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『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』/世文見聞録85【5部作映画談】
「世文見聞録」シーズン2。川口世文と木暮林太郎が「金曜ロードショー」の「インディ・ジョーンズ」シリーズ4作連続放送に気をよくして、第1弾から語っていきます。
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○『インディ・ジョーンズ』シリーズ5部作について
川口世文:「金曜ロードショー」が第4作『クリスタル・スカルの王国』の村井国夫(現:國夫)吹替バージョンをわざわざ製作して全作品放送するというので、以前から考えていた“ある企画”を実験的にやってみたい。
木暮林太郎:新作の『運命のダイヤル』公開に合わせた放送だろ? 何だか『刑事コロンボ』のサブタイトルみたいだけど……そんな話はともかく、“ある企画”って?
川口:「5部作映画」を語るんだ──。
木暮:「3部作」でも「4部作」でもなく?──何だか中途半端な本数だな?
川口:そんなことないよ。区切りがいい数だよ。それに区切りの良い悪いが問題ではなくて、おれの好きな映画は意外と「5部作映画」が多いってことに気がついた。
木暮:例えば?
川口:まず『インディ・ジョーンズ』がそうだし──。
木暮:これで本当に終わりだっていうならな。
川口:ハリソン・フォードが演じるインディはこれで終わりだろう──おれがいう「5部作映画」は“同一の役者が同一のキャラクターを演じる”ことが条件だから。
木暮:ずーっと前にいっていた“キャラエイジング”の話だな?──誰も憶えていないと思うけど(笑)
川口:古くは『ダーティハリー』がそうだし、『ダイ・ハード』も『ランボー』も『ターミネーター』も──。
木暮:ちょっと待て。『ターミネーター』は違うだろ?
川口:シュワちゃん本人が出演しているのは5作品だ。
木暮:意外と“例外”が多そうだな。
川口:「純粋5部作」と「みなし5部作」がある。
木暮:わかったわかった。まずは『インディ・ジョーンズ』だけやるっていうなら付き合ってもいい。どうせやってみなきゃわからないっていうのが、毎度の話なんだから(苦笑)
○『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』について
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木暮林太郎:「金曜ロードショー」の第1回放送作品だったらしいね。それだけでも「歴史」を感じてしまう。
川口世文:今回初めて観たという人も当然いるわけで、そういう人たちがうらやましい。
木暮:それはどうだろう? アクション映画としては物足りなく感じたんじゃないか? 当然、CGもないし。
川口:トラックを「縦に一周する」──それだけのアクションにどれだけ興奮したかわからないんだけどなぁ。
木暮:確かに話もアクションもコンパクトに凝縮されていて、まずはここから勉強しようという気にはさせる。
川口:観る順番が逆になると、この作品が後世に与えた影響がわからなくなるね。その一方で『レイダース』自体がそれ以前の娯楽映画からの「引用」で成り立っているわけであって、映画史的な「特異点」になっている。
木暮:なるほど、ラストで聖櫃から悪霊みたいのが一気に解放されて、やがてまた終息する──それと同じような現象を映画自体が起こしたってわけか。
川口:この映画こそが「聖櫃」だったってことだね。
木暮:舞台が1936年で、映画公開が45年後の1981年、それからもう同じぐらいの年月が経っている。今この映画を観るということは、当時ヒトラーの絶頂期を振り返ったような距離感になるわけだ。時代を感じる。
川口:今からさらに45年後はプーチンがその役割か?
木暮:そんな時代背景があるにしても、インディのマリオンに対する「扱い方」は気になる人も多いだろうね。
川口:まあ、彼女にはもう一度出番があるから勘弁してもらうしかない。何より重要なのは彼女の父親が亡くなった時点で「聖櫃」探索の一番手はインディになったということだ。結局のところ、この作品で描かれた冒険は彼の半生をかけた大勝負みたいなもので、そういう意味でマリオンにかまけていられない理由は描かれている。
木暮:脚本がローレンス・カスダンだから、その辺の手堅さは間違いない。
川口:だから逆に、二作目以降はどうしてもインディの動機付けが弱く感じてしまった気がするね。
木暮:最初からシリーズ化が決定していたわけじゃないだろうから、まず一人の考古学者の「人生最大の冒険」から描いたのは当然だ。
川口:仮に続編が作られなかったとしたら、第二の『ブレードランナー』になっていたかもしれないな。
木暮:それが良かったのか悪かったのか……。
川口:少なくとも、80歳になっても「同じ役」を演じることにはならなかっただろう(笑)
木暮:脚本の話に戻るけど、やっぱり「Uボード」の上に乗ったまま、どうやって島に着いたのかは気になる。一度も「潜航しなかった」ってことはないだろ?
川口:潜望鏡にしがみついていたって話だけど、完全に潜航されたら終わりだもんな。まあ、そこは展開の早さを優先して「映画的なウソ」をついたってことだな。
木暮:そういう部分を除けば脚本に学ぶことは多い。蛇が苦手なインディ、大酒飲みのマリオン、それぞれの特徴がのちに生かされるし、繰り返しギャグっぽい展開も多い。二回も遺跡内に取り残されそうになるとか……。
川口:強敵が現れてうんざりするとかね。後になるほど危機が大きくなる。いわゆる“クリフハンガー”をよく研究したんだろう。
木暮:べロックがセリフをいいながらハエを食べてしまうシーンもしっかり脚本に描かれていたんだろうなあ。
川口:いやいや、それはないない(笑)
木暮:とにもかくにも、非常にシンプルかつインパクトのある「第1作」が誕生したわけだ。
川口:果たしてそれがどのようにして「5部作映画」になっていくのか、乞うご期待!
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