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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』/世文見聞録94【5部作映画談】

「世文見聞録」シーズン2。川口世文と木暮林太郎が「インディ・ジョーンズ」シリーズ最新作の公開に気をよくして、第1弾から語っていきます。

○『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』について

川口世文:どうしてインディ・ジョーンズ“と”だったんだろう? これじゃまるでハリー・ポッターだ。

木暮林太郎:「ディズニー映画」になった以上、そういう差別化が必要だったんじゃないの? パラマウント映画のロゴも出るけど、今回は“いじられなかった”し、そもそもこれまで邦題は「and」を省略していたんだ。

川口:それだけじゃない。映画がはじまってわずか数秒で、まずはスピルバーグ監督の不在を感じたんだよね。

木暮:ハリソン・フォードを“若作り”させた件とか?

川口:いや、そうじゃなくて……何というか「カメラが低い」あるいは「重心が低い」んだな。よくいえば「地に足がついた演出」なのかもしれないけど、そのせいかアクションシーンすべてがかなり“鈍重”に感じた。これは絶対にハリソン・フォードの老化が原因じゃない。

木暮:上映時間2時間34分というのは、最近の映画ではよくあるけれど、これまでのように2時間で語れた内容が2時間半になったのだとしたら“テンポが悪い”という結論にもなるよな。

川口:初見だけの感想で断言するのはまだ早いけど、それがいちばんの感想だ。冒頭の第二次大戦末期の展開も、「運命のダイヤル」が発動してからの展開も、これまでに比べると“たっぷり”しすぎている。

木暮:確かにスピルバーグの演出には、すべてにおいて絶妙な“省略”があったのかもしれない。

川口:IMAXだと印象が変わるのかもしれないけど、画面の“ヌケ”の良さとか、“影”の使い方のうまさとか……逆にスピルバーグ演出のすごさをあらためて認識するいい機会になった(笑)

木暮:それにしても前作では無期限休職を跳ねかえして副学長になったのに、それから12年後、離婚成立に定年退職で、いよいよ“生きづらく”なっちゃったなぁ。

川口:“息子”もあっさり殺しちゃったしな。年代的にベトナム戦争で死んだのかな?

木暮:マットの存在に触れないわけにはいかなかった。代わりに出てくるのが“女インディ”のヘレナ──。

川口:それはいいすぎだ。彼女にフェードラ帽は似合わない。ヒロインがマリオンで固定されている以上、メインキャストに女性を増やしたかったんだろう。最後にもう一回だけ“男性後継者”にチャレンジしてもらいたかったな──“三度目の正直”を狙って。

木暮:ラストでインディは本気でシラクサに残るんじゃないかと思ったけど、その点はどうだった?

川口:タイムパラドックスとか考えずに、そうしてもらって全然よかった気がするね。あれこそインディが“生きる時代”だったんだから。

木暮:アルキメデスの墓の横に“インディの墓”ができるわけだ。それをヘレナが見つけるラストは面白そう。

川口:もっというと「アンティキティラ」を駆使して、彼が時空を渡り歩く話にしてもらってもよかった。

木暮:何かそれだと『バック・トゥ・ザ・フューチャー パート3』の“後日談”みたいになっちゃうけどな。

川口:それでもよかった気がするんだよね。マリオンと縒りを戻すラストも悪くはないけど、ある意味でそれは“冒険家”としての死を描いているのに等しいからな。

木暮:ベランダに干してあったフォードラ帽を最後に取ったのは、そうじゃないってことなんじゃないのかな?

川口:それはどうだろう?……あまり期待していない。

木暮:少なくともハリソン・フォードが演じるインディはこれで、本当に終わりだ。

川口:同時に“インディ・ジョーンズ”という映画的なアイコンが生きられた時代も終わった気がする。ヘレナがあとを継ぐ可能性はほぼないと思うし、リブート版が成功しないってことも証明されているんじゃないかな?

アントニオ・バンデラスの扱いはひどかった
サラーの再登場はよかった

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