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デュアルモメンタム #6:デュアルモメンタムを強化するコンポジットデュアルモメンタム、ノンレバで76倍達成

割引あり

人間が不合理である以上、市場には歪みが必ず出現します。モメンタムやトレンドフォローはそのような行動バイアスをプレミアムとするため1637年のオランダのチューリップバブルの時代から現在まで数百年にわたり有効であったことはすでに証明されています。

デュアルモメンタムは絶対モメンタムと相対モメンタムの2つのモメンタムを利用することによって、リスクを軽減しリターンを伸ばす投資戦略です。デュアルモメンタムは短期投資のみならず長期投資でこそインデックスに対して圧倒的なアドバンテージを生みます。


Risk Premia Harvesting Through Dual Momentum

今回はGary Antonacciによる”Risk Premia Harvesting Through Dual Momentum"を紹介します。ゲイリーは「ウォール街のモメンタムウォーカー」の著者です。

コンポジット・デュアルモメンタムとは

彼はこの論文でコンポジット・デュアルモメンタムの優位性を紹介しています。コンポジットとはそれぞれ異なるユニバースのデュアルモメンタムを複数重ねて運用しようという発想です。日本人なら毛利の三本の矢のエピソードを思い出すかもしれません。

株式、クレジット、REIT、ストレスの4つのセクターにユニバースを分類し、それぞれのパフォーマンスと、4つを重ねたコンポジット・デュアルモメンタムの優位性を述べています。

コンポジット・デュアルモメンタムと基本4パターンのシャープレシオ比較

sharpe ratio

まず注目すべきは4パターン全てでRelative Momentum(相対モメンタム)のみでもシャープレシオの改善がみられることです。そしてDula Momentumではさらにリスクリターンの改善が見られます。このように特定のアセットに依存しない点はモメンタムの特徴です。
コンポジット・デュアルモメンタムはどのアセットよりも優れたシャープレシオとなっています。

コンポジット・デュアルモメンタムは極めてドローダウンが少ない

Max Drawdown

これは非常に興味深いグラフです。コンポジット・デュアルモメンタムの特徴が際立っています。通常はドローダウンは長く持てば深くなります。ある程度の期間、月単位で陰線が続くこともあるはずです。
しかしコンポジット・デュアルモメンタムは唯一Rolling Max Drawdownが長期保有とともに減少しています。
これが長期投資であるほど圧倒的な優位性を発揮する最大のポイントです。

コンポジット・デュアルモメンタムのトータルリターン

一目瞭然です。
なめらかな右肩上がりのリターン、驚きのボラティリティの少なさ。
コンポジット・デュアルモメンタムしか勝たんグラフでした。

コンポジット・デュアルモメンタムのまとめ

  • モメンタムはアセットを選ばずワークする

  • 相対モメンタムのみでも十分強い

  • デュアルモメンタムならもっと強い

  • コンポジット・デュアルモメンタムは最強

実際にコンポジット・デュアルモメンタムをどのようにやるか?

ユニバースを決める

Risk Premia Harvesting Through Dual Momentumで比較されている4パターンからユニバースを決めます

  1. Equities Momentum

    • 株式市場のモメンタム。

  2. Credit Momentum

    • クレジットリスクに関連するモメンタム。

  3. REIT Momentum

    • 不動産投資信託(REIT)のモメンタム。

  4. Stress Momentum

    • 経済的ストレスや不確実性に関連するモメンタム。

Tickerを決める

Tickerを決めましょう。
ユニバースからアセットを絞り込み、投資可能なETFのTickerを決めていきます。

  1. MSCI US (Equities Momentum)

  2. MSCI EAFE (Equities Momentum)

  3. High Yield Bond (Credit Momentum)

  4. Intermediate Credit Bond (Credit Momentum)

  5. Equity REIT (REIT Momentum)

  6. Mortgage REIT (REIT Momentum)

  7. Treasury Bond (Stress Momentum)

  8. Gold (Stress Momentum)

投資可能なTickerを定める

ETFのTickerに変換していきましょう。

  1. $SPY

  2. $EFA

  3. $HYG

  4. $LQD

  5. $VNQ

  6. $REM

  7. $TLT

  8. $GLD

Portfolio Visualizerで確認する

本来はそれぞれのパターンの勝者を合成しますが、今回はシンプルに8銘柄から4銘柄を選ぶことにします。
Tickerは上記8銘柄
Out of Marketはキャッシュ
ルックバックは12か月ー直近1か月
Asset to holedは4
いつものようにPortfolio Visualizerのリンクを貼ります

結果

Portfolio Growth
Portfolio Summary
Rolling Return

考察

ずばりリターンが物足りません。2016年ごろに$SPYにトータルリターンで抜かれ以後は追いつけていません。リスクはデュアルモメンタムによって明らかに減っています。ドローダウンは1/3と安定度は抜群です。
つまりデュアルモメンタムの本質である絶対モメンタムによるリスクの軽減は長期で効果を発揮していますが、リターンの源泉である相対モメンタムによるリターンが低すぎます。

これはなぜでしょうか?

出典:株式投資第4版 ジェレミー・シーゲル

シーゲル博士の有名な長期チャートを見てみましょう。
長期でリターンが強いのは圧倒的に株式です。今回のコンポジット・デュアルモメンタムで採用したETF、8銘柄中で株式は2銘柄だけです。

ということで、リターンが低い原因がわかってきました。そこでオーバーフィッティングにならぬよう欠点を調整します。
本来リスクベースポートフォリオでは”期待リターンが同等としたとき”の配分になります。ゆえにリアルで投資する際には期待リターンの低いものには十分なレバレッジをかけるなどしてポジション比率を調整します。
当記事ではレバレッジを使ったリスクの高いデリバティブ手法は用いず、シンプルな回答を用意しました。
またオーバーフィッテイングを避けるために最適化はしていません。

バムが考えるコンポジット・デュアルモメンタムの改善策

まずはグラフを

Portofolio Growth
Perfomance Summary

きわめてシンプルな改善です。
一見するとつまらない変化に思える人もいるでしょう。
しかしそこに本質がかくされています。

おまけ

今回はここから有料区域とします。
なにを変えたのか興味がわいた方はぜひサポートしてください。
めちゃくちゃうれしくなって続きを書く気力がわいてきます。
いつものようにリツイートで無料の設定もしています。

今回は上記で公開した改善したものに加えて全部で3つのリンクをおまけとします。
どう考えて、なぜそうしたのかも解説します

それではすぐ下にPortfolio Visualiizerのリンクを貼っておきますので是非!

反省して適正価格に修正しました。

3倍レバレッジは何となく怖い。ノンレバレッジの米国ETFでのんびりと増やした人には特に参考になると思います。有料部分では記事で紹介したコンポジットデュアルモメンタムを改善A→改善B→改善Cと三段階に改良しています。基本に忠実に、よりシンプルでロバストに、もちろんパフォーマンスは良好に。シーゲル博士の著名な本から発想を得ました。

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