地鳴りのような愛を

真っ当でありたい、真っ当がなんなのか考える、それだけで日が暮れてしまう、それだけで夜が明けてしまう。ひとつずつ数えて、三十個になったら一ヶ月、一年、また一年が経ち十年、本当に、それだけの日々だった。

気がつけばね、早いもんだね、と話をあわせる。けどね、俺はね、そんなふうに思えたことがないんだ、一日は悲しいほど長くて、どうすれば水に浮かべて、どうすれば波に運んでもらえるんだろう。力いっぱいバタついて、空を飛ぶほうが余程かんたんなことに思える。

そんな気持ちでギターを弾く。どんなに無理やりでもいい。力いっぱい羽ばたいて、飛べてさえしまえば俺の勝ちだ。重力に逆らってちょうどゼロになる瞬間、身体がふっと浮いて、寒気がするあの瞬間、それを俺は知っているから、これっぽっちのいのちを、力ずくで愛そうと思う。

そして、それっぽっちのことが、どれだけのだれかを守り得るのか、それも本当はよく分かってる。分かってるのに、いじけちゃってごめん、たくさんの大切な人たち。あとちょっと、あとちょっとで、このどうにもならないいのちと、泣きながら抱きあえる日が来る気がしてるから。待っていてほしい。

ありったけの愛を集める。
鳴らせ。地鳴りのような愛を。

木村

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