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東京地下ラボレポート「編集脳で探る下水道」/ゲスト博報堂ケトル 嶋 浩一郎さん

下水道」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか?

汚そう。臭そう。そもそもイメージが湧かない
そんな人も多いのではないでしょうか?

若い世代の下水道事業への理解・関心を促すことを目標としたプロジェクト、「東京地下ラボ by東京都下水道局」の第1回目となるワークショップが、11月18日(日)に首都大学東京で開催されました。

若者の下水道事業に関するイメージシフトを狙う本プロジェクトでは、様々なバッググラウンドを持つ若者(学生)32名が、全3回の下水道に関わる活動を行い、若者目線でZINEを製作。そのZINEを通して、若者を中心とした多くの人々に下水道についての関心を持ってもらうことを目指します。(ZINE:ジン/個人やグループで自由に製作した小冊子のこと)

キックオフとなった今回は、午前にプロジェクトの概要説明や、チームごとのアイスブレイクがあり、午後は編集や下水道についての講義後、早速ZINE製作に取り掛かりました。


今回の一大イベントといえば、なんと言っても博報堂ケトル代表取締役社長・共同CEOの嶋浩一郎さんによる貴重な講義!

内容はとても興味深く、私の備忘録は5000文字以上に…、そんなお話の中から、一部を抜粋して書きます!編集に興味がある人はもちろん、何かをつくる人は、特に是非読んでみてください!

・編集とは
編集とは、情報を整理してわかりやすく伝えることだけを指すのではなく、まだみんなが気づいていない新たな価値や魅力を見いだすこと。つまり編集者自身が、その切り口を探さなければいけない。
・雑誌には世界観がある。
雑誌はネットと異なり、編集側が情報を取捨選択した限られた条件の中で表現するもの。だから、独自の世界観が生まれる。どの世界観の雑誌を選ぶのか、選択権は読者にあり、だからこそファンがつく。
・良い企画
あれもこれもと面白そうなものを詰め込めば、楽しくて良いものができるわけではない。情報を削ぎ落とすことは切り口を考えることと同じくらい重要であり、良い企画にたどり着くには、ボツとすることも必要。
・アイデアと無駄
良いアイデアは、明後日の方向からやってくる。雑誌には、一見無駄になるようなものがすごく必要。なぜならその無駄こそ、新しい価値を持つ可能性があるから。無駄を愛すと発見がある。
・切り口の着想
現場には必ず行き、歴史も学ぶ。古典に戻るとそこにヒントがあったりする。みんなの持ってきたネタから共通点を探したり、テーマとするものが今持つイメージと、真逆のところから考えてみることも。みんなが「そうなの?!」って思うような切り口が、良い切り口。
・編集脳:待機電源的にテーマを頭に残して生活をする
全ての情報は無駄ではない。頭の片隅でも企画のことを意識して過ごすと、「あれ?!それもしかして…?!」と、全然関係ないところから繋がる瞬間がある。

嶋さんには、2月の成果報告会にもお越しいただく予定です。
今回の講義で学んだことを活かして、各々ZINE製作に挑みます!


そして、下水道について、東京都下水道局総務部広報サービス課の羽場加奈さんから教えていただきました。気になったことをピックアップ....

なかなかイメージのつかない下水道ですが、
実は都内の人気スポットにも大きく関わっているんです!

・渋谷ストリームと下水道
東急東横線の旧渋谷駅が生まれ変わった、大型複合型施設「渋谷ストリーム」。目玉の一つでもある遊歩道の脇に流れる綺麗な川は、生まれ変わった渋谷川であり、その水の流れは、下水を高度処理した再生水を放流することで生まれている。元々の渋谷川の光景は、実は欅坂46「サイレントマジョリティー」のCDジャケットのロケ地でもあり、見た事がある人も多いだろう。とても汚く、水量もない。それが下水道の力によって見事生まれ変わり、新しい渋谷の、新しいスポットになっている。
・隅田川と下水道
夏の東京の風物詩である隅田川花火大会だが、戦後の一時期、あまりにも水質汚濁が深刻化して開催中止となっていた。東京都は下水道整備を進めて水質を大幅に改善させ、1978年には見事花火大会復活を遂げた。その水質についてはもちろん、下水汚泥から作られたレンガが敷き詰められるなど、今や魅力的な観光地となっている隅田川は、下水道があってこそ存在する。

また、東京都下水道局では「見せる化アクションプラン2018」という施策を打ち、開く・伝える・魅せるという、3つのポイントから、人々に下水道を「見せて」いこうとしています!(今回の「東京地下ラボ」も、この中の「魅せる」という部分に含まれています。)

今後、下水道事業施設の見学ツアーも始まりますので、興味のある方はぜひ来てください!「下水道のインフラ見学ツアー」


それではいよいよ、ZINEの製作活動スタート!

本プロジェクトでは、1チーム4名の、それぞれ専門領域の異なる学生で構成されました。各チーム3万円の製作補助費で100部のZINEを作ります。運営からは、「100部だから折り方にこだわってもイケる範囲」とのお言葉。

なるほど…!創作意欲が掻き立てられます!


…ですが、今日の目標は、先ほど出会ったばかりのメンバーとともに、下水道という少し前までブラックボックスだったものを新しい切り口から掘り下げ、ZINE製作の方針を決定すること。時間はわずか3時間弱。

これが、どれだけ大変なことか…。

刻一刻とタイムアップが迫る中、全チームの思考はフル回転。スタッフの方のアドバイスもいただきながら、なんとかワークシートにまとめて5分間のプレゼンテーションを終えました。


今回のワークショップの目的は

編集術を学習、実践し、魅力的なZINEの切り口を発見できるような手がかりをつかむこと

総評として、東京都下水道局総務部広報サービス課の羽場加奈さんからコメントをいただきました。


「思い切ったアイデアは中々此方では出しにくく、また想像していたよりクオリティが高くて感動している。ぜひ掘り下げていって欲しい。これからが本当に楽しみ。」

嶋さんは事前に、「これ(下水道事業)、切り口たくさん出てくるかな?でもたくさん切り口が出てきたらすごく面白いプロジェクトになるね。」とおっしゃられていたそうですが、今回のプレゼンテーションでは、全チームが下水道について別々の切り口を発見していたので、運営の方々も驚いていらっしゃいました!


暖かな空間で暖かなフィードバックを受け取り、本日のワークショップは終了です。


「伝える」と、「伝わる」は違う。「東京都下水道局が伝えたいこと」を汲み取り、「若者に伝わる」方法に落とし込む。「若者の関心ごとと重なることによって初めて伝わる」になる。

私を含めた参加学生たちもまた若者であり、今回のプロジェクトのターゲットです。自分たちの気持ちが、彼らの気持ちにもなりうるということ。まずは、自分たちが若者代表となって下水道に興味を持ち、楽しみ、面白いと感じていきたいと思います。
その上で、下水道局の人さえ気づいていない、まだ顕在化していない新たな下水道の価値を投影したZINEを製作することが、今回のミッション。

世界観と切り口を大切に、
「なるほど!そんな下水道の切り口があったか!」
「下水道ってそうなの?!そんな魅力があったの?!」
という魅力的なZINEを作りたいです!


本記事では、第1回東京地下ラボの様子をお送りしました!


次回は12月8日(土)、南多摩水再生センターと多摩川でのフィールドワークです。
噂では、多摩川の鮎が食べられるとのこと…

ドキドキの超体験型ワークの模様は、次回の記事でご紹介します!