメだよね。中途半端に終わらせちゃ。また怒られちゃうよね。わかったよ。混ぜるよ。

次回!第八話!「動画撮るのもセンスいる」

一日一回レボリューション!!

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