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【赤ちゃんと英語】これだけ読めばOK  子どもの英語習得のために、0歳児の親が実践すべきアプローチ Vol. 3

Vol. 2の続きです。
0歳の赤ちゃんの時点でできる英語への取り組みという観点から、3つのポイントから成る結論を提示しました。今回はその2つめのポイントについて詳しく解説します。
少々長くなります。

0歳児から英語教育をしても日本語の発達が遅れることはないが、「一人一言語の法則」を維持することが大事。また、長期的には母語である日本語の能力が英語習得の基礎となるので日本語の能力を伸ばすことが英語以上に重要。

赤ちゃんの時期に英語の教育をするに当たってやはり心配なのは、2つの言語が混ざってしまいどちらも中途半端になってしまうのではないか。。ということだと思います。その点に関して、これまたTEDの別の専門家によるプレゼンで以下のような主張がされています。

●    赤ちゃんの脳は2つの言語を完璧に使い分けることが出来る。これは最近の科学者の間では否定する人が少ない事実である。
●    片方の親が英語ネイティブ、もう一方がスペイン語ネイティブという家庭で育った生後10ヵ月の赤ちゃんグループと、両親が英語ネイティブの家庭で育った同じ月齢の赤ちゃんグループの脳を「火星から来たヘアドライヤー」で調べたところ、前頭前皮質の働きに明確な違いが見られた。
●    前頭前皮質はマルチタスクを司る脳の部位で、1歳に満たない=まだ言葉をしゃべらない赤ちゃんの脳においてもバイリンガルはこの部位の働きが活発になる。つまり複数言語をマルチタスクのように使い分けることが可能になっている。言語の面のみならずマルチタスクに対応するという観点からも赤ちゃんに対するバイリンガル教育はメリットがある。


バイリンガルとモノリンガルの、マルチタスクを司る前頭前皮質の働きの違い

●    確かにバイリンガルの間でCode-mixingと呼ばれる1つの文章に2つの言語を混ぜて使ってしまう現象はある。但し、それはコミュニケーションを取る相手がその2つの言語を理解することを分かっている時のみであり、相手が一つの言語しか理解しないと分かっている場合において通常Code-mixingは起こらない。

<TED (YouTube)>
“Creating bilingual minds” by Naja Ferjan Ramirez
https://youtu.be/Bp2Fvkt-TRM?si=yJ9Vcf3JwhbSqw49

更に、先に引用した本の中でも、

“子どもの「言葉の力」を強く育てるには、生まれてから6歳までの家庭環境が重要です。この時期の子どもは言葉を習得する最適期にあり、適切な環境があれば、2カ国語でも、3カ国語でも何の苦労もなく身につけることができます。”

“では、子どもに英語を身につけさせたい、という場合はどうすればよいのでしょうか?上海などの都市が率先しているように、日本でも赤ちゃんに英語教育を施す家庭が多くなりました。その際起きる論争が、「母国語である日本語を育てるのが先だ」「母国語がおぼつかない幼児に英語教育をすると日本語も英語も中途半端になる」といった問題です。結論から言うと、日本国内で育てる場合には、英語を早く覚えさせても日本語がおかしくなることは ありません。私自身、自分の子どもを含め、アジアの子どもたちが言葉を身につけていくプロセスを見てきました。母国語のほうが強い子、英語のほうが強くなる子、どちらも高いレベルで話せる子、どちらも中途半端になってしまった子、とさまざまです。問題なのは母国語も英語も中途半端になってしまう「セミリンガル」「ダブルリミテッド」と呼ばれる現象で、0〜6歳くらいの子どもが英語圏で長期間過ごすことで、だんだん日本語がおかしく なり、英語もネイティブよりも劣っている、といったことが起きるのです。これは子どもが言葉を身につけるべき段階で、母国語が十分身についていない状態で外国語環境に置かれることによって起こります。このように、海外生活ではセミリンガルになる危険性は大きいですが、日本で幼児に英語教育を施したからといって、子どもの日本語がおかしくなることはほぼありません。子どもの環境には日本語があふれていますから、週に数時間英語にふれたところで、日本語の発達に悪い影響はないのです。”

(船津 徹 世界標準の子育て (p.120, 122-124) ダイヤモンド社 Kindle版)

という記載があり、また別の本でも、

“これまでのバイリンガルの諸研究から言えることは、2言語のことばが高度に発達する場合は、2言語が互いに強め合って相乗効果があり、ことばの力が強まると同時に知能にも刺激を与えるので、知的発達にもプラスの影響があるということである。”

“ことばが2つだと、ことばを話し出す時期が遅れるのではないか、2つのことばに触れると赤ちゃんが混乱して、どもったり、ことば全体の発達が遅れたりするのではないかなどと心配する親がいるが、このような状況で丹念に記録をとった研究者や熱心な親の記録を見ると、2つのことばに接触していたからという理由だけで、話しはじめるのが遅くなったり、2つのことばを混ぜて使ったり、どちらのことばを使おうかと迷ってどもるというようなことは起こらないようである。”

(中島 和子 完全改訂版 バイリンガル教育の方法ー12歳までに親と教師ができること アルク選書シリーズ (p.23, 41) 株式会社アルク Kindle 版)

という記述もあり、複数言語を同時並行で習得するということ(特に複数言語の音を識別するということ)は赤ちゃんにとっては難しいことではないと言えそうです。参考資料とした「子供に英語を教えるな」という文献等では所謂ダブルリミテッドと呼ばれる日本語も英語も中途半端になってしまい子供が自信を失ってしまうというような事例等が非常にリアルに解説されていましたが、これは両親ともに日本人の家庭で育った子供が、小学校・中学校くらいの時期にアメリカに渡り現地校に入って、家庭では日本語、学校では全て英語という環境に突然放り込まれたような事例が主であり、0歳児の赤ちゃんに関して、特に日本で英語を教育する環境(日本語が圧倒的に社会的に優勢な言語環境)がダブルリミテッドのような問題に直結することはないだろうと考えました。

上述した内容は私たち自身が出した結論ではありますが、一方で、別の本では以下のよな記述がされていることもあり、日本語への影響が皆無であると断言できるわけでもないということは補足させて頂きます。

“なぜ私たちの耳は生後早い時期に母語以外の言語の韻律特徴や音への敏感さを失っていくのだろうか。これは、母語をできるだけ効率的に習得するためのメカニズムであると考えられる。クールは乳幼児の脳の活動を調べ、母語への特化の早い子どもは、母語の語彙習得の進み具合が早くなるというデータを示した。逆に、外国音を聞き分ける能力をなかなか失わない赤ちゃんは、母語の習得が遅れるという。赤ちゃんは、母語の特徴に注意を集中させることで、言語環境に応じて、効率よく母語を学ぶ体制を整えているというわけだ。”

(バトラー 後藤裕子 英語学習は早いほど良いのか (岩波新書) (p.47) 株式会社 岩波書店 Kindle 版)

続いて、「一人一言語の法則」についてですが、この法則はフランスの言語学者が中心となって提唱したもののようで、賛否両論はあるものの、個人的には上述したバイリンガルの赤ちゃんの脳においてマルチタスクを司る部位が活性化していることも併せて考えると納得出来るなと思いました。
つまり、0歳児の赤ちゃんは周囲に2言語以上の環境がある際には、脳がそのたびにスイッチの切り替えを行うが、「生身のコミュニケーション」を通じて言語を習得していくということを考えると、コミュニケーションを取る相手によってスイッチを切り替えているのではないかと考えられます。
そうだとすると、一人の大人が赤ちゃんに対し2つ以上の言語で話しかけてしまうと、人によるスイッチの切り替えと言語によるスイッチの切り替えに不一致が生じてしまい、混乱することになってしまうのではないかということです。参考文献にも以下のような記述がありました。

“2つのことばに触れながら育つ子どもたちは、周囲の大人のことばの使い分けがはっきりしていればいるほど、2つのことばがきちんと分化して育ちやすい。これは家の中ばかりでなく、教室の中で外国語として学ぶ場合も同じである。特に子どもが幼ければ幼いほど、大人の方の意図的な使い分けが必要である。自然に任せておくと、子どもは楽な方のことばだけを使いたがる。だから、周囲の大人が徹底して使い分けを習慣化しないと、子どもは1つのことばで済まそうとする。もし1つが子どもの強いことばで、もう1つが弱いことばである場合には、いよいよ強いことばの方になびいていく。”

“タシュナーは子どもたちのことばの発達を振り返って、バイリンガルの発達過程を3段階に分けている。
(1)第1段階(誕生から2歳ごろ)
(2)第2段階(2歳から3歳6カ月)
(3)第3段階(3歳6カ月から9歳)
(1)はことばを話し出す前の「ゆりかご時代」、(2)はことばを話すようになって、幼稚園に行くまでの「子ども部屋時代」、そして(3)は生活の場面が幼稚園、学校へと広がっ た「子ども部屋時代」の終わりから、「遊び友達時代」、そして「学校友達時代前半」である,そして、特に第1段階では、父親と母親がそれぞれ異なった言語で話しかけるとよいとタシュナーは言っている。これは「一人一言語の原則」と言われ、昔から支持する人が多い。この原則の提唱者の1人と言われるフランスの言語学者ロンジャは、次のように説明している。「子どもには何も教える必要はない。覚えてほしいことばで必要なときに話しかけていればいいのである。要はそれぞれのことばをそれぞれの人が代表することである。」

(中島 和子 完全改訂版 バイリンガル教育の方法ー12歳までに親と教師ができること アルク選書シリーズ (p.102, 109-110) 株式会社アルク Kindle 版)

母語が重要という点に関しては参考文献に以下のような記述があり、また、思考力を養うのには日本語が重要だろうというのは経験的にも感じることで、英語教育をしていく上でもやはりまずは日本語の教育をしっかりするべきであるという点については疑いの余地はないかと思いました。ただ、これは日本語ネイティブである私たち夫婦がやっていけば良いので、毎日の絵本の読み聞かせ等を頑張っていきたいなと思っています。

“さまざまな要因の中で、バイリンガルになるためのいちばん大きな決め手となるのは、子どもの母語、母文化がどのくらい育つかということである。母語の発達がしっかりしていることが2番目のことばの習得の成功の鍵になるし、また2番目のことばの学習に成功するならば 3番目、4番目のことばの学習も速くなるが、母語が中途半端であると、その次のことばも中途半端になる傾向がある。前章でも触れたように、母語がしっかり育たない状況では、高度のバイリンガルの力を育てることはまず不可能に近い。従って、いちばん肝要なことは、まず母語・母文化の発達に影響する要因を探ることである。もちろんモノリンガルにとっても母語の発達は大事なことであるが、バイリンガルの場合には、母語が第2、第3のことばの基礎となるため、母語には万金の重みがある。”

“第2のことば、第3のことばの場合はどうだろうか。この場合は、すでにことばは約束事だということは分かっているし、関連語があるということも分かっている。従って、初めてのことばを習うときに必要だった体験を全部繰り返す必要はない。「水」ということばを知っている子どもにとって、英語の‘water’ということばを覚えるのはずっと簡単である。このように母語のことばの知識は2番目、3番目のことばを覚えるときにはその土台として役に立つのである。”

“バイリンガルの基礎づくりでいちばん大事な家庭の役割は、第2、第3のことばの基礎になる母語、すなわち第1のことばをしっかり育てることである。母語は考える時、夢を見る時、数を数える時、日記をつける時、詩を書く時などに使うことばであり、無意識の層につながっていて、いちばん自信をもって自由に使えることばである。そしてまた、自分が成員として受け入れられている言語集団のことばでもある。”

(中島 和子 完全改訂版 バイリンガル教育の方法ー12歳までに親と教師ができること アルク選書シリーズ (p.36-37, 43, 97) 株式会社アルク Kindle 版)

以上、複数の文献や研究発表の動画から得られた考察をまとめてみました。
参考になればうれしいです。
次の記事では、最後のポイントである、以下の内容を紐解き、まとめとしたいと思っています。

0歳児の時に英語の音を識別できるようになったとしても、長期継続しない場合には、将来的には意味のないものになる可能性がある。但し、継続せず成長しても記憶に残っている可能性がないことはない。(つまり科学的に確たる結論はない)

今回も情報量多く、まだまだ修行中でして拙く読みづらい文章ではありますが。。。スキしていただけたら励みになります!

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